勇者パーティー
――チュンチュンと、鳥の囀りが聞こえる。いい気分…と言えば、いい気分だろうか。朝が楽しみな日というのは無いような気がする。
俺はマルス・アンドラウドの姿へ変身し、勇者学園の制服の袖に腕を通して、勇者学園へ登校する準備を始める。
「そういえば、アタッカー役はなにか武器…実力者であれば何かの資格を持っていかなければいけないと言っていたな…」
勇者パーティーには、それぞれ役割がある。まずは、アタッカー。一番申し込む人が多い役だろう。攻撃魔法。前線に立つ実力が必要とされる。
二つ目はヒーラー。パーティーの回復役だ。仲間がピンチになれば、即座に回復させる。勇者パーティーには必須だ。
三つ目はサポート。ヒーラーとはまた違う。作戦を立てたり、仲間を後方から支援する役割を持つ。頭がよく回るやつじゃないと中々するのが難しい役割だ。
基本はこの三仕組みなのだが…勇者への適合、勇者へなり得る資格を百個以上はある者は、勇者へとなる権利が与えられる。ここまでは、量産型勇者と言ったところだ。本物の勇者は世界に一人しか存在せず、伝説の剣に認められるなどの、称号としての勇者だけでなく、素質としての勇者も兼ね備えている。
ちなみに、俺はアタッカーを立候補したため、何か武器を持っていく必要がある。
「ん〜…適当でいいか」
俺は魔力を合金へと変換し、剣を生成する。
剣を鞘へと収め、勇者学園へと足を運ぶ。
何歩か歩いたところで、後ろから声をかけられる。
「んよっ!マルス」
水色の髪をした男が俺の背後に立っていた。
「あー…お前は誰だったか?」
男は少し呆れた顔で『えー』と言う。
「忘れたのかよ〜。まぁ、昨日自己紹介したばっかだもんな。改めて!俺はアタッカー希望者のカナリ・エンス!俺とお前はライバルって言ったところだ」
同じアタッカー希望者…役割が被ってる時点で同じパーティーにはならないが、俺とライバルなど語るなど百万年は早い。
「ほう。言うな…俺は資格は無いが、結構強い自信がある」
資格あるとカッコいいしいつか取りたいな…。
「なるほど…自称強いっていうわけか。俺はカナメシアの剣大会で三位の称号を二つ持ってるんだ」
三位など笑わせてくれる。
子供のお遊びにすぎない。
「じゃあ普通に凄いんだな」
「へっ、まぁな」
ちなみにカナメシアとはここの世界の大都市、カメアノサスの一部の地域のことだ。規模の小さい大会でよくそこまでイキれるものだ…。
「マルスは…剣か。俺も剣だけど。他の奴らを見た感じ、斧とか…銃とか…そんなのも使ってる奴を見かけたぜ」
「そうなのか。勇者っぽいかと思って剣にしたけど。案外そんなのを使う奴らも居るんだな」
話している内に俺は学校へと着いた。
上履きへと履き替え、クラスに入る。
「今日は魔族との戦闘を意識した模擬戦を行っていくぞ!前に皆の名前を書いたそれぞれのパーティー表があるから、それを見てパーティーを組んでから、練習場に来るようにー」
レオルがクラスの皆に呼びかける。
俺は前の黒板に書かれているパーティー表を見る。メンバーはアタッカーの俺とヒーラーのメノン・フライメド。サポートのドラノ・カラメマス。
「メノン・フライメド…。昨日会ったやつか」
俺はA班のパーティー。早速、メノンとドラノと合流する。
「あっ!マルスくん!まさか同じチームになるなんてね〜」
メノンが笑顔で俺を見る。
「ドラノ・カラメマスだ」
ドラノは俺と目は合わせずにそっぽ向いて答える。
「マルス・アンドラウドだ」
三人揃ったところで、俺達は練習場へと向かう。
他の班も、揃っていたようだった。
「それでは、模擬戦を始める!魔族を模した魔力人形が10体居る!それを殲滅させればクリアだ!A班から初めてくれ!」
俺とメノンとドラノは魔力人形の居るステージの中へと入る。
「コイツらを殲滅させればよいのだな」
俺は炎魔法を剣に纏わせる。
「えっ…あれって神炎魔法!?アイツなにもんだよ…」
――神炎魔法。
この世界には神の使う魔法と遜色無い。
神の領域の魔法がある。例えば炎魔法を極めれば、コイツらの言っている神炎魔法と呼ばれる力になる。
水魔法の神域化なら、神水魔法。電気魔法の神域化なら、神電魔法――。色々ある。
「しかも、剣にあの魔力量を纏わせるなんて…なんて器用さ…」
「本当に…1年生なのか…?」
他の生徒、レオルは俺の様子を見て驚いている。
「ふんっ!!」
俺は軽くその剣を振るう。
すると、ステージ全体に衝撃波が走ったかと思えば、轟音を立てて直後に爆炎が発生する。炎…なんて次元は超えてるだろう。恐らく、神炎魔法を使ったとしても、魔力量によってはここまではならない。
「えっえぇ…」
「…」
メノンは俺の魔法を見て呆然としている。ドラノも興味深そうに見ている。
「ほっ…他の班には申し訳ないが、隣のクラスの練習場を使わせてもらおう!」
俺の神炎魔法によって練習場は粉々。恐らく修復に二日は掛かる。
「マルスくん…ちょっと来てもらっていいかい…?」
俺はレオルに校舎裏へと連れて行かれる。
「あれは…上級クラスの神炎魔法だよね…?あそこまでの規模の魔法が使えるなら、どうして勇者に立候補しなかったんだい?」
「ん?あれはただの炎魔法だが」
レオルは目を見開く。
「そんな…あれが…炎魔法…?本物の勇者に匹敵するレベルじゃないか…」
レオルは焦ったように魔力通信を使い誰かへと電話をする。
「ごめんけど。今からマルスくんには、勇者様に会ってもらう。本物の…ね」




