暗闇に満ちる絶望達
――場面は変わり、サラムは目の前の赤髪の青年と睨み合う。
「あんた強そうだな」
サラムはふっと笑い剣を構える。
それを見て赤髪の男は調子良さそうにニヤリと笑う。
「おう、そうだな。お前なんかより余裕で強いぜ?俺はよ」
赤髪の青年は構えていた剣を鞘へと納める。
「おい…なんのマネだ」
「なにって…こいつぁ魔法具なんだけどよ。使う必要無いかと思ってな」
赤髪の青年はふっふっふと薄ら笑いする。
挑発もあるだろう。だがサラムはこの青年の確かな実力を感じ取っていた。これは単にナメているだけではない…と。
「俺様は!赤血司祭!シメルド・カンノメルド!お前をここでぶっ潰してやらぁー!」
青年の周囲に居た白マント達の死体から血が上空へと浮かび、シメルドの上へと浮かぶ。
「んなっ…まじか」
「こいつら殺したのは間違いだったな…勇者が居ねぇ今…お前らをすぐに潰せるぜ」
エクスは来ようと思えば来られる。
しかし、光速で来れば街にも被害が行きかねない。
カメアノサスからネオミシスカは魔力汽車を使っても半日はかかる。エクスが戻って来る可能性は無い。
「人体魔法!血総!」
シメルドの手に赤色の魔法陣が浮かぶ。
「こはっ…ぐ…これは…」
サラムは口から血を吐き出す。
「何をした…?」
「あぁ…血総は半径五メートル以内の血液の形やら性質やらを変えるっていう魔法だ…今、お前の血液は毒に変わりつつある。やろうと思えば体内から血液を尖らせて串刺しにすることだって可能なんだぜ?」
「そうか…だがどんな魔法を持とうたって…俺の前じゃ全部無意味だ…」
「あぁ?」
「ここで死ね!!」
サラムは離れるどころかシメルドへ急接近して剣を振る。
その一振りはいとも容易くシメルドの展開した魔法陣を打ち砕く。
「は?ただの剣だろ…?魔法具じゃないのにこの力…どうなってやがんだよ」
「ふん、最初から魔法具に頼ろうとした奴に俺が負けるわけないだろ」
「ナメんなよクソドブ魔族がッ!!」
シメルドは瞳孔を小さくし、サラムを睨みつける。
サラムの足元に居る白マントの死体が赤く光る。
「はっ…!」
「吹き飛びやがれえぇ!」
魔法陣が赤く光る。
「血祭!」
白マントの死体は爆散し、サラムを爆破する。
「ちぃっ…」
サラムは辛うじて後ろへと逃げ、その攻撃を躱す。
「ホントは本気で相手してやりてぇとこだが…今回は時間稼ぎに過ぎない…お前をここで止めるのが俺の役目…大人しくしときゃ何もしねぇよ」
「阿呆が…大人しくするわけないだろう」
「そうか…じゃあ後悔したまま死ねや」
サラムとシメルドの引いても引ききれない戦いが戦況を揺るがす――。
その一方でレフィアは目の前の老人の白マントと睨み合う。
「はぁ…カミス…」
カミスはこの老人と戦い、今は気絶している状態。
レフィアは水色髪の少女との戦いの途中、カミスの安否を確認しにここへ来た。
「レフィア殿…あなたはディアマテを復活させるためにディアマテ解放教を立ち上げた…なのになぜ今更潰そうとするのです?」
老人は攻撃する様子も無く、ただレフィアに聞く。
「私にはディアマテを使わなくても世界を統べる方法を見つけたのよ」
「ミロク・プリンス――。彼がその対象だったと?」
「えぇ、彼なら世界を変えれる。ディアマテなんか使わなくても彼なら私の理想郷を作れる…いや、彼自身が私の理想郷になってくれる気がしたの」
「なるほど。確かに君が乗り移る組織のリーダーとしては最適の人だったかもしれないね。…しかしね――」
老人はその話し合いの姿勢を崩さない。
レフィアだけを真っ直ぐに見つめている。
「彼は最強の一般人に他ならない…どういうことか分かるかね?」
「なにを言ってるのよ…ミロク様ならあんたなんか一発で殺せるわ」
「はっはっは。確かにそうかもしれない。それは事実かもしれないね…だけどディアマテには敵わない。ミロク・プリンスを倒す思想をねじ込めば彼を殺せる…」
「でもミロク様だけでも生き残っていればディアマテはこの世に顕現した瞬間に死にかねない…それはどうするつもりなの?」
「我々は幹部という立場…もちろん我々の指令塔が居るわけだ。その御方ならミロク・プリンスを殺せる…」
老人は杖をつついて魔法陣を展開する。
「さて…お喋りは終わりだ。残念だったよ。君と分かりあえなくて…」
「まだ終わってない…!」
レフィアも魔法陣を展開する。
「――負けてたまるかぁぁ!」
「え?」
レフィアの後ろからネオン色のレーザーが飛び、老人に向かって飛ぶ。
「おっと…」
老人は杖でそれを跳ね返す。
「か、カミス!あなたまだ生きてたのね!」
「勝手に殺さないでください…それよりあのおっさんの魔法知ってるんです?」
「知らないけど…」
「無茶なことをする…まぁかく言う俺も最初は分かりませんでしたが…身を粉にして一つ分かったことがありますよ」
「なにか分かったの?」
「あのおっさんに魔法…魔力を使った攻撃は意味が無いです」
「えっ?なんで?どういうことよ…」
カミスはポケットから魔法具のナイフを取り出す。
「これは魔力を抜き取る魔法が付与されたナイフです。しかし魔力を抜き取れていませんし、なにより俺のギルティ・ジャッジの効果範囲外に出ることも出来てた…あのおっさん…なにかとんでもなく厄介なものを持ってますよ」
レフィアは警戒し、魔力で防御しつつ構える。
「あー居た居た。ようやく見つけた…」
その時、水色髪の少女が上空からやってくる。
「おや、負けてなかったのですね。『悪魔司祭』」
老人は上空から降りてくる少女を見つめる。
「私が負けるわけない…」
「それもそうだ…」
老人も少女も同時に魔法陣を展開する。
「じゃああの水色髪の奴は任せたわよカミス…」
「えぇ、分かりました。死なないでくださいね?」
カミスはふっと笑う。
「ゲームと違ってやり直しは効きませんから」
レフィアはふっと笑う。
「そうね…」
「私は支配司祭…ヤユン・カヌメノテ…」
老人はそう名乗る。
「私は悪魔司祭、タラサマ・ヤクリュー」
水色髪の少女も名乗る。
お互いのすれ違った思想がぶつかり合う瞬間だった――。
そして、ミロクとカリン――。
二人は未だコセヌミアとミリアにダメージを与えられない状況だった。
「カリン。あの音符攻撃…どう対処すればいいと思う?」
俺はカリンに聞く。
カリンは少し悩んで答える。
「音符攻撃ごと吹き飛ばす…しか無いのでは?」
「違う。俺は気付いたことがある…あれは音符…つまりリズムに乗ってでしか攻撃を飛ばせないわけだ。だからリズムに合わせて攻撃を弾けばいい…しかし…攻撃を当てられない理由がある…」
「それは…?」
「俺達は既に…"ステージ"に巻き込まれているということだ…」




