開戦の咆哮
白マント側はざっと総勢五百名は居るか…
さっさと来ればいいものをわざわざ歩いてくる。
中々に楽しくなってきた。
「ミロク君。僕も少しだけ頑張らせてもらうよ」
エクスは俺に笑顔で語りかける。
その笑顔の下には人を守るための決意が眠っているのだろう。
「好きにしろ」
「ミロク様ー!」
「ミロク様!」
サラム、レフィアが俺の元へやって来る。
「始まるぞ…俺達のショーが…」
「ネオミシスカの住人は全員、カメアノサスへ避難させました。これで存分に殺り合えますよ…」
カリンも俺の元へ来る。
「私の街でこんなことされて…黙ってはいられません…この街を守るのは俺です」
カミスも殺る気満々のようだ。
まぁ俺も洗脳されてたとは言え、あのサイコパス女にあそこまでされちゃ立てる顔が無いし。
「時間がない…ネオミシスカを守るため…ミリアを救うため…レフィアを報わせるため…ここでディアマテ解放教を潰す」
今まで支配することしか目標に無かった俺が誰かの目標のために動けるなんて…まぁこれも俺の目標のオマケに過ぎないんだけど…
「まずは雑魚の相手は剣士達で止めておいてくれ…」
「いや――」
勇者が口を割って入り込む。
「その作戦は無茶だ。カリン君含め、剣士は二十一人しか居ない…雑魚狩りは僕がするよ」
「五百者の相手を?」
「別に君も出来ないわけでは無いだろう?」
「……」
「それじゃあ…行かせてもらうよ――!」
勇者の一太刀。
先日のように、雑魚の白マント達はその場に倒れる。
とある者達だけ除いて――。
「あぁ…ほら言わんこっちゃねぇ…こんな雑魚ども連れてきた所で手荷物だって言ったろうがよ…」
「まぁ良いでしょう。我々の盾になってくれたのですから…」
「あれー?まだ妹ちゃん復活してないみたいだねー…まぁその方がいっか」
「ミリア。無駄な話はよして…私が今計画立ててるから…」
「ミロク・プリンス…」
恐らく幹部達…ディアマテ解放教の主力メンバー…!
でもカリスイノが居ない…流石に連れてこなかったようだ…
「予定とは大幅に戦い方が変わるな…俺がミリアと戦う…お前らは他の幹部と殺り合ってろ」
「分かったよ…!」
エクスが足を一歩踏み込んだかと思えば、その地面は消し飛び、いつの間にか幹部達の目の前に居た。
「おっと…!勇者はお呼びじゃねぇーんだ…!」
赤髪の青年がポケットから何かを取り出す。
恐らく魔法具だ。
「カメアノサスに帰りやがれ!」
その魔法具は光を放ち、その光はエクスを飲み込む。
「転送の魔法具かッ!!」
エクスは光を纏い、消える。
「なるほど…勇者は消されたか…」
「どのみち俺達だけで殺るしか無い…!」
サラムが前線へ飛び立ち、赤髪の青年に突っ込む。
赤髪の青年の持つ剣とサラムの剣が重なり合い、火花が散る。
「ふははは!お前とはいい勝負が出来そうだ…!」
赤髪の青年はサラムと共に横へ移動して消える。
「んじゃ…私は誰とすればいい?」
水色髪の少女が老人の白マントに聞く。
「そうだな…あの"道具"と殺ってあげなさい…」
老人はレフィアを指差して言う。
レフィアは顔を下に向ける。
拳が震えている…
「レフィア。お前の思うようにやって来い…」
「えぇ、ミロク様の手を煩わせるわけにも行きません…」
レフィアは直線に水色髪の少女へ飛びつき、後方へ押してネオミシスカの奥へと消える。
「それでは私は…カミス殿!」
老人はカミスの名を叫ぶ。
「あなたの実力…是非とも見せてほしい」
「いいですよ。これもゲームとして楽しんで殺ります…」
カミスと老人は一瞬で視界から消え去り、どこかへ消える。
「ミロク様。俺達はあの白髮とやります…」
長い髪を持つ白髮の男はカリンと目が合う。
「残念だが…私はそんな遊び癖は無い…」
「ミロク君ー!彼は君と殺りたいらしいからさ…そっちの剣士君達と合わせてかかってきなよ!」
ミリアはクスクスと笑って剣を向ける。
「ふん…お前らなど俺一人で――」
その時――。
『信用してないから頼らないんじゃなくて迷惑をかけたくないから頼らない…違うかい?』
エクスの言葉が俺の頭に過る。
「……カリン。俺についてこい…」
「もちろんです…!」
カリン達剣士は剣を構える。
それと同時に白髪の男は両手を挙げる。
「私は!ディアマテ解放教幹部!音響司祭のコセヌミア・カーリット!!」
「ディアマテ解放教幹部、閃光司祭のミリア・カーシャ…!」
コセヌミアの周りに音符のような形の魔力が複数浮かぶ。
「行進曲一番!マーチ!!」
音符の魔力が刃物のような形になる。
「お前ら…逃げ遅れるなよ」
「「「はい!」」」
音符は俺達に向かい飛ばされる。
中々やるが…俺にとっては遅すぎる…
「隙まみれだ…攻撃しろと言っているようなものだぞ」
漆黒の魔力の剣をコセヌミアの上半身に振り降ろそうとする。
「鎮魂曲六番…レクイエム…」
コセヌミアがそう言うと俺の前には信じられないものが映り込む。
「これは…?」
俺の前には確かに、あの日ロッドに撃ち抜かれ死んだはずのアウルが黄金の魔力として俺の前に現れる。
アウルは魔力の剣を使い俺の攻撃を防ぐ。
「ほう…?どんなカラクリなのだ?」
「これは一時的にその人の魔力から本人の想像の形を生み出す魔法です…アウルの魔力を保存してたので使わせてもらいました…」
一時的に…どれだけの持続力があるかは分からないが、どのみち殺すのみ。
「大地魔法グランデリ・ゾート!」
カリンの大剣が振り下ろされ、大地が浮かび上がりミリア達に攻撃を当てる。
「いけぇ!お前ら!追跡だ!」
剣士達がミリア達に再び攻撃を仕掛けるも。
「甘いよ!!」
ミリアの閃光の斬撃が剣士達に襲いかかる。
「――ぐはっ!!」
剣士達はその場に倒れる。
「チクショウ…!」
「落ち着け。まだ負けたわけではない…俺が居るのだ」
俺は魔力を氷に変える。
「氷魔法…フリーズ・コールド」
氷がミリアを凍結させ拘束する。
「大人しくしていれば殺しはしない」
無数の魔力の剣をミリアの周りに浮かばせる。
動けば即刺さる。
「私が死んだところでどうなるか知らないでしょ?忠告しとくと…これ以上ディアマテを追わないほうがいいよ」
「そんなこと言われて俺がやめるとでも?」
「よそ見してる場合では無いぞミロク・プリンス!」
コセヌミアが俺の真横に来る。
「どけ…」
魔力を纏った拳で顔に一撃を叩き込む。
「ぐぅ!!」
コセヌミアは後ろへ吹き飛ぶ。
「それじゃあ俺も言わせてもらうが…お前らが何もしないのであれば俺たちも攻撃はしないぞ」
「そう言われてやめるわけがないだろう…!ディアマテの力を!私達は使うのだ!!」
「私達は…ディアマテで世界を超える…!」
戦争が始まった日、俺たちはこれからどんな試練が待ち受けるのか。これが最後の戦争になるのか、これからも因縁は続くのか…いや、続かせないために俺がここで終わらせる――。




