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戦場を駆ける絆

 ――水が再びうねる。

ミナノの周囲には色とりどりな水が渦巻く。


「まだ……終わってない……!」


ミナノが顔を上げる。

その背後で、水神セレンが静かに手を掲げた。


「行くよ……!」


ミナノの魔力に呼応するように、水が無数の刃へと変わる。


色とりどりに輝く、水の剣。

まるでオーロラのような、幻想的な並びだ。


「――全部、貫け!!」


放たれる無数の水剣。

数えきれないほどの水剣が、ミリアとカリスイノへと降り注ぐ。


「……これは厄介ですね」


カリスイノが手をかざす。


「座標を――」


カリスイノが魔法を発動する。

空間が歪む。

そこに――。


「――そこだぁ!!」


「なっ!?」


転移先。

そこには既に、サラムが居た。

構えられた剣が――そのまま横腹へと突き刺さる。


「がっ……!?」


カリスイノの表情が歪む。


「馬鹿な……なぜ……!」


「たまたまだよ」


サラムは吐き捨てる。


「運が悪かったな」


カリスイノは体を引いて剣を引き抜く。

しかし、サラムは休む暇など入れさせない。

サラムは追撃に入る。


「終わりだ――!」


剣を振り下ろす、その瞬間。


――ヒュンッ。


「……っ!?」


カリスイノの姿が消える。

そして、少し離れた場所へと現れる。


「はぁ……はぁ……」


助けたのは――ミリアだった。


「危ないなぁ、ほんと」


カリスイノを軽く地面に降ろす。


「君が死んじゃうと困るから、ちょっと引っ込んでて」


「……すみません」


ミリアは軽く笑い、右耳に触れる。

そこにはハートのイヤリングが着いている。


「じゃあ――次は私の番」


その瞬間。

――パキン。

空間が割れ、光の扉が現れる。

その奥から――“何か”が覗く。

眩い光。

存在そのものが、空間を圧迫する。


「我が名は――アポーロ」


光の神と呼ばれる存在。

神らしく神聖な光が漂う。


「……っ!」


サラムの脳裏に、過去の光景がよぎる。

魔王城を貫いた、あの光。


「あれは……」


ゆっくりと、ミリアを指差す。


「お前だったのか……」


サラムは目を細める。


「時間遡行者……!」


「――あ、バレちゃった?あんまバレちゃいけなかった気がするけど…」


ミリアが額を軽く叩く。


「まぁ、どうでもいいや」


その目が、冷たく細まる。


「じゃあ――殺すしかないね」


アポーロが手を掲げる。

次の瞬間。

――ドドドドドドドドドッ!!

無数の光のレーザーが、ネオミシスカ全域へと降り注ぐ。


「ちっ……!やばすぎる…」


サラムが歯を食いしばる。


「ミナノ!!」


「えぇ……分かってる!」


ミナノが両手を突き出す。


「セレン!!行くよ!」


水が集まる。

巨大な砲撃がミナノの手の中に集まる。


「撃ち抜けぇぇ!!」


――ゴォォォォォ!!

水の砲弾が、ミリアへと向かう。

だが。

――サッ。


「……え?」


ミリアの姿が消える。


「後ろだよ」


「っ――!」


振り返る間もなく。

――ビィィィィン!!

光が走る。

ミナノの身体が吹き飛ぶ。


「がっ……!」


地面へと叩きつけられる。

サラムも、レフィアすらも――。


「見えなかった……!」


反応できない速度で。


「あれが…光速……」


サラムが低く呟く。


「なるほど…時間遡行に……光で追いついたのか……だから擬似的に時間遡行したと…」


『あの女は――次元が違う』。

サラムはそう感じ取る。


「はぁ……はぁ……」


ミナノの呼吸が荒くなる。

その瞬間。


セレンの姿が、揺らぐ。


「……もう、限界…」


ミナノが静かに言うとセレンは消える。


「っ……!」


ミナノの身体から力が抜ける。

魔力が切れた瞬間だ。


「終わりだね」


ミリアがゆっくりと歩み寄る。

そして、ミナノの額に手を当てる。


「さよなら――」


「……やだ」


「……?」


ミナノが、ミリアに抱きつく。


「覚えてなくてもいい……!」


震える声でミナノはミリアの服に顔を押し当て、涙を流す。


「一緒に遊んだことも……笑ったことも……!」


「……」


「全部、私が覚えてるから……!」


ミナノは涙を浮かべながらも笑う。


「お願い…戻ってきてよ…!」


ミリアの動きが一瞬止まる。

だが。


「……知らないよ」


冷たい声が無情にもミナノを突き放す。

――ドスッ。


「……っ」


ナイフが、ミナノの腹に突き刺さる。


「ぐ……ぁ……」


「邪魔だよ…ほんとそういうの…いらないから」


回復を封じる魔法具。

ミナノは、その場に崩れ落ちる。


「ミナノ!!」


レフィアが叫ぶ。


「くそおおおお!」


サラムが前に出ようとする。

その時。


「……っ」


サラムの視界の先。

白マント。

さらに――増援。

百はいる。

カリン達も三十人の相手をするだけで手がいっぱいだ。


「……無理…なのか…?ここで終わるのか…?」


思わず、言葉が漏れる。

その瞬間。

――スッ。

一人の男が、前に出た。

金髪で静かな眼。


「……なんでかな」


男はぽつりと呟く。


「僕はどうしても、“ディアボロス”と繋がってしまう運命にあるらしい」


男は剣を構える。

そして――振るう。

――ザンッ。

たった一太刀。

それだけで迫り来る白マントの群れが、まとめて斬り裂かれた。


「……なっ!」


カリスイノの瞳孔が開く。


「この気配……!」


ミリアも一歩引く。


「……冗談でしょ」


二人は即座に距離を取る。


「今回はここまでにしておきます」


「またね、妹ちゃん」


そのまま、二人は消える。


「あ…!」


サラムが顔を上げる。

その背中を見る。


「あんたは……!」


ゆっくりと振り返る。その男、

金色の髪が揺れる。


「勇者エクス!」


「久しぶり。えっと…サラム君だったかな?交易した時に一回会ったよね」


「なんで…あんたがここに…!」


「白マントの軍勢が…ネオミシスカに入るところを目撃したって言う連絡を受けたんだよ。ディアマテ解放教については…僕も話を聞いた。それで居ても立ってもいられなくなって来たってわけだよ」


レフィアは言葉すら上手く出ていない様子だ。

穏やかな雰囲気なのに奥には無限大の魔力を感じる。


「ミナノがこんな姿になってしまうだなんて…僕は非常に許せない…」


エクスは拳を固く握る。


「っと…今はそんな話をしている場合じゃないか。ネオミシスカの怪我人を…救える範囲で救えるよう手伝ってくれないか?」


「え…?」


「業務外なのは分かる…人間に対していい思い出が無いのも分かる…あとで必ず礼をする。だから手伝ってくれ」


「いや…別に報酬は要らない…あんたの頼みなら手伝うよ」


「助かる!では頼んだぞ」


エクスは静かに微笑む。

勇者――エクス。

最悪の戦場に。

一つの光が…この世界の一人の最強が、現れた。

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