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水の神

 白マントが一斉に動いた。

まるで意思を持たない機械のように、同時に、同じ方向へ――サラム達へと押し寄せる。


「来るぞ!!」


サラムが叫ぶ。

数で押し潰すつもりだろうと、サラムはそう思った、その瞬間。

――ヒュンッ。

上空から、鋭い音が降り注いだ。

――ザンッ!ザザザザッ!!

無数の斬撃。

白マント達が次々と斬り裂かれ、動きを止める。


「……え、なにが?」


レフィアが思わず上を見上げる。

そこに居たのは――。


「遅れて悪ぃな!」


大男、カリン。

そして、その背後には――総勢二十人の剣士達。


「援軍だ!!」


サラムがふっと笑う。


「最初から呼んでたんだよ。…ミロク様の判断のお陰だ」


「ナイス判断ね…!」


レフィアは小さく笑う。

剣士達が地面へと降り立ち、白マントの群れへと斬り込んでいく。


「ここは俺達が抑える!!」


カリンが叫び、大剣をぶんぶん振るう。


「お前らは――“司祭(あいつら)”をやれ!!」


「……任せた」


サラムは一歩前に出る。

視線の先にはミリアとカリスイノが退屈そうに待っていた。


「行くぞ!」


「私達に勝てるかな…?カオス・エデン」


ミリアはくすりと笑う。


「勝てるわけないから心配しなくて大丈夫だよ」


カリスイノは茶色の髪をふわりとなびかせる。


「ふん…それはどうかな…!」


――ズドンッ!!

サラムは一瞬で距離を詰め、剣を振るう。


――スカッ。


「くそ……またそれか」


確かに当たる軌道だった。

だが、当たらない。

まるで空間ごとズレているような違和感。


「座標の変更……厄介だな」


「えぇ、本当に…でも――」


レフィアは前に出る。


「それなら逃げ場ごと潰すまでよ!」


レフィアはばっと両手を広げる。


「――光よ、降り注げ!!」


空から、無数の光の柱が降り注ぐ。

回避不能の範囲攻撃。

だが、カリスイノはただ一歩横に動くだけでそれを避ける。


「……無駄ですよ。どれだけやろうと」


「チッ……!」


サラムはカリスイノを睨みつける。


「躱すばっかじゃねぇか」


サラムが一歩踏み込む。


「少しは攻撃してみろよ」


その言葉に――、


「じゃあ、やってみよっか…」


ミリアがスッと前に出る。

ミリアの表情に影がかかる。


「……っ!」


ミナノの表情が強張る。


「気をつけて!!」


サラムとレフィアの二人に叫ぶ。


「お姉ちゃんは水魔法を――」


その言葉が終わる前に。


――キィンッ!!


「……っ!?」


光が走る。

次の瞬間。


「ぐっ……!」


レフィアの足に光の剣が突き刺さっていた。

一瞬の出来事だった。


「えっ……!?」


ミナノは目を見開く。

水魔法ではなく、光魔法が放たれたのだから。


「なんで……!?」


「どういうことだ!!」


サラムがミナノの方へ振り返る。


「水魔法じゃねぇのかよ!!」


「……違う」


低く、ミナノが呟く。

すぐに理解した。


「認識……」


「あっ…!」


カリスイノの魔法。


「人の“思い込み”を操作してる……!」


「正解です」


カリスイノが静かに笑う。


「人は、自分が信じたものしか扱えない」


指を軽く鳴らす。


「なら――“そう思わせればいい”」


「……っ」


「水の使い手を、光の使い手だと認識させる」


その瞳が冷たく光る。


「それだけで、現実は書き換わる」


「……ふざけるな」


サラムが歯を食いしばる。

その時。


「じゃあ、もっと派手にいくねー!」


ミリアが手を掲げる。

光が集まる。

ボボボと膨れ上がる。

巨大な――光の球体。


「妹ちゃんは殺したくなかったけど…まとめて消えちゃえー!」


――ドンッ!!

それが、放たれる。


「……っ!」


サラムが構える。

レフィアも動けないまま歯を食いしばる。

避けられない。

――その瞬間。


「――ここで、負けられない」


静かな声が響いた。


「え……?」


ミナノだった。

ゆっくりと、左耳に手を当てる。

そこには星のイヤリング。


「ずっと……怖かった…」


「姉がどこへ消えたのか…そして見つけ出したと思ったらこんなことをさせられて…戦う羽目になって…」


指先で、イヤリングに軽く触れる。


「でも――」


ピカッ。

その瞬間、光が走る。


「もう、逃げない…!」


――ドクン。

空気が震えた。

ミナノの影が揺らぐ。

そこから溢れ出す、水。

ただの水ではない。

意志を持った“流れ”。

――ゴォォォォォ……

巨大な水流が現れ、光の球体を呑み込む。


「なに……!?」


カリスイノの表情が初めて歪む。

その水の中から――。

一つの存在が、姿を現す。


「我が名は――セレン」


静かで、しかし圧倒的な声。

水で構成された女性の姿。


「水を司る神」


「神……!?」


レフィアが目を見開く。


「ミナノ……あなた……!」


「……ごめん、黙ってて。こう見えても私――」


ミナノは前を見据えたまま言う。


「私……勇者学園の名のある卒業生なの」


「……まじかっ」


「そして――」


水が渦を巻く。


「セレンとはとある事情あって…神の力を、借りてる」


セレンが手を掲げる。


「現れよ――」


水が集まり、形を成す。

巨大な龍。

――『ウォラドン』。


「行くよ……!」


ミナノの声と同時に。

水龍が咆哮する。

――ゴォォォォォォォォッ!!

圧倒的な水圧が解き放たれる。

波が、世界を飲み込む。


「……チッ」


カリスイノが動こうとする。

だが。


「逃げ場が……!」


周囲すべてが水。

座標をずらしても、回避できない。


「面白いね……!」


ミリアが笑う。

――ドォォォォォン!!

水流が直撃する。

地面が抉れ、ネオミシスカの街並みが崩壊していく。

圧倒的な破壊力。

やがて、水が引いていく。


「はぁ……これでどう?」


ミナノが息を吐く。

その視線の先。

そこには――。

傷を負いながらも立つ、二人の姿。


「……やるじゃないですか」


カリスイノが口元の血を拭う。


「妹にしては、ね」


ミリアが楽しそうに笑う。

そして、ミナノと、視線がぶつかる。

空気が軋む。

言葉はいらない。

ただ、それだけで分かる。

“格”が、ぶつかっている。

ミロク不在の戦場で――。

新たな主役が、立ち上がった。

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