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支配された運命

 ――メステイスマリアの最奥。

今度は勝負の熱すらも切り離された、勝敗すら予定調和のように受け入れている者達が集まっている。


「ここに居るはずだ…」


俺も誰を探してるんだか分からない


「誰を探してるんですか?」


エリが聞いてくる。

俺も知らない。とりあえず誘われたゲーム台に行く。


「というか…お前はもう関係ないだろ。俺はゲームに勝った。つまりお前にはもうここに居る理由はない。さっさとミリアを探すのを手伝ってくれ」


エリはポカンとした表情をする。


「あ…いや…ちょっと…最後だけカネダさんのゲームを見てもいいですか?」


何を企んでいるのか…全く分からない奴だ。


「しょうがない…まぁ見るだけならいいか…最後だぞ」


「はい!」


エリは元気よく頷く。

そして前方には人集りが沢山あるゲーム台が見えた。


「あそこだろうな…」


基本自分のゲームにばかり集中するコイツらがこんなに溜まる理由は一つしかない…


「お前だな?対戦相手は…」


俺の前には黒のドミノマスク、ワイン色のスーツに金のネクタイを締めている顔立ちのいい男――。


「やぁ、カネダくん。呼ばせてもらいましたよ」


――カミス・ネオンだ。

ん?カミス?なんで?


「……」


「んふふ」


なんでニヤニヤしてんだよ。

本当にわけのわからない男だ。この街は既に俺の物と言ってもいいというのに…


「――そういやなんでカミスさん右腕が無いんだ…?」


「――こんな街だ…誰かに恨みでも買われたんじゃ?」


俺がやむを得ず吹き飛ばしただけなんだがな。


「まぁ座ってください」


カミスが俺の前にある椅子を指差す。

円形のテーブルの上に、小さな壺と三つのサイコロが置かれている。


「……チンチロ、か」


シンプルな運ゲー。

だが、この街でそれが“そのまま”であるはずがない。

カミスは壺を軽く指で叩く。


「今回は“ちゃんとゲーム”をしようじゃないか」


「そのつもりだ」


周囲には数人の観客。

そして――エリが不安そうに後ろに立っている。


「ルールは簡単です」


カミスが指を鳴らすと、テーブルに魔法陣が浮かび上がる。


「三つのサイコロを振る。役で勝敗を決める――普通のチンチロ」


「なにが普通だ…普通じゃないだろ」


「まぁ、この街の普通って言ったところですよ」


カミスは笑う。

やはり普通のゲームでは無いみたいだ。


「このゲームでは“宝石”が使えます」


「例のやつだな……」


「俺のを一つあげますよ。初めてでしょう?」


カミスは俺に宝石をスッと差し出す。

強者の余裕と言ったところか。戦闘では俺の圧勝だったけど。


「このゲームでの宝石はどんな風に使うことが出来るのだ?」


「ここでは一度だけ、自分の出目を“一つ確定”できる」


観客がざわつく。


「例えば――」


カミスはサイコロを手に取る。


「六を確定すれば、残り二つで役を作れる」


「なるほどな」


運の中に“意志”を混ぜるルール。


「そしてもう一つ」


カミスの目が細くなる。


「この場では――イカサマも“実力”です」


「えぇ…」


エリが声を漏らす。

まぁバレなきゃ犯罪じゃないってよく言うもんな。


「ただしバレれば即敗北。デメリットもメリットもある…ハラハラしたゲームが出来ますよぉ?」


俺は自信アリな笑みを見せつける。


「いいな。ようやく“ゲーム”らしくなってきた」


「そうですか…では早速ゲームを始めましょう…先攻は譲りますよ」


「……では遠慮なく貰う」


俺は壺を手に取る。

まずは様子見と言ったところだろう。

サイコロを軽く振る。


――コロコロ。

出た目は。


「二・三・五……役なし、か」


凡庸(ぼんよう)ですね」


「まだ一回目だ」


「では次は俺です」


カミスが壺を振る。

その動きに、無駄は一切ない。

――コロッ……


「……」


「一・一・一。ピンゾロだ…!」


場がざわつく。


「――いきなりかよ……!」


「――流石最強のカミスさんだな…」


「ふん、運がいいな」


多分違うな。

なんとなく確信する。

どうせコイツの事だし今のは作ったな。


「どうする?ここで諦めても構わないが…続けるかい?」


「ふん…当然続ける。」


俺は壺を握る。

ここで宝石は使わない。

まだ早い…使い所も難しいものだ。

――コロコロ……


「……四・四・六」


「ほう?」


「惜しいな、あと一つでシゴロだった…」


「だが“惜しい”は勝ちじゃない」


「さ、俺の番です」


カミスは軽く笑う。


「さて――ここで一つ、使うとしますか…」


カミスの指先に、小さな宝石が現れる。


「宝石の使用を宣言します」


「六を…確定させます」


「……!」


空気が変わる。

――コロッ……


「三・六…」


「シゴロには届かないか」


「だが十分だろう?」


こいつ……未来を見て最適なタイミングで宝石を使ってる。

なら、その未来ごと壊せばいい。ここから大逆転する。


「宣言しよう…これで決める」


俺は宝石を取り出す。

淡く光るそれを見つめる。


「一を確定させるとしよう」


カミスが楽しそうに笑う。


「一…ね。ピンゾロを狙うつもりかい?」


俺は壺を振る。

――コロコロ……


「……!」


出た目。


「一・一!」


一瞬、静寂。


「――ピンゾロ……!」


観客がざわめく。


「これは強い……!」


「……はは」


カミスが笑う。


「やるじゃないか」


「終わりだな」


俺は言い切る。

だが、


「いや――終わりじゃない」


「……?」


カミスがゆっくりと壺を持ち上げる。


「“運”とはな」


その目が狂気じみた光を帯びる。


「操作するものだ」


――コロッ。


サイコロが転がる。


「六・六・六…だ…!」


「なっ……!?」


エリが声を上げる。


「そんな……!」


やっぱり…か。流石におかしすぎる。


「イカサマか?」


「さぁな」


俺はもう既にカラクリを理解した。

これは…カミスにしか出来ないことだ。なんでメステイスマリアが条件発動魔法でしか現れないのか…全部が点で繋がった。


カミスは笑う。


「証明できるか?」


「――あぁ、出来る。決定的なものだ」


カミスは目を細める。


「いくら勝ちたいからって…ありもしない事実を語るのはどうかと思いますよ」


カミスは一度も不正がバレたことはない。そもそもしたことがないと言われている。

普通なら見つけるなんてことは到底不可能だろう。

普通ならな――。


「お前は魔法を使っている。盤面付与魔法をな…」


「ほう?ではその証拠は?」


カミスはまだ余裕と言った表情を浮かべている。

当たり前だ。盤面付与魔法ギルティ・ジャッジは前に俺に見せている。

ここからそれをどう証明するか。


「盤面付与魔法はフィールドを生み出し、そのフィールド内で自分に有利な力を働かせる…ではそのフィールドはどこか…」


全員が息を呑む。


「ここだ…!」


俺は魔法陣を描き、電気を発生させその電気を壁にぶつける。その瞬間。


「うぐぅぅ!?」


カミスは感電したようにその場で震え椅子から倒れる。


「電気魔法…魔力感電(エレクトロ・パニッシュ)。魔力に対してこれを流せば魔力の持ち主に感電するという魔法だ。つまり――」


机に足を乗せてカミスを見下げる。


「このメステイスマリア自体がお前のフィールドになっているということだな…それで自分の出る目でも操作していたのだろう」


「な…なぜそんなことに気付ける…?」


カミスはふらふらと台をつかんで立ち上がる。


「ここが条件発動魔法だと分かっていたからだ…」


「んな…」


「ここはギルティ・ジャッジで賞金十万円以上賭けられているか、クライム・チェイスなら五万ポイントを所持していないと入れない条件発動魔法…つまりここがそもそも魔力…つまりフィールドで生成されている場所に過ぎないって話だ」


「よくぞお気付きで…凄いですね」


観客達はカミスをじっと見つめる。


「そ…それじゃあ今までのここのゲームは全部イカサマだったってことかよ…!?」


「いや?大半は普通にゲームしてたよ。今回はカネダくんだったからね…にしても気付くだなんて凄いな…俺の負けだ」


エリがふふっと笑う。


「凄いですね!カネダさん!」


「当たり前だ。俺に支配出来ないものはない…それがイカサマであろうとな」


俺はそう言いその場から立ち去る。


「あっ…じゃあ私は…ミリアさんを探してきます…!」


エリは一瞬俺に着いていこうとしたがすぐに別方向へ行く。

結局ミリアらしい人はあの場には現れなかった。どうすれば現れるのか…その疑問を胸に俺はメステイスマリアを彷徨う――。

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