影から迫りくる蛇
俺は手加減するつもりなどさらさら無い。
ここで早く決着を付けてサラム達と合流する。
「滅べ!!」
――魔力の解放。
シンプルだが、魔力量によっては核兵器すらも超える威力になる。
――ズドォォォォォォ!!
まぁ…流石にそのレベルの攻撃は避けたけど…街は大体半径二十メートルくらいは吹き飛んだだろうか。
「さぁ…これでもまだ耐えると言うか影蛇…」
念のため剣を構え、どこからでもカンノが来てもいいように構える。
辺りの瓦礫を見渡し、今か今かとカンノの襲撃を待つ。
「あんたはやはり戦闘というものを分かっていない…」
――下!?
カンノはゾゾゾと俺の影から出てくるように剣を伸ばして俺の顔に突き刺そうとしてくる。
「くっ…くくく…楽しませてくれる…どんなトリックだ?」
なんとか避けれたけど…やはり魔力の流れを感じなかった。
もちろん身体能力を上げるために魔力を使っていたりなどはあるだろう。
でも魔法行使には使っていなさそうだ。そもそもこれは魔法なのか?"忍"…なにかヒントがあるはずだ。
「はぁっ!」
カンノが何かを数個、高速で飛ばす。
月光に照らされその何かがギラリと光る。
「手裏剣か!」
俺のイメージしてた忍とやっぱり同じだ!
異世界も幅広いもんだ。忍なんてニッポンの文化程度にしか思ってなかったよ。
「だが甘いな…その程度の攻撃が通じるとでも?」
魔力を飛ばして手裏剣にぶつける。
手裏剣は弾けてその場に落ちる。
「忍…まさかお前は魔法とは違う…そうだな…忍術でも使っている…そうだな?」
カンノは目を細める。
「御名答…でも分かったところでカラクリが分かるかい?」
カンノの足元からボフッと煙が舞う。その煙に身を包み、またもやカンノの姿が消える。
「また姿を消したか…また俺の影から姿を出すのか?」
――ビリリッ。
「――ッ!魔力の気配…!」
その時、俺の下からデカい蛇…大蛇が俺を飲み込もうとする。
「ぐおっ――」
――ゴクリ。
俺は大蛇に飲み込まれる。
「これは魔力で作り出したもの…か?まぁどうでもいいか…」
俺は大蛇の腹の中から魔力を放出する。
大蛇の肉体は弾け、俺は大蛇の体から脱出する。
「ん…?これは…」
蛇を見てみると、大蛇だと思っていたものはただの蛇だった。
「魔力で大きさを変えていただけ…か?だとすればかなり精密な魔力操作だな…」
生物に魔力を流せばその生物の進化へと繋がることもある。だがその一方で魔力の量を間違えれば命を落とす事になる。
そしてあくまで魔力を流しただけということはこれ自体は魔法ではないはず。カンノはまだ俺に手の内を見せる気は無いようだ。
「そろそろ決着を付けようか…?」
カンノは姿を見せない。
きっとまた影から攻撃を仕掛けに来るはずだ。
「お前はどうやら影に何かカラクリを仕掛けているようだな…なら…!」
俺は月光を背にし、高く飛び上がる。
「姿を現せ!」
ピカァァァンと俺から光が放たれる。
その光は夜のネオミシスカを明るく照らす。
「ぐぅああ…眩し…」
その中にはカンノが居た。
さっきまで見えなかったというのに今はくっきりと見える。
「お前の魔法と忍術は大体分かった…それではさらばだ。影蛇…」
光エネルギーを収束させ、カンノ目がけて放つ。
光のビームはドカァァンと音を立て、爆発する。
それと同時に銀のカードが光る。俺にまた新しく懸賞金が賭けられた。
「カンノ・イチノ・メド…お前は多分忘れんだろう…」
その時、ガラガラと瓦礫の崩れる音が俺の後ろで聞こえる。
「はぁ〜危ないっつの」
そこには少しボロボロになったカンノが瓦礫の中からひょこっと顔を出していた。
「ん…?え…?なんで?」
確かにカンノは死んだはず…ネオン色のレーザーの枠だって消えた…ゲームは終了したはずだ。
「あー途中でこの銀のカードの性質に気付いちゃってね」
「性質?」
「この銀のカードは参加表明所でその人の魔力の流れで登録してるっぽいんだけど…その魔力の流れってのが消えると死亡扱いになるっぽいんだよね」
「つまり…どういうことだ?」
「あの光の攻撃を食らった時、私は魔力を使い切って大蛇を出した。その魔力で作られた大蛇が死んだことにより、私の持つ魔力を全消費した状態での生命の死亡が確認されたってことで…私は死亡扱いになったんだろうね」
「そんな抜け道が…」
「まぁなにはともあれ…お互いに得して終わってよかったじゃん。このゲーム速く終わらせたかったし」
「結局…お前の魔法と忍術はなんだったんだ…?」
「忍術は別に大したものじゃないけどね…あとあんま教えられないし…魔法は私自身を影にするって能力。影から影への移動も出来るし便利だよ〜」
「なるほど、シンプルだが強いな」
「その代わり影が消えるとフリーズするんだけどね…さっきみたいに」
「そうか…じゃあ俺はここを去る。俺を追うなよ…次こそはお前を殺す」
俺はサラム達の居る方向へと向かう。
「そうだね…次は無いかな…」
カンノは夜空を見上げる。
「まだまだだな…次はどこで遊ぼう――」
――グシャッ。
ボトリとカンノの首が地面に落ちる。
金髪の男が手に剣を握り、片方で魔法通信機を持っている。
「忍を抹殺した。いや…殺したくは無かったけど…里を出たのだからしょうがない」
血の付いた剣が月の光に照らされ赤く光る。
「本題に戻ろう…ミロク・プリンスは…ここに居るのだな」
金髪の男…勇者エクス・カメアノサスはネオミシスカの街に足を踏み込む――。
***
俺はサラム達と合流し、その場に集まる。
「全員…懸賞金十万円に達したな?」
「もちろんです!」
サラムが銀のカードを掲げる。
「はい…大丈夫です」
「大丈夫だわ」
ミナノとレフィアも銀のカードを俺に見せる。
「大丈夫そうだな…あとはこれをどうすればいいのか…」
「参加表明所にまた持って行くとかですかね?」
「それはありそうだな…参加表明所に戻るか」
◇
俺達は参加表明所に再び足を踏み込む。
「すまない。メステイスマリアへの参加をしたいのだが…ここからでいいか?」
俺は銀のカードを受付へと見せる。
「十万円以上の賞金首…上位プレイヤーですね。メステイスマリアへ案内致します」
受付は俺達をエレベーターへと案内しメステイスマリアへの隠しスイッチのようなボタンを押す。
――カァン。
エレベーターは停止する。
「ここがメステイスマリアです。それではゲームをお楽しみください」
「ここが――」
金の部屋に囲まれたゲーム場。
まさに金持ちの居る場所と言ったところだ。
「よし、姉を探すぞ!」
「はい…!」
ミナノは頷く。
俺達はミナノの姉、ミリアを探すためとうとう裏社会のゲームの深淵へと追い詰めた――。




