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ギルティ・ジャッジ

 目覚めた俺は風呂へ入り、部屋でパンを軽く噛じり、部屋を出る。


「皆はもう起きてるのだろうか?」


俺は既に夜になりかけている外へと出る。

入口に行くともう既に皆が俺を待っていたようだ。


「おっ起きてきたなカネダ」


サラムが戦闘を今か今かと待ち遠しそうに銀カードを片手に軽く跳んでいる。


「サラム…何に期待してるのかは知らんが…今はミナノとレフィアとこの街からの依頼を受けてるってだけだ。戦闘がメインじゃないし…あまり目立つなよ」


「依頼受けすぎて予定パンパンなだけじゃ…」


「別にいいだろ…それと、なるべく今晩の内に懸賞金十万円を賭けられるようにしろ」


「え…懸賞金十万円って…上位プレイヤーが賭けられてるレベルですよ…?」


ミナノは困惑している。


「メステイスマリアに入るためにはギルティ・ジャッジは懸賞金十万円以上を賭けられている必要がある…だから早目に姉を見つけ出すならこうでもしないと無理だ。ダラダラすると別の国とか街に行ってしまう恐れがあるぞ」


「そう…ですね…姉のために頑張ります…」


その時、

――ピコン。


銀カードが一瞬緑色に光る。


「ん…?これは…!」


レフィアがカードの実績表示機能を使いホログラムに浮かぶ表示を見ると――。


「既に私達に懸賞金五万円が賭けられているわ…何もしていないのに…どうして?」


「本当ですね…一体誰が?」


俺は気付く。


「ふっ…粋なことをする…いや、余計な事とも取れるか…」


「もしかして…?」


サラムも気付いたようだ。


「あいつなら出来るだろうな…よし、五万なら現実的な範囲になった…今日は休む時間など無いと思えよ」


「「「はい!!」」」


サラム、レフィア、ミナノが同時に返事をする。

それと同時に俺達は別々の方向へプレイヤーを狩るために飛び立つ。


「おい、お前。クライム・チェイスか…ゲームをするぞ」


俺は後ろを向いているクライム・チェイスのプレイヤーに話しかける。


「誰だお前…速攻で倒してや――」


――ドサッ。


「おいおい…どうしたそんなものか…戦闘狂共。俺をゲームとして楽しませてみろ…」


男が言い切る前に俺はソイツの体をバラバラに切り裂く。


「なるほど…コイツは五千ポイント所持者だったから俺には懸賞金がプラス三千円は賭けられるようになるのか…」


そこそこのレベルのプレイヤーでもすぐに稼げる。

残り四万七千円となればすぐだ。


「他に俺に歯向かう愚か者は居るか?まぁお前らに拒否権は無いがな――」


――二時間後。


「ふぅ…プレイヤーが減りすぎて…逆に大変になってきたな…だが…」


俺は銀カードに映し出される懸賞金額を見る。

あと一万円懸賞金が賭けられれば懸賞金額十万円。最初のペースで行ければもっと楽に行けたが、俺から逃げるヤツが多発したせいで手こずってしまった。


「――そこに居るのは分かってるぞ」


俺は近くに居る魔力を持つ者の気配を感じ取る。

建物の裏に隠れているようだ。


――ザッガシャン!


剣で建物を切り裂き、そこに隠れている者の正体を見る。


「ん…」


見てみれば長い緑色の髪の凛とした女性がそこに立っていた。


「女…?」


「バレてたか…」


随分と魔力を隠すのが上手い。俺でなければ気付くのは結構難しい。


「お前はクライム・チェイスか…俺とゲームをしろ」


銀カードのプレイヤー検索で名前を見る。

名前は『カンノ・イチノ・メド』。所持ポイント九万五千。かなりの実力者なようだが、コイツを殺せば目標の懸賞金十万円に達する。


「私は霜斬の里から来た忍だ。よく分からないから参加しただけで戦闘自体にさほど興味は無い。このポイントと言うのも使い道が分からん。欲しいのならくれてやるぞ」


霜斬の里…知らない単語が出てきた。

ていうか異世界なのに忍とかネオン街とかもうよく分かんないな。


「お前を殺さないとポイントは手に入らない。だからお前を殺させろ。それか一万ポイント以上持ってる奴を連れてきてくれ」


「それは無理だな」


カンノはそっぽ向く。


「はぁ…?なんで」


「この辺の奴らは大体私が倒した…その感じだとあんたも倒し過ぎてもう倒す人居ないって感じか…他の方角に行けば?」


「他の方角はダメだ。俺の手下が懸賞金を稼いでいる」


「なるほどね…じゃあもうここは私とあんたしか居ないわけだ…」


夜の冷たい空気が足を抜ける。


「ゲームの参加は断らせてもらう。無駄な戦いで死にたくないんでね」


カンノは風と一体化するように一瞬で消える。


「き…消えた!?」


魔力の流れは一瞬も感じなかった。

一体どういうことか…魔力を隠蔽するにしてもどんな魔法かも想像つかない。


「ちっ…逃がすか…!」


俺は自分の影から影の手を伸ばし、辺り一面に蜘蛛の巣のように建物と建物の間に張り巡らせる。


「ふん…一瞬でも触れてみろ。影から俺の攻撃が飛ぶ」


かなり広範囲に広げた。消えたとしても触れれば一発アウトだ。


「………」


――ブゥオッ。


影の触れる音――。


「はぁっ!」


触れた影に一瞬で移動し、剣を振るう。

辺りの建物が一刀両断される。


「プレイヤーを殺した時に賭けられる懸賞金が来ない…なぜだ…?切った感触はあった気が…」


周りを見ると瓦礫の中にはカンノの姿を模した魔法人間が真っ二つになって転がっていた。


「だぁ…!?まじか…また奇妙なことを…」


偽物…本物のカンノはどこだ…


「――私は里ではなんと言われていたと思う?」


カンノの声がどこからともなく聞こえてくる。


「どこだ…」


「――お前、ミロク・プリンスだろ?」


「えぇ!?」


なんでバレてんだ…変装見られてんのか…


「――私は忍だ。そんな薄皮じゃ私の目を騙すことは出来ない」


「あ…そう…」


ミンナスゴイナー。


「――っと…じゃあ答え合わせをしようか…私は里では…」


――ザッ。


「!?」


後ろからカンノの気配が一瞬にして現れる。


「影蛇と呼ばれているんだ」


「――っ!!」


――スチャン!!


辛うじて迫りくる剣を避ける。


「ほう…私の奇襲を避けるか…流石世界の支配を企む者なだけはあるな…だがその程度では国の一つ二つを破壊するくらいが限界だろう…勇者や魔王なんかには勝てない」


「くっ…」


俺の気にしてることまで分かるのか…


「私も喧嘩売ってしまったし…いいよ。あんたの喧嘩買ってやる。かかってきな」


「上等だ…!」


俺は黒き魔力の光る剣を手にする。

カンノの黄色に光る目はまさに蛇のような圧を生み出していた――。

おまけコーナー!

『なにがなんだか分からない!』


「ミロク様。今いいですか?」


ミナノがコーヒーを持って俺の部屋に入ってくる。


「どうした?」


「みな敵って今なにをして、どんな人達が居るんでしたかね…?少し忘れてしまって…」


「なるほど…では読者の皆と一緒に振り返ろうではないか」


「ありがとうございます」


「まず、主人公の俺は女神と会って、魔力を奪って転生し、最強のまま産まれましたよと。その名はカルノ・ミアシュ!」


「まぁそれはどうでもよくて…カメノアスという大都市の勇者学園の入学式の日、カルノという姿を捨て表向きはマルス・アンドラウドとして活動することになりましたよと」


「凄いざっくりですけどそんな感じですね」


「そうそう…そんで、俺は前世の経験から裏切られない存在を作り、全てを俺の意のままとして従わせたいがために、この世界の最大戦力である勇者エクス・カメノアスと魔王レヴィアの敵になることを誓った!」


「ほぼ世界の敵ってことですよね」


「だな。そして俺は魔王城にてサナ・グランドという魔族の姿で活動しているのだが…ディアマテ解放教とか言う白マントの頭のおかしい集団と出会って、気付いたらそいつらとも敵対関係になってたんだ」


「まだミロク様とサラムが真面目そうな雰囲気を出してた頃ですね」


「ま…まぁそれはいいとして…あとテンポ悪いから要点だけまとめるようにしよう…魔王城で城が爆破され…それを人間のせいだと勘違いしたレヴィアが人間を殺そうとするのを止めるために俺は時間遡行をし…爆破が起きる前へと戻したはずなんだけど爆破がなぜかその時間軸で起こらず…勝手に時間軸を変えた輩が居ると思い、俺とは別の時間遡行者を探す事になった…そんで色々あって交友都市エイメノカサスへと行き、ミナノと共に姉を探す事になったんだよね」


「私達の組織…カオス・エデンも部下の剣士二十人もここで集めましたね」


「そう!そしてミナノの姉探しと時間遡行者探しは難航し…今の俺達のいるネオミシスカっていう場所に行くことになったと…」


「それが今の私達ですね」


「っていう感じだ!」


「これだけ分かれば大丈夫です!」


「よし…ではこれで終わりとしよう…」


俺はミナノの持ってきたコーヒーを飲む。


「ぶふぅおっ!?」


「あっ…ダメでした?」


やはりミナノのコーヒーは不味かった。


―終―

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