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ゲームクリア

 俺は魔力を圧縮した玉をカミスの腕に飛ばす。

その玉は赤黒い魔力に包まれているカミスの右腕に命中する。


――グシャッ。


カミスの右腕が吹き飛び、地面に落ちる。


「くっ…」


さっきも右腕が落ちた。

俺の魔力が先に命中したか、カミスの魔法が先に発動したか、分からない。


「……」


静寂だけがこの場を支配する。

一瞬だけ全員の時が止まったかのような空気が流れる。


「くぅうおおお…」


カミスは右腕を抑え、悶絶する。

赤黒い魔力はカミスから消えていく。

魔力限界加速魔法(オーバーチャームアクセラ)は不発に終わったようだ。


「ここまで危険なことをするとは…お前の覚悟は無事に受け取った。これ以上争う必要はない…このゲームは俺達の勝ちだ」


俺は自身の魔力を伸ばし、それをカミスに巻き付け拘束する。


「はは…俺の負けだ…完全に…な」


今回は俺の思うように時間遡行が上手く行った。

巻き戻す時間を他の時間遡行者に見られてなかったということだろう。


「さて、ギルティ・ジャッジとクライム・チェイスへの参加を認めてくれ」


カミスはふふふと笑い声を上げる。


「いいだろう。楽しいゲームをさせてもらった…清々しい気分だ…」


本当に腕をもがれているのかと思う程にカミスはあっさりとしている。


「ふん、頭のおかしいやつだ…」


そう言い、俺はカミスの魔力から抽出された銀のカード…ギルティ・ジャッジへの参加権限を貰った。

サラム、ミナノ、レフィアも同様に受け取る。

それを確認し、俺はカオス・エデンの手下と共に出口の扉へと行く。


「カミス」


俺は立ち止まり、カミスの方へと向き直す。


「これ以上の深掘りはするな…次に俺達が会うときは…メステイスマリアでカネダとして会うか…お前が依頼人として会いに来た時だけだ」


カミスはハッとした表情を浮かべる。


「ふふふ…そうかい…じゃあ俺から言うことはもう何もない。この街を…ゲームを…変えてやってくれ…」


「それはお前からの依頼として受け取っていいか?」


カミスは首を振る。


「いいや…この街からの依頼だよ…」


「…そうか、任せろ。じゃあ依頼料は…この街を貰うってことで…」


カミスは優しい笑みを浮かべる。


「好きにしてくれたまえ…」


「じゃあ遠慮なく…」


俺は出口へと再び歩く。


「ミロク!」


カミスが後ろから話しかける。


「楽しかったよ…」


「そうか…」


俺は再度歩み、参加表明所から出る。

外は明るい。既に朝になっていたようだ。

眩い朝の光が俺の目に差し込んでくる。


「ミロク様。時間遡行二回目ですね…」


ミナノが俺を心配そうに見る。


「なに、心配するな。副作用が出るのは十回目からだ…今はなんともない」


あんなところで二回目の時間遡行を使ってしまうなんて…普段の俺ならあんな奴別に気にせず殺してたのに…


「なんでかなぁ…」


俺は肩を落としてため息をつく。


「ミロク様がため息つくなんて珍しいですねぇ」


サラムが俺の顔を覗き込む。


「気にするな」


俺はカネダの姿になり近くのベンチに座る。


「少し…休ませてくれ」


「でしたら近くに旅人用のホテルがありますのでそこで休みましょうか」


レフィアが九時の方向を指差しそこを見る。


「そうさせてもらおう」


俺達はホテルへと行き、自分達の部屋へと入る。


「ん…うぅん…」


ベッドに自分の体が深く沈み、どんどん(まぶた)が落ちていく。


「ん…あぁ…?」


眠りについたと思えば、いきなり真っ暗闇な空間に到着。


「はぁ…今度は何の用だ…女神」


俺は後ろをバッと振り向き、そこに居る橙色の髪色を(なび)かせている女神に話しかける。


「いえ、別に?あなたはまた無駄な慈悲をかけたわね…」


女神は俺をじっと睨む。


「俺が一番分かってる…」


「分かってないわよ」


女神はいきなり俺の後ろに表れ話す。


「あのカミスとか言う男…随分と気に入ってるみたいじゃない?」


「気に入ってる…?勘違いするな。あくまで俺の利益のためだ」


「なら、なんでカオス・エデンに引き入れないのかしら?半殺しにしてでも連れてくればよかったじゃない。利益にするなら最大限活かさないと…ね」


女神はなにか意味ありげに言う。


「どういうことだ。つまり何が言いたい…ハッキリと喋ったらどうだ」


「じゃあ…ハッキリ言うと…あなたは自分の力の十分の一も出せてないって話」


「なんだと…!」


俺は炎魔法、電気魔法、氷魔法の魔法陣を同時に女神へと向ける。


「そう、それよ。あなたはあくまで基礎の魔法を極めただけに過ぎない…それとちょっとの応用魔法くらい?」


「私の力を自分の物にしておいて…その程度?そのレベルの魔力があれば…あなたは最強になれる。今のままじゃハッキリ言って勇者と魔王に蹂躙されるわよ」


「まさか概念魔法か?」


俺は魔法陣を後ろに下げる。


「そう。今のあなたの魔力量なら一つの世界の因果律くらいなら自由に変えれるわ。その才能が無いってだけだけど…」


気付けば女神はどこからか取り出した紅茶を飲んでいる。


「……」


「聞きたいけど、力を奪った手前、聞くのが気まずいって感じね」


女神は俺を挑発するように見る。


「うるせぇ…じゃあどうすればその魔法を使えるようになる?」


「ん〜…そうね〜」


女神は上を見てんーと悩む。


「一回死んでみなさい」


「は…?」


俺の中の時間が一瞬止まる。


「いや…死んだら魔法を使うもクソも無いだろ」


「はぁ〜その考えに至るのがもう既に馬鹿ね」


「はぁ!?」


俺は炎を手の中に溜める。


「そんなすぐに怒らないでよ…」


女神は紅茶を飲みながら横目に俺を見る。


「大体…お前の力のことなんて把握してない。どんな概念魔法があろうが…俺には知らねぇことなんだよ…お前は何の神なんだ?」


「それを教えるにはまだ早いわ…ただ――」


女神は急に真面目な雰囲気になる。


「全ての理…世界を超越する力だと言うことだけは教えておくわ。白マントの馬鹿が言うディアマテなんかとは比べ物にならないわよ」


「そもそもディアマテの力なんて知らねぇぞ…ディアマテ解放教の(さじ)加減だろそんなもん」


「いやいや、ホントかは知らないけどディアマテは人の思想自体が能力となり、ディアマテになると言われてるわよね」


「あぁ、だから神を食う力を得るなんて考えの奴が居た場合ディアマテは神を食う力を得る…お前は勝てないだろ」


「私は理の辞書みたいなもんなの。ディアマテがどれだけ強力な力を得ようともその力の全ては私に依存するに過ぎないのよ」


「は…はぁ…?」


「とにかく、弥勒。あなたはもっと自分を見ることね…自分の思想に変な理屈をつけるのはやめなさい…やがてそれは後悔することになる――」


目がふっと開く。

もう夕方。少し寝すぎてしまったが、だいぶ体は休めた。


「一回死んでみる…ね…」


「それで強くなるのなら――」


俺は窓からネオミシスカの風景を見て自分の中の決意をさらに固めた――。

おまけコーナー!!

『ミロクのこだわり!』


「ミロク様!」


サラムが勢い良く俺に話しかける。


「なんだサラム」


「いや、ミロク様にもこだわりとかってあるのかなぁって…思ってですね」


「こだわり…か。特にない」


「えー!意外です。あるもんかと…」


「ファッションはまぁまぁ気にしてるがな」


「確かに、ミロク様と言えば…黒い襟の長い服に金の線とかが入ってるあの服と…黒い白い線の入った布をベルトと一体化させてて…シンプルな白いズボンに黒い靴…ってイメージがあります!」


「あとは魔力で生成する剣とかだな」


「あー、いつもはロングソードとかですよね?」


「最近はサーベル系も練習しててだな、サーベルは使いやすいんだ。サラムは剣を下げてるけどあまり使ってるイメージが無いな…どんな剣を使ってるんだ?」


「俺もあんまりこだわり無いんですよ。剣ならなんでも使えるし…でもいつも持ち歩いてるのはブロードソードタイプの剣です!」


「なるほど…ってこんなことをしている場合では無い。早く時間遡行者を見つけるぞ!」


「はい!」


―終―

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