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強すぎる覚悟

 「ミロク…ハッキリ言うと…お前には皆ビビってるんですよ」


カミスはニヤニヤと笑いながら鋭い目つきで俺を見る。


「なにがだ」


「自分でも大体分かってるんじゃないですか?膨大な魔力量に…その魔力を扱いきれる程の技術力…オマケに体術もしっかりしている…ここまでの要素が揃っていて逆に何を持ち得ないのか…そしてこれからのお前の成長にも…恐怖を感じる」


カミスは右腕を上に掲げる。


「今度はなんの魔法を使うつもりだ?」


「ふふふ…ゲームを盛り上げるためなら…俺はなんだって出来る」


カミスの右腕が赤黒い血のような色の魔力に包まれる。


「まさか…!おい…それをすれば――」


俺が言いかけている時には既に遅かった。


――グシャッボドッ。


「ぐぁぅおおおああああ!!」


カミスの右腕の至る所から血が噴き出て、そのまま潰れその腕は地に落ちた。


「俺は…もうここで人生と言う名のゲームを終わらせてもいい…!その"覚悟"がある!命を賭けるゲームの娯楽を!今!感じ取っている!」


「彼…何をしているの…あんな魔法使うのなんて、戦争くらいでしか見たこと無いわ」


レフィアは呆れた表情を浮かべる。


「にしても恐ろしい魔法だ…一応誰でも使えるとは言え、これ一回きりだしな」


サラムすらも呆れた表情を浮かべる。


カミスの使ったこの魔法は、魔力限界加速魔法(オーバーチャームアクセラ)。と呼ばれるもの。

個人の確定されている因果律の魔力から全魔力エネルギーを集中させ、顕現させる魔法。一般人の魔力量でも、数十年…数百年も確定されている因果律から魔力を掻き集めれば国の勢力を削ぐくらいには被害を出せる強い魔法…だがその性質故、二度と魔力は使えなくなる上に、一気に耐えきれない量の魔力が自分の負担としてかかるので、とてつもない苦痛に襲われる。誰も使いたがらない魔法だ。


「ミロク…!俺は今、人生と言う名のゲームの…最終局面まで来た…!これが俺の最終魔法――」


遊戯支配者(ゲームマスター)!」


その直後、俺の体は空中へと浮かび、全身が重力で押し潰されるような感覚に襲われる。


「ぐぅぅが…」


なんとか自分の魔力を流して体の強度は保っているものの、既に骨にヒビが入りそうなレベルの力が俺を襲う。


「はははははは!潰れろ!!」


カミスの狂気的な笑みはゲームを楽しむ者ではなく、ゲームを支配し、自分を最強にし、無双している者の笑みだった。

――これはゲームであり、戦い。

忘れていた感覚を思い出した。


「けるな…」


「…?」


「ふざけるなぁぁぁ!!」


俺は魔力を解放し、カミスとサラム達を吹き飛ばす。


「ぐぅぅええええ!?」


参加表明所は破壊され、辺り一面の景色が削れる。

元あった場所の面影は無い。ただ瓦礫の山が積もっているだけだ。


「俺は…お前とのゲームを楽しみに来た…それをゲームの外から遊ぶだと…?」


――ゴッ。


俺はカミスの顔に魔力を込めた蹴りを入れる。

骨の折れた音と共にカミスは数メートル先の瓦礫に衝突する。


「ちょっとミロク様!俺達まで巻き込まれたんですけど!」


「私が居なかったら危なかったわね」


「ミロク様…!目立ちすぎです…早くカネダの姿になってください…!」


ミナノが俺の肩を揺さぶる。


「はっ…あ…あぁ、すまないな」


俺はカネダの姿になり、再びカミスの元へと歩む。


「俺は…ゲーム…マスター…だ…何をしようと…!自由…なんだ…!」


カミスは夜空に左手を伸ばし立ち上がろうとする。


「ゲームマスターだと…?もう既にゲームはサービス終了だ」


俺はカミスの左腕を踏み潰す。


「がぁっ…!?」


「馬鹿者が…お前の魔力を全て使ってしまえば…ギルティ・ジャッジとクライム・チェイスのゲームはどうやって起動するんだ…!」


「俺は…これで良かったんだ…薄々…気付いてた…命の軽さを…覚悟の軽さを…」


カミスはふらふらと俺の前に立つ。


「俺は…お前みたいな己の信念を貫き…自分の命と覚悟を平等に賭けれる…そんな奴が好きだった…でも――」


「このゲームは…命と覚悟の釣り合っていない…クズと馬鹿しか居なかった…いつからしか…そんなこのゲームを…嫌う俺が居たんだよ…」


カミスは動かない左腕をぷるぷると震えさせる。


「だから…最後に…ゲームマスターであるこの俺が…自分好みのゲームに塗り替える…そして…!理想であるお前と戦う…!」


カミスはまだ俺に歩み寄る。


「さぁ…最後に楽しませてくれ!俺を熱くさせてくれ!ミロクぅぅぅぅ!!」


おぼつかない足取りで走って俺に近付く。

まだ魔力限界加速魔法(オーバーチャームアクセラ)の力は残っている。


「ネオミシスカの人口を俺以外全員クライム・チェイスとし…俺をギルティ・ジャッジにして…魔力量で再現出来る範囲までは自由にネオミシスカを操れる!」


「インチキ魔法じゃねぇか!」


サラムはカミスを指差して文句を言う。


「ネオミシスカの範囲内だけ…か」


「喰らえぇぇぇ!!」


ネオミシスカの至る所に光の魔力の柱が現れ、俺を貫くように発射される。


「うわわわ…!カネダ助けてぇえ」


ミナノが涙目で懇願する。


「流石にマズイな…」


俺はネオミシスカ全域に俺の魔力結界を張る。

光の魔力柱はどこに当たっても砕けずに不発する。


「魔力結界を上書きする!そしてミロクの魔力を没収だ!!」


俺の作った魔力結界はカミスの作った魔力結界となり、その上俺の魔力は奪われる。


「そうか…それがお前の覚悟か…」


「ゲームを終わらせてやる!はぁぁぁぁ!!」


空を覆う程の巨大な魔法陣が、夜のネオミシスカの空を裂いて現れる。

莫大な魔力砲が俺に向かって高速で放たれる。


――ズドドドドド。


街を破壊しながらその魔力砲はあっという間に俺の目の前に到達した。


「ミロク様ぁぁぁ!」


サラムがそう叫ぶのが聞こえた。


「これが…どうした…こんな運命変えてやる」


俺は自身の魔力を封じ込めた水晶をポケットから取り出し、それを魔力砲にぶつける。

パリンと水晶は割れ、封じ込めてた魔力が俺に蓄えられる。


「時間遡行魔法!!」


その場の空気が変わる。

少し不穏な雰囲気になる。


「んな…!ミロク様!ここでそれを…!」


サラムとレフィアとミナノを巻き込み、時間遡行を開始する。

魔力砲は俺から離れ、破壊していった地面も直り全てが巻き戻っていく。


「――ふふふ…ゲームを盛り上げるためなら…俺はなんだって出来る」


カミスが右腕を掲げ、魔力限界加速魔法(オーバーチャームアクセラ)を使おうとしているところまで時間が戻った。

さっきまでの光景は無い。


「させるか…!」


ギリギリのタイミング。

間に合うか――。

間に合わないか――。

その土俵際に立たされた瞬間はこれまでのどんなゲームよりも緊張するものとなった――。

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