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経済と遊戯の王

 カミスは感動の笑みを浮かべながら椅子から立ち上がり、俺達に近付く。


「えぇ…あなた達の実力と覚悟…しかと見せてもらいましたよ」


カミスは横で死んでいる四人の男の死体をどうでも良さそうに横目で見て俺達へ視線を戻す。


「ミロク・プリンス。あなたには可能性を感じる。魔力量が一般人の魔力(それ)を遥かに凌駕している…その魔力を利用した力を是非とも俺に見せてください」


そう言い終わると、カミスの体からはネオン色の魔力の渦が立ち昇る。


「少なくとも――」


再び不敵な笑みを浮かべる。


「三分は保てばいいですね…それを達成できたら全員合格にしてあげてもいい…まぁ実力次第です。俺を満足させてみてください」


ミナノとサラムとレフィアはゾッとした表情を浮かべる。


「そ…相当な自信だな…ミロク様!頑張ってくださいよー!」


サラムの声が後ろから聞こえる。


「あぁ…もちろんだ。退屈はさせん」


俺は歩みを進めつつサラムに顔を向ける。

ミナノとレフィアは期待と緊張の混ざったような表情を浮かべる。


「試すのは俺だけでいいのか?」


「えぇ、あなたの実力さえ見れればそれで十分…」


部屋の扉から女性が出てきて、バトルフィールドの前に立つ。


「それでは、カミス・ネオン対ミロク・プリンスの勝負を始めます」


俺とカミスはお互いに睨み合う。


「――始め!!」


その女性の合図と共に俺は魔力で強化した脚力で音速の速さでカミスに魔力で生成した黒い剣を振り被る。


――バリリッ!


「――っ…これは…?」


俺の剣が触れた瞬間に痺れが来た。

一瞬電気魔法かとも思ったがどうにも違うようだ。


「悪くない一撃…俺がこの魔法から使わなかったら負けてたね」


カミスがそう言いつつ、俺とカミスを囲うようにネオン色のレーザーの壁がカミスを中心に生成される。


「俺の能力は属性系魔法じゃない…盤面付与魔法だ」


盤面付与魔法…自身の生み出したフィールドを軸に勝負を進めていく魔法。自分に有利なフィールドを生み出し、その中で戦う…だがフィールドは魔力で生み出したもの故、魔法具や魔力量の差で破壊されてしまうこともある。


「盤面付与魔法…クライム&ギルティ――」


「なるほど…あのゲームはお前の魔法由来だったと言うことか…」


「そうそう!正解です。俺の魔法を付与したカードを掲げることによって、俺の魔法を発動出来る条件発動魔法だったというわけです」


「ふん、それが分かったところでどうと言うことはない…俺も盤面付与魔法くらい使える。魔力量は俺の方が上…お前のフィールドより優先して発動することになるぞ?」


「それは…どうでしょうか――」


「なに…?」


その瞬間、俺の魔力で作った黒い剣がその場で崩壊する。


「なんだと…」


「このフィールドの効果は…魔力を完全に遮断するという効果を持ちます。いや…持つというより…"持たせた"と言った方がいいでしょうか」


不敵な笑みを浮かべつつカミスは剣を腰から抜いて俺に向ける。


「どういうことだ…」


「ギルティ・ジャッジは決めたルールに沿ってゲームを行う…そのルールをゲームマスターの権限を持つ私は自由に設定出来るんです」


「強すぎるだろ!?」


サラムがビームの壁越しに叫ぶ。


「なるほど…中々にインチキな性能だ…」


――だが、こんなところで俺は負けない。


「かかってこい…」


俺は手をひょいひょいとカミスに向けて動かす。


「そうですか…ではお望み通り…!」


カミスは俺に剣を振るう。

その剣を俺はスッと避ける。


「ん…?」


魔力で身体能力を強化すれば今の一撃俺に当てられたんじゃ…?

いや、盤面付与魔法ということはこのフィールドを作ること自体も魔力を消費して行う。つまりフィールドに魔力を全部回しててカミス自身に魔力が残っていないんだ。


「ふん…案外…公平なゲームだな」


俺はカミスのガラ空きになった腹に蹴りを入れる。


「ぐほっ…ふふふ…気付きましたか…まぁゲームは公平じゃないと面白くないですからね」


「なーにが公平だ…お前、時間遡行魔法じゃなくて、このフィールドを使って未来を視てたんじゃないのか?」


カミスは笑いながら目を見開く。


「おお!そこにも気が付くのですか…!観察眼がほんとに凄い…!」


「簡単なことだ…!」


俺は地面を滑り抜け、カミスの足元へ移動する。


「ふっ!」


――カランカラン。


カミスの手に持つ剣をそのまま遠くへ蹴り飛ばし、そこからさらに一回転し、カミスの顔に蹴りを入れる。


――ガシッ。

カミスに蹴りを右手で止められる。


「素晴らしい身体能力もお持ちで…ですが…武器が無くなったことを視野に入れないとでも…?」


カミスは空いた左手を俺の顔に叩き込む。


「ぐうっ…!」


俺は軽く後ろへ吹っ飛ぶ。


「俺は大人で君は子供…魔力が無ければフィジカルの差は圧倒的に俺に分がある」


視界がぐらつくが、俺はその場で起き上がる。


「ふん…それだけで勝てるとでも…?」


俺はさっき飛ばしたカミスの剣を拾い上げる。


「行くぞ…」


俺はこの十六年間、格闘技術に剣の技術…様々な流派を学んだ。

俺は負ける気はない。


「これがなんだか分かるか!」


俺はポケットからとある道具を取り出す。


「ん…!それは!」


ポケットから出てきたのは、白マントから奪った人の魔力を毒に変える鎖の魔法具。

それを俺は剣に巻き付ける。


「――ふぅん!」


――ガギィ、ガギィ!


縄の付いた剣をフィールドに向けて叩き付ける。


「ぐぅ…は…は…」


カミスはその場に膝を付く。


「フィールドは魔力で生成されている…だからこの魔法具を使えばお前のフィールドに適当にこの縄を当てるだけでお前は毒に(むしば)まれるぞ」


「うぶぅ…!」


――ビチャビチャビチャ。


カミスには大量の毒が回り、カミスは吐血する。


「フィールドを解除するか…」


俺は更に縄の付いた剣をフィールドに向けて振るう。


「自慢のフィジカルで俺と勝負するか――」


俺は一瞬の隙を突き、剣から縄を外してカミスに剣を振るう。


「ぐぅおおおおお!」


俺の前からカミスが姿を消す。

それと同時にフィールドが消え、ネオン色のレーザーの壁も無くなる。


「はぁ…はぁ…この俺にフィールドの強制解除を狙わせるとはな…」


カミスは戻った魔力を使い、解毒している。

今はふらふらだが、直に復活するだろう。


「イカサマをするのは楽しいものだな」


俺は縄をポケットに仕舞う。


「ミロク!俺の魔法をさらに解禁する…!まだまだ終わらねぇぞ!!」


カミスは自身の着けていたドミノマスクを遠くに放り投げる。

そのマスクの奥には紫色の綺麗な瞳が熱い炎を宿して俺を睨んでいた。


「そう簡単に終わってくれるなよ!!」


俺とカミスの間には、決闘者でありながら、ただの戦いではなく、ゲームのような楽しさを覚える戦いへとなった――。

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