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覚悟と死は蜜の味

 カミスは自身の頭上でパンパンと手を叩く。

その音はその音は緊張感を際立たせるような響きがあった。


「命を賭けたゲーム――」


「開幕です!」


カミスの声が響いた瞬間、床に刻まれた魔法陣が強く光り出す。

――ブォンッ!

空間が歪む。

次の瞬間、俺達は別の場所に立っていた。


「……転送魔法…か」


そこは円形の闘技場。

観客のような影が周囲に浮かび、無数の視線を感じる。


「っ……!」


ミナノが息を呑む。


「これ……見られてるんですか……?」


「実際の観客達が見ているわけではありませんけどね。視線でプレッシャーを与えてるんですよ」


カミスの声が空間全体から響く。


「この試験は“観測”されています。あなた方の価値を測るために…」


サラムはニヤリと笑い、自身の腰から剣を抜く。


「上等じゃんかよ」


対面には、先程の男達が四人立っていた。

それぞれがチップを手にしている。


「ルールを再確認します」


カミスの声。


「あなた方には初期ライフチップが10枚」


俺の手元にも、確かに10枚のチップが現れる。

ドクン、ドクンと俺の鼓動に合わせ脈打つ。


「戦闘によるダメージ、あるいは条件成立でチップは減少」


「ゼロになれば――死。最後まで多くのチップを持っていたチームの方の勝ちです」


「さらに――」


カミスの声がわずかに楽しげになる。


「戦闘開始前に“賭け”を行ってください」


対面の男の一人が笑う。


「じゃあ俺からいくぜ」


細身の男を先頭にゾロゾロと前に出る。


「俺は――“視覚”を賭ける」


「俺は聴覚…」


「俺は味覚」


「俺は右足の感覚で…」


空気がざわつく。


「チップ一枚を失う度に…視覚やらなんやらがじわじわ失われていくと……」


サラムが呟き、

男はニヤリと笑う。


「その代わり、チップ一枚を割ればお前らの“誰かの魔力”をもらう」


ミナノが小さく息を吐く。


「中々に厄介ですね……」


「いいや?」


男は肩をすくめる。


「これがこの街だ…スリルがあるじゃないか?」


カミスは俺達に顔を向ける。


「では、あなた方は?」


――その時。


「決まっていると言っただろう」


俺は一歩前に出る。


「俺は――」


チップを一枚、指で弾く。


「全部だ」


観客のざわめきが一気に大きくなる。


「またそれか……!」


サラムが頭を抱える。


ミナノも険しい顔をする。


「本気なんですね……」


「ここは彼を信じるしかないわ…なにか策があるってことでしょう?」


俺は笑う。


「当然だ」


そして、男達を見据える。


「お前ら程度に、細かく賭ける必要はない」


男達は面食らったように歯を食いしばる。


「は?」


男の顔が歪む。


「ナメてんのか……?」


「事実を言ったまでだ」


その瞬間。

――ドンッ!!

視覚を賭けた男が地面を蹴る。


「上等だァッ!!」


高速で距離を詰めてくる。

その手の中のナイフが閃く。


「ミロク様!」


――遅い。

刃が俺の首を狙う。

――キンッ。


「なっ!?」


止まっていた。

俺の指で、ナイフが止められている。


「軽いな」


そのまま――。


――バキンッ!!


ナイフを握り潰す。


「ぐっ……!?」


男が後ろへ飛び退く。

その瞬間。


――ピシッ。


男のチップが一枚、砕けた。


「なに……?」


「今のが“ダメージ判定”か…」


俺はチップを見る。


「なるほど、分かりやすい…一枚じゃ視界は完全には失われないのか?」


男の視界は少し悪くなったようで、目を押さえている。


「ふん…チップ一枚分くらいならまだなんてことないさ…それより自分達の心配をしたらどうだ?お前らは一枚欠けただけで…魔力に本来あり得た未来…その他諸々を失うんだぜ?」


サラムはその言葉を聞き笑う。


「そんなん言われなくてもさ…チップ一枚も取らせないっての」


「舐めてもらったら困るわね……」


レフィアも手の中に魔法陣を創り出す。


ミナノも構えを取る。


「行きます」


「じゃあ…一人ずつ一人を潰していこう」


「ほざけぇ!!」


視覚を賭けた男がまたナイフを取り出し、俺へと向ける。


「だから――」


俺は男の(ふところ)に一瞬で入り込む。


「遅いと言っている」


――ドドドオッ。


一瞬で十打撃は男の腹や(あばら)にぶち込む。


「ごはぁっ!?」


男のチップは全て割れ、割れた分のチップが俺の手元に降る。

男の目には既に生命が宿っていない。

俺はミナノ、サラム、レフィアの方に目線を向ける。

右足の感覚を賭けた男の一人は魔法詠唱、もう一人の聴覚を賭けた男は魔力を使っての高速移動をしており、味覚を賭けた男は自然魔法を使い、辺りに木を生やして視界を狭めていく。


「役割分担か……悪くない。だがあの三人に通じるか」


「男達の姿が見えなくなったわよ」


レフィアが辺りを警戒して見渡す。

――すると。


「炎よ…大地を焦がせ!!」


木々の向こうから声が響く。

男は木の向こうからサラム達に向けて炎を放つ。


「その程度か」


サラムは腰に下げている剣を一瞬で引き抜き、その刃は真っ直ぐ炎を切り裂き、戦闘場と男達をまとめて切り裂く。


「ぐはっ…!?」


男達の持つチップはバリバリと砕け、こちらのチームの分のチップに加算されていく。


「ちょっと…一人で出番を奪わないでよサラム」


レフィアはサラムをむっと見つめる。


「すまんすまん…俺がやった方が手っ取り早いだろ?」


「……終わりか」


俺はチップを見つめる。

増えている。


「勝者は総取り……」


カミスの声が静かに響く。


「見事です」


魔力で作られた観客のざわめきが広がる。


「圧倒的ですね……」


「だろう?」


カミスの声はどこか楽しげだった。


「ですが――」


カミスは一拍打つ。


「これで終わりではありません」


空間が再び歪む。


「次の試験へ進みます」


サラムが肩を回す。


「まだあんのかよ……?」


レフィアは静かに言う。


「流石にこれじゃ簡単だものね…」


俺は小さく笑う。


「いいだろう」


チップを握る。

その鼓動が、心地いい。


「命を賭けるってのは――」


ネオンの光が揺れる。


「悪くない」


そして前を見据える。

その前でカミスは手を叩いて笑う。


「はははは…全く…」


「覚悟と死は――」


そこに薄く笑みを浮かべる。


「蜜の味だ」


ゲームの深層へ――。

俺達はさらに踏み込んでいく。

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