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目指すもの

 レフィアはぎこちない雰囲気ででなにかを喋っている。


「あの…あっ…お店…!寄っていきませんか〜…!」


見てみるにオトナの店の客寄せと言った感じだろう。

しかし、お店に寄ってくる客は居ない。


「なんであんな所に居るんですかね…?」


サラムは少し警戒しながらレフィアを見る。


「ディアマテ解放教と並行して働いている…のか?」


「そもそも俺を覚えているのか…サナの姿で一度会ったが、どうだろうか」


「まぁ、俺もあの時居ましたし、大丈夫ですよ」


「あの…私はどうすればいいですか?」


ミナノがゆっくり手を挙げる。


「ミナノはそこに居ててくれ。はぐれても困るからな」


ミナノはうんと頷く。

俺はもう一度路地裏に行き、サナの姿になる。


「ちょっとあなた?」


俺はレフィアの肩に触れる。


「ええっ…あっなんでしょう…ってあなた達…」


レフィアは俺とサラムの姿を見て動きが止まる。


「いや…なんでもありません…どうかしましたか?」


レフィアは目線を逸らす。

どうやら向こうは俺達に気付いたみたいだ。


「私、分かるのよね。あなた…いつもの白マントはどこにやったのかしら?ん?」


少し圧をかけるとレフィアはその場に崩れる。


「ごめんなさい…!なにもしないで…!お願いだから…!」


「ちょちょ…別に取って食おうってわけじゃないんだからさ…」


サラムがレフィアを(なだ)める。


「あぁ…レフィアさん?こんなところでなにをしているの?それを聞きたいだけなのだけど…ディアマテの件はどうなってるの?」


「私は…もうディアマテ解放教に入っていません…」


レフィアは涙を拭いながらそう言った。


「えっ…どういう…」


「抜けた…というよりも…追い出されたんです…」


「追い出された…ですって?」


レフィアはハッとした表情を浮かべる。


「ここで話すのもあれなので…店の中で話しましょう…私そろそろ店の中に戻る時間なので…」


レフィアは店の中へと入っていく。


「俺達も行くぞ、エス」


俺はサラムに目線を合わせる。


「はい…!」


俺とサラムは店の中へと入る。

中は殆どすっからかんで、ここまで人が少ないのが不自然なくらいだ。

そして、目の前にはレフィアが居た。


「じゃあ…部屋の中でもいいですか…?」


「構わないですよ」


レフィアが客用の部屋の扉を開け、俺達を中に入れる。


「それで…どうしたんですか…?」


俺はベッドに座り、レフィアに聞く。


「私はディアマテ解放教に次々に人を招き入れてました。私の思想を理解してくれる人がこんなに居るなんて…と順調すぎるくらい人が増えていきました」


ディアマテは人間の理想像そのもの…ディアマテに興味を示すものがそれだけ多かったのだろう。


「そして、信仰者が百人を超えたところで、司祭という幹部制度を作ったんです…十人くらい」


司祭…そういえばアウルは黄金司祭と名乗っていた。

なんのことだと思えば、幹部を示す異名だったというわけだ。


「それで…?」


「皆、名前は伏せてたんで、メンバーが誰…とかはあんまり分からないんですけど…私はその司祭達に追い出されたんです」


「どういう理由で…?」


力の差でなのか、はたまた因縁なのか…。


「私の最初の目的は…ディアマテを使って世界を滅ぼすこと…だったんですが、いつの間にか、ディアマテ解放教の皆は自分の叶えたい願いを祈るばかりになり…つい私は怒ってしまったんです」


「『私がリーダーなんだから、私の思想をひっくり返すことは許さない』って…そしたら…」


「『最初からお前の思想に乗っかる奴なんて居ない。全員ディアマテが目当てなんだ』って…」


――思想の否定…俺もされたらと考えると…怒りが沸く。


「そして信仰者達から追い出され…今はこんなことしか…」


レフィアは再び涙を流す。


「大体…なんで世界を滅ぼすなんて願い…考えたのよ」


「私は…昔から母親が居なくて…父が私を育てる…はずだったんですが…」


「もしかして…」


「予想通りだと思います。父が…暴力や酒ばかりを要求してくるようになったんです」


レフィアは拳を握る。

見えはしないが、その拳に憎悪が籠っているのを俺は感じた。


「酒が足りなければ…私を殴ったり…酷い時は私で…父の性欲求を満たされたことも…」


こんな酷い話があっていいのか…。

俺は今、不覚にもレフィアに同情してしまっていた。


「それだけなら、昔の私は既に壊れていたので耐えられてましたよ。働けばいいだけの話…だったので」


学生で働かされていた…俺の悩みなんて小さく見えてくる。


「でも、学校で父からの暴力で受けた痣や傷を他の生徒に見られてしまい…」


「『え?キンモ…二度と私に近付かないでくれる?貧乏野郎!精々その辺の雑草でも食べておけば?』なんてことを言われたこともありました…だから…世界を滅ぼしたかったのに…」


「………」


「学生時代…あとはもう…酷かったです。給食にも…制服にも…ああぁぁ…」


レフィアはその場で泣き崩れてしまう。


「お前は……お前は…!それで本当に…そのままでいいと思っているのか…!!」


俺はサナの姿を解き、ミロクの姿にする。


「ちょ…ミロク様…!?」


「えっ?姿が…」


「気にするな。お前…父やそいつらに今…どんな気持ち…願いがある?」


「別に思ってるわけ――」


「いーや!嘘だね。あんたは今復讐の色で染まってる。俺の前じゃ嘘は通じない」


サラムはその場でしゃがんでレフィアの目線に合わせる。


「私は…あいつらに復讐したい…死よりも最悪な結末を…!」


「その願い、俺が承ってやろう。ただし――」


「あなたの…ミロク様の下で生涯を共にします…!それが…カオス・エデンの依頼料…でしたよね」


「おっカオス・エデンの情報は既に耳に入ってたか…じゃあ話が早いな。それじゃあ、お前の人生を奈落に落とした奴らに死すらも軽い結末を与える代わりに俺の手下になる!契約成立だ」


レフィアは目を輝かせる。涙がまだ目に溜まっており、宝石のような目の輝きが瞳の中にあった。


「ありがとうございます…!」


「――で、なんでわざわざこんな所で働いてるんだ?もっといい場所あったろ…」


レフィアは顔を赤くする。


「えっ!いや…別に…給料が…良かったんですよ」


「え〜〜…?」


サラムはニヤニヤとする。


「さ…サラム!酷い!また私の心を…!」


なにを考えてたのかは知らんが、まぁとりあえず仲間が増えたのでよしとしよう――。

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