デカい影
「――んで、結局行くんですか?『メステイスマリア』…危険な香りしかしませんよ」
サラムはさっきの男達の対応から危険な香りを感じ取っているようだ。
まぁ、俺も正直あんなことされた手前行きたいとも思わない。
でもそこにミリアが居た場合、俺達はいくら探しても無駄だ…行くしかない。
「だが、行かんことには始まらない。それに、時間遡行者についてもなにか分かるかもしれない。こんなにデカい街なんだからな」
「それはそうですけど…ていうか、メステイスマリアって宝石も取り扱ってるんですね…カジノ場なのに…普通お金とかじゃ?」
「えぇ、他のカジノ場ではもちろん勝った分だけお金に変えることが出来るんですけど、メステイスマリアではお金を宝石に変えてもらうことも出来るんですよ」
メダルゲームにも近いようなものを感じる気がする…
「宝石に変えてもらうメリットはなにかあるのか?」
「その宝石はもちろん本物で価値が付くんですが…宝石をゲーム内に落とし込んで使う事が出来るんですよ」
「つまり次のゲームで有利に働くってことか?」
「はい、そんな感じです。それと宝石は変えてもらったお金よりは安くなるんで宝石を使ってゲームに負け続けると損することになります」
「使い所が限られるってことだな…」
「ふふふー…でもミロク様!今回俺達はエイメノカサスから"アレ"持ってきたじゃないですか!」
サラムが目を輝かせる。
「あぁ、財産の街って言われてるくらいだったから持ってきて正解だったな…」
俺とサラムとミナノはそれぞれポケットから百万円を取り出す。
「よし、これでやるぞ」
「いやー!やっぱ街を支配した恩恵が生きましたねー!」
「あまり大声で言うなよ…カオス・エデンの者だと分かれば面倒ごとになる…それと一つ聞きたいが――」
「なんでミナノはそんなにネオミシスカに詳しいんだ?」
エイメノカサスからネオミシスカに行くまでに調べている様子が特に無かったから何故こんなに詳しいのかよく分からない。
「姉がネオミシスカによく行ってたので、なんとなく覚えてるんですよ。なんか姉から聞いたよりもずっと騒がしいところですけど…」
「なるほどな。じゃあやはりここに姉が居る可能性があるわけだ…にしてもエイメノカサスの大会と言い、血の気の多い姉だな。賭け事もして剣大会にもよく出てて…」
「本人の性格は凄く静かなんですけどね」
「だろうな。お前の様子を見てるとなんとなく分かる」
「そ…そうですかね」
ミナノは少し顔を赤くして照れる。
「そういえば、ネオミシスカ最大のカジノって言ってたけど…歩いてても中々見つからないなぁ」
サラムが辺りをキョロキョロ見渡す。
確かに、もう既に十分は歩いているはずなんだが…それらしい看板もない。デカい店なら看板もデカいもんだと思ってたのだが。
「そういえば姉が言ってました…メステイスマリアを見つけるのは苦労したと…その時は興味無くて詳しくは聞かなかったんですけど…」
見つけるのを苦労した…?
中々に怪しい匂いがしてきた。
「もしかしたら…地下とか?」
サラムが地面を指差す。
「それも十分あり得るな…地下も多くある街だ…だが、俺はそんな単純なものじゃないと思うぞ」
「えっ?」
「俺達のアジト…カオス・エデンは今どうなっている?」
「えぇっと…あ…!」
サラムはなにかに気付く。
「――条件発動魔法…!」
ミナノも気付く。
「そうだ。きっとあいつらは俺達をただ誘ったわけじゃなく、実力を測るための勧誘だったということだ」
「じゃあ…メステイスマリアに入店する為になにかの条件を満たさないといけないですね!」
「でも…どんな条件だろーな?」
「確かにそうですね…」
「周りの奴らもそう簡単には教えてくれないだろうしな…」
「エイメノカサスで先に情報屋で聞けばよかったですね…」
ミナノは後悔したような顔をする。
「確かに…」
「はぁ〜ミロク様!俺の魔法忘れたのですか?」
サラムは俺の肩をポンッと叩く。
「あっ…記憶を読める…?」
「そうですよ。それに俺の魔法、記憶を潜る者は、今考えていること以外にもその人の記憶ならいくらでも覗けます。だからメステイスマリアのことを知ってそうなやつの記憶を遡って見てみましょう」
「流石だなサラム。じゃあ俺も…ミロクとバレたらマズイし…マルスの姿…は未成年だからカジノ行けないし…サナの姿は…魔族にバレたらマズイな」
「え、どうするんですか?」
「なに、新しい姿を作ればいいだけだ」
俺は路地裏に行き、姿を変える。
黒いスーツに金の腕時計…金のドミノマスクを着ける。
「ふっふっふ…今日から私はMr.カネダ!」
「お…おぉ〜」
「流石ミロク様っ!カッコイイです!」
「だから…カネダと言っているだろう!まぁいい…お前らもこれを付けろ」
俺は自身の着けている金のドミノマスクを指差す。
「あぁ、そうですね…私達の顔は白マントにバレてますし…」
「それもそうだな」
ミナノとサラムは金のドミノマスクを着ける。
「ミナノは今からエムと呼ぶ。サラムはエスと呼ばせてもらう」
「なんか潜入捜査感あっていいですねー!」
「それじゃあ行きましょうか」
路地裏を出て、再びネオン街に出る。
「じゃあまずはどうやったらメステイスマリアを見つけれるのか…記憶を見て調べてみよう。エス、頼んだぞ」
「お任せを!」
サラムは色んな人の顔を見る。
「あっ…違う…だっー!違うって!うおお〜…」
サラムが何やら独り言を呟いている。
「エス…?なにをしてるんだ?」
「いや、皆動くから狙いが定めにくくって…記憶を読む範囲外にすぐ出ちゃうな〜って…近づいて見たら怪しまれるし」
「なるほど…じゃあ少し荒い手を使って聞くしかないか…」
その時、サラムがなにかに気付いた顔をする。
「あ…」
「どうした、エス」
「『レフィア』です…」
「なんだと…!」
ミナノは不思議な顔をする。
「レフィア…?って誰ですか?」
「レフィアは俺が初めて会った白マントの奴だ…」
白マントを着けておらず、バニーガール姿でなにか看板を持って店前に突っ立っている。
顔は初めて見たが、綺麗で黄色の目、腰まである白銀の長い髪をしている。
「記憶を覗いてたら…たまたま…レフィアを見つけました」
「なにか聞き出してみるか――」




