財産の街ネオミシスカ
――ネオミシスカ。
通称、財産の街。
この国には、世界中の富が集まる。
金貨、宝石、株式、土地。
あらゆる資産がこの街に流れ込み、そして管理される。
世界人口の約二割が持つ財産は、このネオミシスカの金融機関が掌握していると言われている。
富を求める者、富を守る者、富を奪う者。
すべてがこの街に集まる。
それが――ネオミシスカ。
――ガタン、ゴトン。
汽車の揺れる音が静かに響く。
「ミロク様」
誰かが声をかけて俺の肩を軽く揺する。
「ミロク様、起きてください」
「……ん?」
俺はゆっくりと目を開けた。
目の前にはピンク髪の少女、ミナノの顔がある。
「あと少しで着きますよ」
「……もうか?」
俺は窓の外を見る。
俺はその光景を見て、目を細める。
「……ほう」
そこに広がっていたのは――。
巨大な都市。
夜の闇の中に、無数の光が輝いている。
高くそびえる建物。
ガラスの壁に映るネオン。
通りには看板の光が溢れていた。
赤、青、紫、金。
まるで街そのものが宝石のように輝いている。
「すごい街ですねぇ……」
隣でサラムが窓に顔を近づける。
「ここだけ…まるで世界が変わってるかのようですよね…建物もレンガやコンクリートとかじゃなくて魔法水と魔法砂を使った素材のものを使ってるそうですよ。ミロク様の元いた世界ではありましたか?」
サラムが俺に顔を向けて言う。
「そんなものは無かったな。そもそもそんな高度な技術?というか力は無かった…ここは便利なものだ」
「えぇ!意外です。そこまで文明は進んでなかったんですね…」
ミナノも興味を持って話を聞く。
「文明はここより進んでいるかもだがな。だが、魔力なんてものは俺の居た世界には無かった…魔力のある点で言えばこっちの世界の方が便利だ」
ミナノとサラムはなにか考え事をする。
「なにを考えている?」
「いえ、魔力の無い世界だなんて考えられないなぁって…」
ミナノとサラムは顔を合わせて頷く。
「そうだな…簡単に言うと…」
俺はネオンの色が滲みている夜空を眺める。
「退屈…だったかな」
その頃、丁度汽車はゆっくりと駅へ滑り込む。
「おっ着いたみたいだな。行くぞ」
「「はい!」」
ミナノとサラムは同時に元気よく返事する。
――外へ出た瞬間。
ざわめきが耳に流れ込む。
笑い声、怒鳴り声、酒の匂い。
人、人、人。
エイメノカサスの賑やかな空気とはまるで違う。
ネオンが街を照らし、夜なのに明るい。
「うわぁ……」
サラムが辺りを見回す。
「なんか…凄い格好の人ばっかりだな」
周りを見てみれば…通りを歩くのは、どこか怪しい雰囲気の者、露出の激しい女性、豪華な服を着た富豪。
宝石をぶら下げた人、鋭い目をした男達。
「……治安は良くなさそうですね…なんか怖いです」
ミナノが静かに言う。
「裏社会も多いと聞きますしね…」
俺は肩をすくめる。
「こういう人の多い場所には必ずあいつらが来るだろうな…」
「誰がですか?」
「白マントだ…」
「っ…そうですね…」
「気を付けていこう…サラムも――」
辺りを見渡す。
「あれ?」
サラムの姿が無い。
「……?」
俺は首を振って探す。
「サラム?」
サラムが居ない。
「どこ行ったんでしょうか…?」
ミナノも周囲を見渡す。
俺は目を凝らして人混みの奥を見る。
すると少し離れた場所に――。
サラムの姿があった。
そしてその前には、数人の男が居た。
黒い服、鋭い目。
どう見てもまともな連中じゃない。
「なぁなぁ、そんなケース持ってなにしてんだ?」
サラムは気軽に話しかけていた。
「この街って大体なにするんだ?」
男達がゆっくり振り向く。
俺は顔をしかめる。
「……あいつ」
「あーあ…やってますね」
ミナノが小声で言う。
「止めた方がいいのでは…?」
「はぁ…もう遅いだろ」
男の一人がサラムを睨んでいた。
「おいガキ」
低い声でサラムに圧をかけている。
「ここは…遊びに来る場所じゃねぇぞ?」
サラムは首を傾げる。
「え?」
男はニヤリと笑う。
「貧乏人は来るなよ」
その瞬間。
――チャキッ。
男のポケットからナイフがキラリと光る。
ネオンの光が刃に反射する。
サラムは一瞬だけ目を細めた。
「うそーん…」
「……なるほど、大体分かってたが…クズの多い街か…」
後ろで俺はため息をつく。
「やれやれ」
ミナノが呟く。
「到着早々ですか…エイメノカサスの時もそうじゃありませんでした?」
俺は肩を回す。
「まぁいい」
ゆっくりと男達の前へ歩く。
「ネオミシスカの歓迎ってやつだろ」
男達がこちらを見る。
その場の空気が変わる。
「コイツの仲間か?お前ら…」
「だったらなんだ。不敬な態度を取ったのは申し訳ない。もうお互い関わらないようにしよう」
「ふっ…ははは…そんなんで済むわけねぇだろぉがよ!」
男は手を挙げたかと思えばその手に銀のカードを掲げる。
「あっ…あれは…?」
「はっ!ミロク様!離れて!」
俺は動こうとしたが、銀のカードがピカッと光り、俺とミナノとサラムを囲むようにネオン色に光るレーザーが出てくる。
「あ…あぁ…」
ミナノは手で顔を隠す。
「これはなんだ?」
「これは…ネオミシスカの遊戯の一つ…」
「"ギルティ・ジャッジ"です…」
「なんだ…それ」
辺りから人が俺達の事を観戦する。
「――やっちまえ!」
「――罪人は裁かれるべきだな」
「覚悟…しやがれよ…?」
「なにがなんだか分からんが…俺はお前に負けん」
俺と男の中で確かに戦いのコングが鳴り響いた――。




