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第五話

秘書、石倉神奈頑張る。

それからきっかり3時間後、ギルドマスターは帰ってきた。というか、資料室からまたさっきの部屋へ強制転移だ。心の準備が欲しい。


「それで、どういう筋書きにしたんだ?」


私が思いつくこと前提か!できてないってことは予測しないんだろうか。ちゃんと考えたけどさ。不満が顔に出ていたのか、ギルドマスター、長いな、次郎でいいや。次郎は私の顔を見ると笑った。


「お前はなんだかんだ言いつつ、きちんと結果を持ってくる奴だ。その辺は信頼してるさ。」

「はあ、ありがとうございます。」


秘書としてちゃんと仕事ができているということだろうか?


「二つ、伺いたいことがあるのですが、セザン村の依頼はこのギルドに出されるので間違いありませんね。」

「ああ、俺の領地じゃないが、依頼はこのギルドに来る。」

「それと、クッマーンの大量発生の情報は知れ渡ってはいませんよね?」

「ああ、セザン村の何人かと俺しか知らない。領主にもまだ報告してないそうだ。」

「それを聞いて安心しました。それが知れ渡っているとわたくしの考えた案は使えませんので。」


ふうっと息を吐き、プレゼンテーションに気持ちを切り替える。


「まず初めに、ユージンが受けるのは討伐依頼ではなく、採取依頼ということにします。レベル2のユージンが受けられる採取依頼なら、セザン村も払えるでしょう。」


討伐依頼よりも採取依頼の方が安いのだ。これなら低い金額でも周りが納得する。


「採取依頼?何を採取するんだ?セザン村の付近ほぼ雪だぞ。」

「そのクッマーンが大量発生している雪山には高級薬草『タツカイヨオ』があります。セザン村は狩りの収入が主で、失礼ながらあまり裕福とは言えませんね。資料によると、クッマーンはタツカイヨオが生えている場所にはいないとありますが、雪の中を移動されたのでは見えないので、村の方々は採取には行かないのでしょう。」


なにせ、大きいものは人間を一飲み。冒険者が4人がかりで倒すモンスターなんて普通の人は対抗できないよね。


「そして、今回はその狩りの収入もあまり期待できず、困っている。そのため、ギルドに依頼を出すのはお金がかかるけれど、タツカイヨオを採取して来てもらえれば冒険者に報酬を払ったとしてもかなりのお金が入る。レベル2の冒険者に頼むのだから、成功率は低いけれど、このまま何もしないよりは賭けに出てみようかと考えた。依頼的にはそのような筋書きでどうでしょうか?」


次郎は腕を組んでふむ、と頷くとニヤリと笑った。、


「クッマーンの討伐は採取依頼のついでということか。」

「ええ、そうです。村人がクッマーンと会ってしまったらただでは済まないでしょうが、レベル2の冒険者なら倒せませんが、逃げることは可能。なので、依頼書にはクッマーンが出る可能性があると書いておいた方がいいでしょう。」

「確かに、それならセザン村に負担が少ないな。ただ、他の奴がその依頼を受けちまったらどうするんだ?依頼とくれば、掲示板に貼らないわけにはいかないぞ。」


今度は私がニヤリと笑う番だ。


「それは、ギルドマスターの権限でユージンだけが受けられるようにしていただきます。」

「確かにこのギルドはユージンを優遇してはいるが、そこまでの好待遇はできねえな。」


そう、それはわかってた。だから。


「ギルドマスターはわたくしに依頼をするのです。その依頼はわたくしにセザン村に行ってもらうこと。その間、ユージンは依頼を受けられません。今ユージンが受けられる依頼は必ずわたくしが同行している事という条件が付いています。セザン村までは結構な距離がありますよね?行って帰ってくるだけでもかなりの日数を取られます。なので、タイミングよく出されたセザン村の依頼をユージンに渡すのです。ユージンに対するギルドマスターからの救済措置ということで、いかがでしょうか。」


しばらく次郎は唸って考えていたけれど、頷いた。


「少し強引だが、確かに、イシクラがいないと、ユージンは冒険者として仕事ができないな。周りからは少し文句が出そうだが。」

「そうですね、その説明はわたくしから他の冒険者へしましょう。」

「それと、俺がイシクラに依頼する内容なんだが、何にするんだ?」

「特に決めていません。」

「は?」

「わたくしは冒険者ではなく、秘書です。冒険者は受ける依頼を特別な時以外は開示しなければなりませんが、秘書は本来機密保持が求められるのです。なので、ギルドマスターがわたくしに依頼した内容は他の冒険者に知らせる必要はありません。」

「ほう、なるほどな、そういうもんか。」

「ギルドマスターが秘密にしたいわたくしへの頼み事、そうですね、例えばギルドマスターはセザン村に愛しい方がいらっしゃるんですが、気が弱いため、告白できません。恋文を書いてみたけれど、渡す勇気もない。代わりに秘密を守る秘書の仕事をしているわたくしに届けるように依頼した。そういうことを冒険者の方々が推測するかもしれませんが、別にかまいませんよね?」

「・・・そんな根も葉もないことを言い触らすのか?」

「まさか。そういう内容なら秘書を頼っても仕方ないと、考える方がいるかもしれないという話です。」


ふふふ。次郎が苦虫を噛み潰したような顔をする。気分がすっとするわ!!まあ、正直そんなことを考える人がいるとは思わないけれど。不機嫌な顔をしたまま次郎は最後のレベル上げについて聞く。


「そこまでは、それでいいとして、ユージンのレベル上げはどうするんだ?」

「クッマーンの討伐には冒険者レベル17、18くらいの4人がかりで一匹を倒すとありました。クッマーンを一人で倒したことで、17のレベルには最低でもなれるでしょう。」


これも討伐依頼と採取依頼の違いだ。採取依頼は偶然良いものを手に入れることができたりするので、採取レベルが高いものでも大概冒険者レベルは変わらない。討伐依頼になるとその討伐対象を倒せるレベルが大まかに決められていて、レベルの高いものを倒せば冒険者レベルが上がるのだ。今回は討伐依頼ではないけれど、採取依頼中の討伐なのと、クッマーンは中級レベルのモンスターのようなので、その功績が認められると思う。


「なるほどな。採取依頼中のモンスター討伐ならギルドの鑑定が入るから、ちゃんとユージンが一人で倒したという証明ができるな。どれくらいクッマーンがいるかはわからねえが、討伐した数によっちゃ20まで上がれるか。」


ギルドに依頼完了の報告に行くと、鑑定される。依頼内容と合っているか。きちんと自分でその依頼を完遂したのか。他の人に代わってやってもらって結果だけを持ってきたのではないか。それを判定する技術がギルドにはあるらしい。実際にその鑑定をしているところを見たことはない。見せると、鑑定を潜り抜けられる冒険者がいるかもしれないからだ。でもその鑑定は間違えたことがないので、ギルドの信頼に繋がっているようだ。


採取依頼の時も鑑定で頼まれた品と合っているかどうか確認してもらい、その際、モンスターを討伐した時には報酬が加えられるときもある。でも、普段ユージンが受けられるのは初級レベルの採取依頼だから、モンスターも雑魚レベルで、特に報酬が増えるようなことはない。


「だがな、『タツカイヨオ』にはとてつもなく似てる『ヤツスイノオ』という毒草がある。かなりレベルの高い冒険者か学者でもなきゃ間違えるぜ。大抵タツカイヨオとヤツスイノオは一緒の場所に生えてるぞ?採取依頼ということは間違ったものを持ってきたら減点される。レベルだって上がったところで下げられちまうぞ。」

「その点は心配いりません。わたくしが見分けられますので。」

「イシクラがか?冒険者でも学者でもないのに!?」

「ええ。ですが、機密事項ですので、見分ける方法はお教えできません。」


驚いてる次郎に続けて言う。


「もちろん鑑定すればわたくしが依頼に手を貸していることがわかるでしょうが、そもそもこれはレベル2の冒険者への博打的依頼。成功したらいいなという期待レベルなのですから、たとえヤツスイノオを取ってきてしまってもそんなにレベルが下がることはないのでは?」


そうでなければ採取の難しいタツカイヨオを低い依頼料でギルドが受けていいことにはならないよね。きちんとタツカイヨオの採取依頼を出すのなら、もっと高い金額でないと駄目だ。それを低い金額で受けるのならば、成功率が低くてもいいという条件をギルドはつけなくちゃいけないけない。ギルドは冒険者にも依頼主たちにも平等が求められるのだから。


「それに、依頼者の方も他の冒険者も、そうですね、ギルドのほうでも。わたくしとユージンは一セットと思われているのでは?ならばわたくしがユージンの依頼を手伝ったとしても問題はありませんよね?わたくしは秘書なので、冒険者レベルは関係ありませんが、わたくしという秘書がついている冒険者のユージンは秘書を一つのスキルとして考えて、冒険者レベルが上がってよいのではないでしょうか。」


冒険者の中には面白い剣を持つ人がいて、その剣で狩りをすると獲物が美味しくなるというのだ。もちろんその冒険者には料理人からの依頼が殺到している。それはその人だからというより、その剣を持つ冒険者だから依頼が行くのだ。剣がその冒険者のスキルの一つとなっているということ。そう言う例が他にも見受けられるのだから、秘書を冒険者の使えるスキルの一つとして考えてもらえるんじゃないだろうかと、資料室の本を見て思ったのだ。


「なるほどな、『秘書』という一つのスキルか。だが、そうすると、今でさえイシクラを自分のものにしようとする奴がいるんだ。スキルに認定してしまうと、お前が狙われる確率が増えるぞ?」

「神奈は渡さない。誰にも。」

「うん、ユージンわかったから、腕に力こめるのやめよう、苦しい。」


はい、もちろんユージンいますよ?ユージンのお膝の上での交渉ですよ、あはははは。目がうつろになるのは許してほしい。

神奈は秘書として話す時は「わたくし」と名乗ります。自分なりの心の切り替えです。


お読みいただきありがとうございました。

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