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第二話

お仕事始まりました。

今日もギルドの依頼掲示板の前に立ち、ユージンと二人、どの依頼を受けるかを相談する。


「この依頼にしよう、神奈。」

「だめよ、それは他の二件と期日が重なっているわ。」

「もう一つ増えても問題ない。」

「場所がそれだけ反対方向なの。間に合わない可能性があるわ。」

「報酬がいいのに。」

「報酬よりも、今は信頼を得ることが大事なの。一つ一つの依頼を確実に終わらせるの!」


まあ、決定権は私にあるが。



初めてギルドに来た時、依頼の多さに驚いた。おっと、言葉が抜けてしまった。依頼用紙の対象冒険者の欄に『ユージン以外のレベル1以上の冒険者』とか『レベル1~3の冒険者、ただしユージンを除く』と書かれた依頼の多さに驚いた。マジです。しかも、対象者の欄に記載がなくても、詳細の部分にユージンお断りとかユージン受付不可とか書いてある。どんだけ信用ないんだ、最低ランクなんてもんじゃない、底辺じゃないか。


依頼を隅から隅まで見て、やっと一枚ユージンを拒否していない依頼用紙を見つけた。まあ、依頼人の所に行ったら書き忘れただけっていうオチだったけど。依頼書を手にしたユージンを見た依頼主が拒否しようをとしたのを全力で止めた。


「依頼書って重要ですよね?そこに書かれてたことを、冒険者に依頼書が渡った後から訂正なんかしたら、依頼する側が信用を無くして、冒険者に受け付けてもらえなくなりますよね?報酬料金を書き間違えたとか、依頼の内容を間違えたりとか。ユージンに受けてほしくない依頼だとはどこにも書かれてなかったので、こうして、ユージンとご依頼主である貴方を訪ねたのです。ご安心ください、確実に依頼は完了します。わたくし、ユージンの秘書の石倉と申します。わたくしがユージンの仕事を管理いたしますので、期日忘れなど起こさせはしません。」


ええ、一気に言いました。相手に有無を言わさずこっちのペースに持ち込まなければと頑張りました。狙い通り、依頼主はまくしたてられて頷くくらいしかできなかったよ。


で、私は秘書としての初仕事を見事にやり遂げたのだった!いや、別に私が得意になることでもなかったか。依頼内容はレンダという薬草を籠に3つ満タンで取ってくるというもので、そのレンダは魔物が現れることのある森にしかない、うん、どこかで聞いた話だね。


ユージンはさっと森に行って、バーッと魔物を倒し、レンダを森の奥の方から取ってきた。手前の方は取りやすいので、他の人に残してあげるのだそうだ。いい人じゃん!馬鹿じゃないじゃん!


そう思ったのはそこまで。いや、あれは私が悪かったのか?森に一緒に連れていかれた私、初めて見る魔物におびえてしまい、しばらく動けなかった。それをユージンは魔物の瘴気にあてられたと勘違いし、依頼のレンダを私に使おうとした。しかも、その森にあるレンダを全部。


最初にレンダって何に使うのか聞いておいてよかった。そこら辺にいる小さな害のない魔物にうっかり触れてしまったとき、火傷したような痕と痛みが残る。それは普通の火傷用の薬では治せず、レンダでないと治らない。魔物の有害な物質から受けたダメージは専用の薬草でないと駄目なのだと。だから、帰ろうとして私が思うように動けなかったのを見たユージンが血相を変えて、


「瘴気にあてられた!?」


と言って、レンダを掴もうとしたときに、


「びびっただけ!心配ない!!」


と慌てて止めたのだ。


あとあと聞くと、瘴気にあてられた時などは、レンダの葉を2,3枚使えば治るらしい。なのに、ユージンは森のレンダを全部使おうと思ったと言ったのだ。うん、心の準備ができてなかった私も悪いが、加減ってものを知れ。と思ってしまった。そこから私はユージンをユージンさんではなく、呼び捨てにすることにしたのだ。咄嗟に止めたりするときに、『さん』づけて呼んでたらその分遅くなるかなと思ったのである。



まともに依頼をこなせば底辺の信頼も少しは回復するかと思ったが、そんなのは果てしなく甘い考えだった。2度目の依頼を受けるのにかなりの日数がかかった。1度目は偶然依頼主のミスでユージンが受けられたが、やはり消えない『ユージンお断り』の文字。依頼を貼りに来る人に、秘書の私がついてるから大丈夫、ユージンに任せてみないかと持ちかけるのだが、ユージンの秘書は私の前にもいた。そう、大敗していった方々が。そのせいで『今度の秘書だって・・・』と思われたり言われたりするのだ。


秘書として、ユージンを売り込む営業能力も必要か、とグッタリしたが、ここで頑張れば向こうの世界で就職活動に活かせたりするかも、と思い直し、依頼を受けるため色々試している。


まずはギルドでよく依頼を出す人の家を教えてもらい、挨拶回りに行くことにした。1件目の依頼を例に挙げ、期日はきちんと守ったことを確実に伝える。まあ、そんなのほとんどの冒険者ができてるって目で毎回見られるが、重要ことなのでここは譲れない。丁寧に、迅速に、確実な依頼遂行をモットーに掲げておりますと宣伝文句を流していく。


あと、前回の依頼者には毎日のように会いに行く。依頼はギルドを通さないといけないので、直接依頼を受けることはないが、いい印象は残しておきたいと思うのだ。個人的な営業はギルドがある時点で禁止されているようなものだが、何しろ底辺のユージン、ギルドも多めに見てくれるとのこと。同じギルド内で自業自得とはいえ、依頼を受けられない現状の冒険者がいることは、ギルドの評価にも影響するそうだ。


そんな応援もあり、2度目、3度目の依頼も成功。そして、ユージンの冒険者レベルが上がったのだ。1から2へ!・・・喜ぶべきか悲しむべきか。



山田さんが言っていたように、ユージンの能力は高いみたいだ。たまたま他の冒険者が魔物を倒してるのを見たけど、ユージンだったら剣を一振りすれば終わるなって思ったのを、剣、魔法、回復、アイテム補助、とわかりやすくゲーム風で言うなら、8ターンくらいで倒してた。


だけど、その冒険者をギルドで見た時、対象者レベル5以上の依頼を受けていたのだ。つまり、個人のレベルと冒険者のレベルは違うということだ。冒険者のレベルは依頼を受けることによって上がっていく。依頼を失敗し、依頼主から拒否される底辺の冒険者のユージンはレベル1だったのだ。


それでも3つ依頼を達成したら、1つレベルが上がったのだ。また3つこなせばレベルが上がると思ったのだが。レベルが上がるのは件数だけでなく、依頼内容にもよるらしい。今はまだユージンは採取系しか受けてない。討伐依頼とかになるとぐんとレベルが上がるらしいが、討伐依頼は一人ではなく、パーティーを組んで倒すことになることが多い。一人でも依頼が受けられるのは本当に名の知られた凄腕冒険者ぐらいだ。だから、基本的に討伐は団体様で行動する。ユージンに協調性は求められない、うん無理。


採取系も中級レベルになると、採取ポイントがもっと危険な場所になったりするため、報酬もよく、レベルも上がるのだが、中級レベルって最低でも冒険者レベルが20以上なので、挑戦できるのはいつになるかなあと遠い目をしてしまう。


なので、受けられる採取系依頼をこなし、地味にレベルを上げてくしかないのだが、レベルが2に上がったことでちょっと問題が。依頼をきちんと完了してる実績をみて、レベル2も任せてくれる依頼主、レベル1なら任せてもいいが、レベル2の依頼は任せられないという依頼主、何の依頼も任せられないという依頼主。それぞれの割合がどれくらいかは言わずともわかるだろうが。


そんなわけで、今現在私たちが受けられる依頼、ユージン不可の文字がない依頼は多くて5件程度。うん、増えたよ、頑張ったよ。挨拶回りも功を奏していると思う。でも、これが10件くらいに増えたら、ギルドが見逃してくれるという特別待遇もなくなるだろう。


そして、冒頭の会話の依頼だが、二つの依頼は何の問題もなく終わり、ユージンの言う通り3つ目の依頼を受けても大丈夫だったようだ。うーん、まだユージンの実力を測れていない。秘書としてこれではダメだ。しかし、実力を見たいと思っても限られてる依頼。私の秘書レベルも地味にあげていくしかないようだ。

お読みいただきありがとうございました。

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