第十八話
ちょっとスランプ入りました。遅くなって大変申し訳ありませんでした。
とりあえずミコちゃんさんが来るまで資料室の本でも見てようかな。薬草の本は太郎さんが携帯を魔法道具にしてくれた結果、携帯に薬草図鑑が入っちゃったし。他に何か調べたいことは・・・ある。そうだ、移動方法調べなくちゃ。
今回はいきなり言われたから、ユージンもアシカサンを手配してないはず。でも、アシカサンが三人乗りかわからないし、何より、アシカサンじゃ目立っちゃう。やっぱり馬車のように中が見えない状態になってないと、ギルドから出るのは難しいよね。
「ユージン、今回は馬車を使うのかな?」
「馬車は使えない。」
「そうだね、馬車は使えないね~。」
いきなり声がしたので、びっくりして振り返ると、入り口にミコちゃんさんがいた。
「ミコちゃんさん、いらしてたんですか?」
「ふふふ。カンナちゃんはその呼び方で定着しちゃったねぇ。」
「あ、すみません。」
「いいよいいよ~。」
あ、そう言えば何で馬車が使えないんだろう。
「あの、馬車って目立つから使えないんですか?」
「ん~ん。違うよ~。僕とユージンは力が強いからねぇ。普通の動物は怖がって近づいてきてくれないんだよ。だから、馬車には乗れないの。」
「そうなんですか。じゃあ、どうやって移動したら。」
「歩こうか。の~んびり行こうよ。」
歩きってどれだけ日数がかかるの?というか、私そんなに体力が・・・あれ?もしかするとずっとユージンに抱えられたままという可能性も。いやいや、それだけは何としても阻止をしなくちゃ。
「のんびりなんて言っていたら、息子さんに怒られてしまうわよ、ミコちゃん。」
「ええ~君までそんなこと言うの~。」
今度はチョコさんが現れた。受付の方は次郎が行ったから抜けてこられたのかな?チョコさんは私たちをギルドの裏手に案内してくれた。そこには熊、もといベアトリーチェの花子ちゃんがいた。馬車を引く馬の部分に花子ちゃんがスタンバってる。
「花子がミコちゃんの領地まで車体を引っ張っていってくれるから、三人とも中に乗ってしまって平気よ。御者はいらないわ。領地に着いたら、領主館までの転送装置があるでしょ?」
「ええ~。それじゃ早く着いちゃうよ~。」
「御者がいらないって花子ちゃん、道がわかるんですか?」
「ええ。帰りも自分で車体を引いて帰ってこられるから、心配いらないわ。」
「すごいんですね、花子ちゃん。」
「じゃあ、寄り道もできないの?ちょっとくらいいいよね?」
私とチョコさんが話している間にも、まっすぐ帰りたくなさそうなミコちゃんさんは不満そう。早く帰らないと怒られるんだよね?この間もやっぱりこってり怒られたって言ってたよね?
「ミコト、神奈を困らせちゃダメ。」
「ユージンはお嫁さん第一すぎるよぉ。」
「お嫁さんじゃないです。ミコちゃんさんは早く帰らないと息子さんに怒られるんですよね?」
「だってもう怒られるもん。だったら寄り道した方が楽しくない?」
お嫁さんじゃないって言ったのにスルーされた。でもやっぱり、怒られるくらいの滞在日数だったんだ。多分、私たちのせいだよね。
「あの、ミコちゃんさんはギルドマスターと一緒に、その、押し寄せてきた人たちの対応に回って下さってたんですか?」
「え?ああ、うん、まあね。やっぱりカタガキってもんがあると違うよねぇ。こう見えて、僕、結構偉かったりするんだよ~。ジロちゃんが強く言えない奴らにもびしっとカッコよく決められちゃうんだ~。凄くない?」
その口調で言われても、あまり説得力はないけれど。チョコさんも苦笑いだ。
「そうね、ミコちゃんは偉いし凄いから、まっすぐに帰れるわよね。」
「ぶ~。・・・仕方ないかぁ。ここにいつまでもいると、こっちの裏口にまで来そうな勢いだよね。」
ミコちゃんさんは不満そうに口を尖らせた後、ギルドの方を向いて困った顔をしている。やっぱりご令嬢たちって扱いが難しいんだろうなあ。
・・・・・・・・・・
こっちに来て初めて馬車・・・でいいのかな?馬じゃなくて花子ちゃんが引いてるけど。まあ、馬車ということにしよう。その馬車の中で、てっきりユージンの膝の上に乗せられるんだと思っていたら、普通に横に座れました。
・・・恥ずかしい!!まるでそれを期待してたみたいじゃない!!違うの、断じて違うのよ!!!今までの経験上導かれる必然的な答えだったのよ!!!
とまあ、心の中は羞恥で荒れているけれど、顔には出さないように頑張ってみてる。もしかすると、一緒に乗っているのがミコちゃんさんだから、この対応なのかもしれない。
「そう言えば、二人は今度、もっと広い範囲で仕事をするようになるよねぇ?」
「はい。多分そうなんだと思います。今回がユージンが上級者になってから初めての仕事なので、まだ勝手がわかってはいないんですが。」
「じゃあさぁ、ジロちゃんみたいに魔獣を飼った方がいいんじゃないかなぁ。」
「アシカサンにする。」
珍しくユージンも積極的に話に加わってきてる。ミコちゃんさんと話すのは嫌じゃなさそうなのよね。でも、アシカサンはダメだと思うんだけど。
「アシカサンは二人向きじゃないね~。それに、アシカサンは個人所有は認められてないんだよぉ。」
「あのー。ちょっとお聞きしてもいいですか?」
「いいよ~。何かなぁ?」
「私も馬車以外の移動方法を考えようとは思っていたんですが、アシカサンや、ベアトリーチェはあまり有名ではないんですか?」
「ん?有名だよ。魔獣の中ではかなりポピュラーなものだねぇ。」
「以前、資料室でモンスター図鑑を見ていたのですが、両方とも載っていなかったんです。」
すると、ミコちゃんさんは首をかしげて私を見た。
「もしかして、カンナちゃんはモンスターと魔獣の違いを知らない?」
「え!?違うんですか!?」
「まあ、厳密に区別しているのはうちの領地内だけで、他はあやふやなのかもしれないなぁ。魔獣図鑑は資料室になかった?」
「すみません、そこまでは把握してなくて。」
「そうか。じゃあ、僕が説明しようか。モンスターっていうのはまあ、討伐対象だからよく見かけると思うけど、大元は魔の要素なんだ~。それがいっぱい集まったりして目に見える姿を持って、こちらに害を与えようとするものって感じかな?それに対して魔獣は大元は動物、たまに植物って時もあるけどね。そこに魔の要素が入り込んでしまって、元の種族からは離れた存在になってしまうもの、かなぁ?」
「魔獣は討伐対象にはならないということですか?」
「う~ん。そこはちょっと難しいんだよね~。魔の要素が入りすぎたりして、暴れることしかできなくなってしまった魔獣は対象になるね。場合によるって感じかな?」
とりあえず、モンスターは完全に倒さなくちゃいけない敵ってことでいいのかな。魔獣はケースバイケースと。
「うちの領地に着いたら、他の魔獣と会ってみない?近くに魔獣保護施設があるんだよね~。もしかすると、そこで二人の運命の出会いがあるかもよ?」
「運命の出会い、ですか?」
「そーそー。魔獣は普通の動物を飼うのとは違うからね~。魔獣がその人と契約してもいいっていう意思がないと飼えないんだ。少なくともうちの領地ではそう言う法律を作ったからね~。あーやっぱり僕って偉すぎる!」
ミコちゃんさんが自画自賛している間に馬車が止まった。目的地に着いたみたい。すると、さっきまで上機嫌だったミコちゃんさんの表情が曇った。
「着いた。」
「そうね、降りましょうか。」
「じゃあ、僕はこのまま」
「ミコちゃんさんは、と~っても偉い方ですもの、例え息子さんに怒られるのがわかっていても、きちんと帰りますよね?私たちも、上級者になった途端、依頼を失敗するなんてこと、起こしたくないですもの。自分で降りるのと、ユージンに下ろしてもらうの、どちらがいいですか?」
にっこりとミコちゃんさんに笑顔で問いかけると、ミコちゃんさんは泣きそうな顔で、
「降ります。」
とぼそっと答えた。
次回、『ミコちゃん息子に怒られる。』でお会いしましょう~。




