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第十五話 ー神奈の見る夢ー

今回はちょっと違う話なので、副題入りです。


ちょっと大幅な(?)ネタバレ回のつもり。

「・・・な!・・んな!!カンナ!どこにいる!?」


うるさい。眠いのにしつこく呼ばれている。起きなきゃいけないのかなあと思って目を開けると、そこは雲の上だった。つまり私は空中に浮いているということ。ああ、これいつもの夢だ。そう理解すると、ふわぁぁぁと、大きなあくびが聞こえる。


その主は緩くウェーブしている長い黒髪を、左右、一房ずつ前に垂らしている20代くらいの美人さんだ。ギリシャ神話に出てくる女神さまが着ているような襟ぐりの開いた服を着ていて、そこから、たわわに実ったお胸様がちょっと覗いている。その垂らしている髪でガードされているけれど、これは、『ポロリもあるよ』ところじゃない、『今日は何ポロリで済ませてやろうか』っていう挑発的なお胸様だ。


神無かんな!」

「はいはい、何か御用ですか?ジロー様。・・・ふわぁぁ。」


神無と呼ばれたお胸様、違った、黒髪の美女に対するは、きらきら光る銀色のちょっと長めの髪を一つに縛っている小学生くらいの男の子。太郎さんの子供の頃ってこんな感じだったんだろうか、と思えるほど似ている。この子が太郎さんの弟だって言ったら、そっくりですねと言える。次郎はぜひこの少年を見習ってほしい。弟とはこういう感じの子のことを言うんだぞと。その男の子、ジロー君はちょっと怒っているようだ。


有神ゆうじんを見なかったか!?」

「有神ですか?さあ、私は今起きたばかりなので見てませんけど。」

「今起きたのか!?」


ジロー君がびっくりするのも無理はない。だって、あからさまに太陽が傾いている。午後の3時、4時くらいじゃないの?


「先ほど寝たばかりですので。」

「そ、そうか、すまない。」


不規則な生活なんだろうか、寝たばかりで起こされちゃったのか、大変だな。


「ですから、70時間くらい前ですね、有神を見たのは。」

「寝すぎだ!!」


寝たばかりって2日以上寝てるよね!?そろそろ3日たっちゃうよね!?


「まあまあ、それはさておき、有神なら、間違いなくタロー様のところでしょう。私に聞くまでもありません。」

「・・・お前は少し反省というものをしろ。」


ジロー君はため息をつくと、頭が痛そうに右手を額に当てる。頭痛の種に間違いなくこの神無さんが入っているだろう。


「実は、有神には兄上のところから、資料を持ってくるように頼んだのだ。」

「ジロー様、ただでさえあの馬鹿はタロー様のところに入り浸るんですよ?何故、タロー様のところへ行く正当な理由を与えてしまったのですか。」


呆れた口調で言う神無さんに、ジロー君はムッとして言った。


「僕だってみすみす口実を与えるつもりはなかった。そもそも、お前に頼もうと思ったのだ。なのに、どこにもいないし。仕方なく手の空いている有神に・・」

「なるほど、お急ぎだったのですね。そしてその有神が帰ってこないということですか。」


神無さん、自分が寝てたのを責められているのに、そこは気付かなかったふりをしちゃうんだ。しかし、いちいち神無さんが動くたびに、お胸様も動いて、いつポロリしてしまうか気が気じゃない。ジロー君だって多感な少年だろうに、精神衛生上よろしくないよ。


「それにしても、そのだらしない格好を何とかしないか。」

「あら、寝ていたところをジロー様に起こされたのですから、仕方ないじゃありませんか。」


あんなお色気たっぷりな美女を前にして、ジロー君は冷めた目で冷静に注意してる。なるほど、パジャマならゆったりした服装も納得できる・・・のか?まあ、ジロー君が呼ぶからあわてて着替えずに駆け付けたって勤勉さを表して・・・いるのなら、そもそも寝てないよね。


「わかりました。それでは有神を呼べばよろしいのですね。」

「僕は着替えろと言ったんだが、まあいい。有神を呼んでくれ。」


もしや、神無さん、着替えないのはまだ寝るつもりなんじゃ・・・と思っていると、神無さんはすぅぅっと大きく息を吸い込んだ。ああ!!お胸様が!!ポロリしちゃうよぉ!!


「今すぐここに来い、馬鹿!ジロー様がお呼びだ!手間をかけさせるなじゃない!馬鹿が!!」


一気に吐き出した言葉は、ビリビリと空気を震わせる。なんとなくどこかで聞いたことあるようなしゃべり方・・・それにしても随分荒っぽい口調になるんだね。美人さんが台無しだよ。


「んだよ!!クソババァ俺を引きずるんじゃねーよ。」


奇跡的にポロリしなかったことに安心していると、いきなり赤い髪の男の子がポンッと現れた。ジロー君と同じくらいか、少し小さい男の子だ。口が非常に悪い。ユージンに似ている気はするが、うちのユージンの方が何倍もでかいけれど、何十倍もかわいいぞ。


「おい、馬鹿、ジロー様に頼まれていたものはどうした。」

「はぁ?知らねーよ。俺はタローのとこで働いてたんだよ。てめえと違って、真面目に働いてましたー。」


多分、本当に真面目に働いてはいたのだろう。だけど、言い方が酷い。うちのユージンだったらきっと、褒めて、褒めてって感じに見えない尻尾を振り回しながら「働いてた」って一言言った後じっと私を見るだろうに。(褒めるまで見つめ続ける)


そんな失礼な態度を取る有神君に神無さんははぁっとため息をついて、口調を改めた。


「あのねぇ、有神。何度も言っているけれど、私たちはジロー様の側近なのよ?そして、タロー様はここからいなくなるお方。君はタロー様についていくことはできないの。私たちの役割はジロー様と共にこの世界で」

「うるせー、クソババァ。俺はタローと一緒に行くんだ。ジローには何人も手下がいるじゃねーか。タローは一人なんだぜ?俺は俺の思う通りにする、てめえの指図は受けねー!」


そう言うと有神君は姿を消した。神無さんはまたひとつため息をついて、ジロー君に向き直った。


「申し訳ございません、ジロー様。あの馬鹿は私の手に負えなくて。」

「いや・・・有神の生まれを考えると、仕方がない事なのかもしれん・・・しかし、困ったな。今からでもいいから、資料は神無が兄上のところから持ってきてくれないか。」

「ああ、その資料とはこちらですか?」

「・・・これは」

「そろそろジロー様が比較なさりたいんじゃないかと思いまして、配置方法やそれぞれの割合等、全ての過去の資料をさかのぼってまとめておきました。眠る前に。」


うわー。もう用意してあったんじゃない、神無さん。ジロー君は手渡された資料を手に固まってる。


「・・・・神無。」

「はい?」

「これがあれば、僕は有神に兄上のところに行くよう指示をしなかったし、今まで無駄な時間を使うこともなかったんだが。わかっていたのなら、せめて、さっき起きた時に手渡してほしかったな。」

「まあ、それはそうなんですけれど、ジロー様の目の前であの馬鹿を叱るというパフォーマンスをすることによって、点数稼ぎをしようかなと思ったので、一応呼んでみました。」

「神無・・・お前は、本当に」

「デキる部下をお持ちで、ジロー様は幸せですよね?」


ふるふるとジロー君が震えている。私でもわかるよ、感動で震えてるんじゃなく、怒りで震えてることくらい。っていうか、キレていいレベルだと思う。


「神無ぁ~~~!!!」


まあ、そこからお説教ですよね、わかります。神無さんがちょっと涙目になっているのは自業自得だと思います。ひとしきり怒るとジロー君は資料をぱらぱらとめくる。


「それにしても、良くまとめてあるな、まあ、助かった。」

「あ、そうでした、ジロー様。前回の分がどこにもなかったのですが、どこかで使われて」

「前回は失敗したのだ。」

「え?」


神無さんの言葉を遮って強い口調で言うジロー君に驚く。後悔のにじんだ声に神無さんも、それ以上深いことは聞かなかった。


「まあ、失敗することもありますよね。うん。」


と、神無さんがざっくりとしたフォローをしていると、下の方で大きな音がする。


「・・・ジロー様。あの馬鹿がまた深く考えもせずにバカバカと力を使っているようです」

「ああ。そうだな。」

「大変申し訳ないのですが、私はまた眠らせていただきます。せっかく蓄えた力をあの馬鹿がもう使い切ってしまいそうなので。」

「有神には、神無と対だからこそ大きな力が使えるが、力の配分は考えろと指導したはずなのだが。神無が眠ることによって何とかバランスを取っているというのに。仕方ない。今日はゆっくり休め。」

「ありがとうございます。それでは休ませていただきます。ジロー様、良いお年を。」

「待て!いったいどれだけ眠るつもりだ!!起こすからな!明日になったら確実に起こしに来るからな!おい、神無!・・・・聞いて・・か!・・・い・・・な」


今が何日かはわからないけれど、年を越すまで眠るつもりなのか。すぐ眠ろうとする神無さんを見ていたら、私もなんだか眠くなってきた、とりあえず、ポロリがなくてよかったなあ。

神奈がセザン村で見た夢は、内容は違いますが、ジロー様と神無が会話している夢です。


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