第十三話
今年最初の更新となります。本年もよろしくお願いします。
私は今、ギルドの床に立っています!自分の足で!!地に足がついた生活っていいよね!!!
さて、ユージンはどうしているかというと、表彰式真っ最中。やっぱりクッマーンを一人で113体倒したというのはすごい記録らしい。私がごちゃごちゃと言い訳を考えなくても、ユージンのレベルはグンと上がった。冒険者レベル20を目標にしていたのだけれど、一気に冒険者レベル70になった。中級を通り越して、上級者レベルまで上がったよ。
それで、上級者レベルになると、認定式というのがあるらしい。上級者の証が渡されるのだという。しかも、今回はセザン村を治めている正しい領主様からもご褒美をいただいたので、それも兼ねての表彰式が諸々の事情により、一か月後の今日行われている。
「まあ、このギルドじゃお前らは有名だけどな、認定式には偉い奴らも来るし、中級すっ飛ばして上級になるなんて物珍しさから見物に来る奴もいると思うぜ。お前とイシクラがいつものようにいると、注目されるな。お前自身も注目されるが、レベルが底辺だったお前を短期間で上級者まで押し上げたイシクラはもっと注目されるだろうな。せいぜい誘拐されないように気をつけろよ。」
という、次郎のありがたい忠告(ただし、ニヤリと笑っていたので、他人事とも思える)に、ユージンもかなり考えたらしい。認定式の間は渋々私から離れることを決めた。
そして、今私は式典の様子をギルドマスターの部屋で、何人かの『ユージン選抜ギルドメンバー』と一緒に見ている。何を基準に選んでいるのか、しばらくたってからわかった。このメンバーは私に誘いをかけてこない人たちだ。『イシクラはユージンの付属品』と言った人がいるので気付いたのだけれど。どうして依頼主が覚えられないのに、何人もいるギルドメンバーからその条件で人を割り出せるのか、ユージンが不思議でならない。
選抜に漏れたギルドメンバーたちは大部屋の方に集まっている。その大部屋と、ギルドマスターの部屋(そもそもギルドマスターの部屋にいていいのかって話だが、次郎が許可してるのでいいんだろう)に監視カメラのモニターみたいなのがいくつかあるんだけど、音声は残念ながら伝わらない。全体が見える画面を見ると、玄関を入ったすぐのフロアは式の関係者とやじ馬でぎゅうぎゅうだ。
別の画面では、今、ユージンに腕輪が渡されている。あれが、上級者の証なんだろう。・・・おめでたい場面なのに、素直に喜べない私がいた。心の準備がまだできていないのに、区切りがついてしまった。
もう、ユージンに秘書はいらないんじゃないだろうか。
私は元の世界に帰る時が来たんじゃないだろうか。
そんな思考に囚われている私に、隣の女性冒険者の人が話しかけてきた。
「ねえ、イシクラちゃん、どうするの?あれ。」
「へ?」
彼女が指さす方向にはユージンに渡された腕輪。・・・え?こんな大事な場面に不良品?ユージンの手は受け取った姿勢のまま。ただ、手の中にある腕輪は真っ二つに割れている。
「弁償とか、高そうだよね、いくらになるんだろ。」
「え!?ちょ、ちょっと待ってください。あれ、不良品じゃないんですか!?」
私たちの会話に別の人も混じる。
「いやいや、さすがにこんな大事な式に不良品はないよ。」
「ユージンが壊したんじゃないの?」
「ああ。そう言えば前にもあったよね。伝説の剣を折っちゃったっていう」
「そうそう。あの時はどうしたんだっけ?」
「ギルドマスターが修復したんだったかしら?」
「あれ?もみ消したんじゃなかったっけ?伝説の剣はありませんでしたって。」
おいおい。何が本当かはわからないけれど、とにかく、伝説の剣とやらはユージンが壊したことは間違いないようだ。じゃあ、あの高価そうな腕輪もユージンが壊したってことか。ほんと、どうすればいいの?
・・・・・
「あのぉ、ギルドマスター、腕輪は弁償とかそう言った話は・・・」
「そうか、イシクラは初めて見たか。こいつは大抵の魔具は壊すと思った方がいい。さらに言えば神代の時代からあるとかいう、伝説級のもんとの相性がすこぶる悪い。うっかり触らせないようにしとけよ。」
「そうなんですか!?はい、気をつけます。」
「腕輪は想定内だからな、形式として渡しただけだ。貴重っちゃ貴重だけど弁償はしなくても平気だぜ。」
式が終わり、やじ馬たちも帰っていったギルドで、次郎に話を聞いている。良かった、弁償しなくてすんで、と安堵のため息を漏らす。しかし、『神代の時代からあるもの』なんてのを壊したらどうなるのか、考えるのも恐ろしい。ユージン、そんな特殊能力はいらないよ。
上級者レベルの冒険者はすぐに上級者とわかるように腕輪を嵌めておくのだけれど、ユージンは腕輪の代わりに、上級者用の冒険者カードを渡された。必要な時はそれを提示するのだそうだ。カードも紙とかではなく、魔法道具の類のようだ。
「この冒険者カードとかって、ユージンが壊したりとかはしないんですか?」
「ああ。それは作った奴と、ユージンの相性がいいからな、大丈夫なんだ。ユージンが使っている剣だって、魔具だが壊れないだろう?」
「確かに。」
魔法道具相手にも相性が良い悪いってあるんだね。
「ユージンはこの冒険者カードを作ってくれた人と仲いいの?」
「うん。すっごく。」
嬉しそうな顔をするユージン、ユージンにそんな人がいたなんて、あ、でもミコちゃんさんとは仲がよさそうだったな。
「今は、だろ?」
「・・・うるさい。」
次郎の言葉にむすっとするユージン。ん?何やら複雑そうな感じだね。ミコちゃんさんとは別の人なのかなあ?会ってみたい。
「そうだ、イシクラ。お前は認定式には出席しなかったから、言っておくぞ。上級者レベルの者はその所属するギルドマスターによって、個人依頼、指名依頼を受けられるか決められる。俺はユージンへの個人依頼、指名依頼を許可しといた。それと、上級者は初級レベルの依頼は受けられない。レベルが低い奴らの仕事を奪うことになるからな。ただし、中級レベルの依頼は条件によって上級者も受けることができる。」
上級者の仕事の受け方か。正直、そんなレベルになれるとは思ってなかったので、知識が身についていない。意外にも丁寧に教えてくれる次郎の言葉を手帳にメモしていく。
「その1.緊急を要する依頼に対応できるレベルの者がいない時。」
なるほど、いくつも依頼があるんだから、中級の冒険者がいつもギルドにいるとは限らないもんね。
「その2.一定の時間がたっても依頼が残っている時。」
タイミングが悪いのか、依頼内容が良くないのか、残るなんて時もあるのか。
「その3.ギルド職員が依頼を受けた冒険者の補助が必要と判断した時。以上だ。」
ん?その判断をギルドマスターじゃなくて、職員がするの?
「ギルドマスター、その依頼を受けて大丈夫かという判断は自己責任やギルドマスターの判断ではないのですか?」
自己責任でなければユージンは補助者をつけてもらえて、最低でも底辺ではなかったと思うのだけれど。
「俺はいつもギルドにいるわけじゃねーし、受付の連中の方が冒険者の安全ラインとか、癖とかわかってんだよ。だから、誰を補助者にすればいいかっていうのも考えられる。言っておくが、補助者をつけるのは中級レベルの依頼からだ。初級レベルの依頼はそんなもの必要ないからな。それに、ユージン相手じゃ誰も補助者をつけらんねーよ。」
私の言いたいこともわかったらしい。そっか、補助者をつけてもらったとしても、補助者の言うことを聞かなければいても意味がないか。
「ま、そんなとこだな。ユージンへの個人依頼は俺が受けるかどうか判断してやるよ。イシクラはまだどんな依頼が来るのかわかんねーだろうし、それをユージンがこなせるかってのもわかんねーだろ?」
「・・・お恥ずかしい話ですが、その通りです。よろしくお願いいたします。」
次郎が判断してくれるなら、そのほうがいい。それに、私がいつまで秘書としてユージンの傍にいるのかもわからないのだから。
お読みいただきありがとうございました。
1月23日、認定式が一か月後という表記を追加。




