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第十二話

クッマーン討伐依頼、終了しました~。

さて、団体の皆様がセザン村を出ていって、今は次郎と村長とユージンと私と、ミコちゃんさんがいます。結局次郎が折れたよ。


「俺がセザン村に来たのは、お前らが倒したクッマーンの数が原因だ。村長、クッマーンの話は聞いたか?」

「はい。思っていた以上に発生していたようで。かなりの数だったと。」

「イシクラ、お前はクッマーンをいくつ倒したか、わかるか。」


いきなり話を振られた。だけど、正確な数なんて答えることができない。段々とクッマーンを倒すユージンの動きが速くなってきて、いっぱい倒したなあ、なんて素人の感想しか出なかったから。


「7、80は超えていると思うのですが。」

「正確には113体だ。お前はユージンの秘書を名乗っているんだ、いくらギルドの個人ボックスに収納されてカウントされるとはいえ、自分自身で把握しておかなければ損をするのはユージンだぞ。」

「・・・申し訳ありません。」


いい訳もできない。ユージンが転送する前に数を数えておかなかった私のミスだ。


「次郎、神奈をいじめるな。」

「いいの、ユージン。怒られて当然なの。というか、上司として注意してもらってるの。」

「お前もだ、ユージン。お前が仕事上できないことをイシクラにフォローしてもらってるんだ。その自覚があれば俺が説教するような事態にはなってない。」


一応、次郎の言うことを聞き入れたんだろう、ユージンはむすっとしながらも言い返すのをやめた。


「それぞれ、反省するように。でだ、今回はたまたまユージンがいたから、クッマーンの被害は抑えられたが、俺もユージンも動けないとなると、大規模な討伐隊を組まなきゃいけないレベルだ。そうなれば今回のように迅速に討伐は終わらないし、被害も出るだろうな。費用もかさむ。」


そうだよね、クッマーンは温泉みたいになってる湖を越えられないって一応モンスター図鑑で確認はしたけど、突然変異が起こることだって考えられる。もし、湖を越えられてしまったら、セザン村は襲撃される。時間がかかってしまえばそういう可能性だって出てくるんだ。


「だから、今後そういうことがないように、魔脈を断ちに来た。ただ、そうするとタツカイヨオは採れなくなると思うが。」

「次郎殿、恐らくこのお二方だからこそタツカイヨオも採取できたのだと思うのです。我々の力では探し出すことも掘り出すことも無理だと思われます。クッマーンの脅威がなくなるのであれば構いません。」


確かに、タツカイヨオの根を残してはきたけれど、普通の人じゃ採取は厳しいよね。ユージンみたいに雪をまるっと持ち上げるとかできないもんね。魔脈っていうのは、魔力の流れで、それがないとモンスターは生存できない。タツカイヨオも土の中の魔力を吸収して成長するから、魔脈がなければ枯れてしまう。それにしても、魔脈を断つって発想はなかった。そんなことできるんだ。次郎だからなんだろうか?


「ジロちゃんのすること、僕も見にいこ~。いいよね、ジロちゃん。ベアトリーチェに乗って来てるんでしょ?だから、僕らよりも村に着くの早かったんだよね~。一緒に乗せてよ!」


ベアトリーチェ?ミコちゃんさんの目線を追うと、そこには熊がいた。もふもふのぬいぐるみを大きくしたような熊だ。私がクッマーンと聞いて想像した姿に似てる!それにしても、ベアトリーチェなんて貴族のご令嬢っぽい名前を付けるなんて、次郎も乙女チックな。


「何だか不愉快な視線を感じるから、言っておくぞ、イシクラ。これはベアトリーチェって名の魔獣だ。だが、大人しいし便利だから比較的乗り物として重宝されている。アシカサンと似たようなもんだな。個人的に所有している奴は少ないが、俺はこいつを飼っている。名前は、花子だ。」

「安定のネーミングセンスですね。」

「ん?なんだ?」

「いえ、何でもありません。」


結局5人そろって雪山に行くことになった。花子ちゃんが歩くたび、可愛らしい『ぷきゅっ』という音がする。子供が履く音が鳴る靴みたいだ。この音はモンスターが嫌がる音らしく、安全に移動できるらしい。


それにしても、次郎が花子ちゃんにまたがっていると、金太郎がおっさんになったらこうなるんだろうなっていう絵柄にしか見えない。また、武器がバトルアックス。まさかりだ!(笑)ミコちゃんさんと村長というオプションはあるけど、マッチョに成長した金太郎だ!


「ふふ。ユージンとカンナちゃんはラブラブだね!」


笑いをこらえるのに一生懸命だった私に、ミコちゃんさんから痛恨の一撃が。3人は花子ちゃんに乗っているけど、私は相変わらずユージンの姫抱っこで移動している。改めて指摘されると恥ずかしくていたたまれない。次郎も一緒になってからかってくるんだと思ったけど、ご機嫌なミコちゃんさんに釘を刺していた。


「言っておくが、お前が息子に怒られてもフォローはしないからな。むしろ、俺は帰そうと必死だったって村長も証言してくれ。」

「え、ひっどーい。ジロちゃん、裏切り者ぉ。」

「お前の息子が苦労してんのがわかるんだよ、もっと真面目に仕事してやれ。」

「え~。ジロちゃんのいけず~。」


<ジロー様、もう少し肩の力抜いたほうがいいですよ。ストレスで剥げちゃう。>

<誰のせいだ!しかも僕が手を抜いたらお前たちはさらにサボるだろう!?>

<え?もちろんですよ。側近として主君を見習います。>

<今見習え!>

<え~。>


二人を見ていたら、頭の中に誰かの会話が流れてきた。感覚としては、以前何かで見たドラマの一場面を急に思い出した感じだ。女の人と男の子の声だった。いったい何を思い出したんだろう?


「おい、イシクラ、聞いてるのか?」

「え?はい?すみません。聞いてませんでした。」

「はぁ。お前たちは人の話を聞かないところがそっくりだ。」


次郎にため息をつかれた。え?もしかして、ミコちゃんさんと一緒にされちゃったの、私。


「もう一度言ってやる。あの木の目印はイシクラがやったんだろ?」


次郎が向こうの木を指さす。木の幹にはびっしりと〇がついた付箋がくっついていて、付箋には『ここから下にはクマーンはいません』と書いてある。村の人への目印としてユージンに複製してもらって貼った付箋だ。これが✕になっていれば、クッマーンがいることになる。まあ、ここまで来て、付箋が✕だった時には手遅れだと思うけど、ないよりマシかなと思ったんだよ。


「はい、そうです。」

「あの紙は何だ?」

「ええと。」


私が異世界から来たことは次郎も知っているけど、ここには村長さんとミコちゃんさんがいる。話していいものか判断できないので、マジックアイテムです、と効果だけを伝え、濁しておく。


「じゃあ、あそこでいいな。」


次郎は木の近くに行くと持っていたバトルアックスに呪文を唱えた。あ、ユージンと同じ、形状変化をするのかな。何に変わるんだろう、と見ていると急激にバトルアックスが大きくなった。それを軽々と振り上げる次郎。それ、地面ごと割れちゃうパターンじゃないの?雪崩起きるよ!!


「よっこらせ。」


掛け声とともに振り下ろされる斧。


『パリーン』


まるで小さなガラスの置物が壊れてしまったかのような音がした。きょろきょろとあたりを見回してみるけど、何もない。次郎が斧を元の形状に戻したけど、地面は全く割れてなかった。それ以前に雪に痕すらついてなかった。本当に魔脈だけを切ったらしい。


「そうだ!折角カンナちゃんが目印作ったんだから、ちょこっと変えようか?」


ミコちゃんさんが指をパチンと鳴らすと、まるでお札が貼られてるような不気味な木だったのが、たくさんの付箋が大きな1枚の垂れ幕となって木の枝からぶら下がった。大きくなった文字と〇の記号、これなら村からも見えるかも。ミコちゃんさんて凄い人なんだなあと感心した。




セザン村での仕事が終わり、ギルドに帰ってきた。私たちはユージンと二人、またアシカサン(アシカさんでなく、サンまでが名前だとギルドで調べてやっとわかった)に乗って、行き以上に恥ずかしい思いをして帰ってきた。次郎の花子ちゃんはアシカサンと同じスピードで走れたので一緒に帰って来たのだけれど、注目度が半端なかった。


「ひっさしぶり~!みんな元気してた!?」


何故かミコちゃんさんも一緒に来た。寄り道したら、した分だけ息子さんに怒られるんじゃないですか?ミコちゃんさんはこのギルドで冒険者をしていたことがあって、ギルドの職員さんたちとは顔なじみらしい。次郎と話があるとギルドマスターの部屋へ消えていった。さて、私はユージンのレベル上げの理由を突っ込まれても答えられるように万全の準備をしておかないと。




・・・・・


「魔脈が断たれた音、聞こえたみたいだよ、ジロちゃん。」

「ああ。」

「着々と準備は整ってるみたいだね。・・・ねえ、意地張ってないで会いに行きなよ。」

「・・・・・」

「あの方はジロちゃんに合わせる顔がないって言って会いに来てくれないよ?このままま一生会えなくなってもいいの? 」

「・・・・・」

お読みいただきありがとうございました。



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