第十一話
年内にクッマーン話を終えたいのに、気付けばもうあと2日・・・(汗)
「これは一体何の騒ぎでしょうか?」
「じろ・・ギルドマスター。」
「次郎殿。」
「なぜ貴殿がここに。」
次郎がセザン村に現れた。・・・何でだ。次郎が来るんだったら最初から私たちが来ることなかったじゃない。そしたらこの下種領主の相手だってする必要はなかったのに。
「ギルドマスター、セザン村で採取されたタツカイヨオは自分のものだからギルドには売れないと、このご領主様がおっしゃってます。欲しければ妻を渡せと。そして、異議を唱えた村長を反逆罪と称し殺すそうです。村も焼き払うと。」
ユージンが次郎に報告する。すると次郎は下種領主を睨みつけた。
「色々と言いたいことはありますが。とりあえず、この依頼に関しては、セザン村を治めている領主殿よりクッマーンのことも、タツカイヨオのことも、うちのギルドが任されていますので、あなたが口を出す権利はありませんね。」
「な、なんだと!?そんな許可をした覚えはない!」
「ええ、ですから、『今現在』セザン村を治めている領主殿に任されているんですよ。」
「次郎殿、それは一体どういうことですか?」
村長が次郎に聞くけれど、意味はきっと分かっているんだろう。もうこの下種領主は『領主』ではないってことだ。その経緯が聞きたいということなんだけど、次郎はめんどくさそうな顔をして答えた。
「元々領地を上手くまわしてるのはこいつじゃない。こいつの異母弟なんだよ。それをこいつが自分の手柄にしてたんだ。」
じゃあ、村長さんが言っていた『良いご領主』はこの男の異母弟なのね。とっても納得がいく。
「異母弟をタダでこき使って、称賛だけは自分のものにしてやりたい放題。公金に手を出したり、身分の低い者を虐げたり。それだけやっておきながら、品行方正ですってツラを堂々としやがって、ほとんどの奴がこいつの正体を知らねえときた。やっと処分できるだけの証拠が集まって、こいつは身分の剥奪ととりあえず投獄。領主は異母弟に代わると正式に領主会が発表した。」
うわ。最悪だね、この男。野放しにされてたとか、証拠が集まってよかった、おめでとう。なるほど、じゃあ、次郎はその領主会の知らせを告げに来たってことかしら。
「そ、そんなのは嘘だ!私が身分を剥奪などありえない!私は由緒正しき家柄で、お前などとは違うんだ!お前が領主会からの使いのわけがない!領主会の中でも下の身分のお前が」
「うるせーな。俺は別に領主会の決定を伝えに来たわけじゃねーよ。」
あれ、違うの?というか、もう素に戻ってるね、次郎。口調もそうだけど、わめく男の頭をガシッと掴んで持ち上げちゃったよ。そのまま放り出しそうな勢い・・・全っ然構わないんだけどね、やってもらっても。でも、なんか身なりのいい、偉そうなおじさんが馬車で到着しちゃったからなあ。続きはできなそうよ?
「ああ、ちょうどいいや、そのままあの馬車に詰め込んでくれる?ジロちゃん。」
軽っ!アハハと爽やかに笑いながら偉そうな人は次郎に話しかけた。
「罪状はあの馬車の檻の中で聞かせればいいよ。すっごぉくうるさそうだから、ちゃんと檻に消音の魔法かけてきたんだよ、僕、偉くない?」
「仮にも領主会の決定を伝えに来たんだから、もうちょっと真面目な口調で話せよ。」
次郎が開いている手を自分の頭に当てている。珍しい。次郎が扱いに困るような人なんだ、この人。それだけで尊敬しそうです。
「いーじゃん、別に。どんな口調だろうが決定は変わんないんだし。それよかほんとうるさい。ジロちゃん、早く入れてきて。」
頭を掴まれてた男は痛いとか身分がとか私は偉いとかまだギャーギャーとうるさかった。この軽いおじさんの登場にも気づいてないみたいだ。次郎がため息をつきながらも指定された馬車のほうに行くと、おじさんは元領主の護衛たちに声をかけた。
「みんなご苦労様。聞いたかもしれないけど、次の領主は君たちが主君としている人に決まったから、安心してね。あの男が逃げ出さないようにするの、大変だったんじゃない?」
「いいえ。アレは領主会や我々の動きには全く気付いていませんでしたし、上等なエサに食いついてここを動こうとしませんでしたので。」
護衛の人たちがあの男の部下じゃなくて、その異母弟の部下だったのに驚きだよ。しかも護衛じゃなくて、逃げないように見張ってる役目だったんだ。・・・上等なエサって私のことだよね。怒ってもいいのかな?というか、真っ先に怒ってくれそうなユージンが何も言わないんだけど、私が過剰反応しすぎ?そう思って、ユージンを見上げると、ユージンはこの軽い雰囲気のお偉いさんをじっと見ている。
「そっかぁ。あの男の女好きが初めて役に立ったよね。あ、セザン村の村長だよね、この村ももっと生きやすくなるから、期待しちゃっていいと思うよ。」
「あ、あの、貴方様は。」
「ああ、僕?領主会の顧問、みたいな?ミコちゃんって呼んでいいよ。」
「は、はあ。ミコ様。」
「ええ~。もっとフレンドリ~に、ミコちゃんでいいってば~。」
領主会の顧問、みたいな?領主たちより偉いってことよね、この人。話し方とかは全然偉そうじゃないけど。それにしても、いい年したおじさんが『ミコちゃん』はないと思う。まあ、次郎のことを『ジロちゃん』と呼ぶこの人の中ではアリなのか。まあ、村長さんはそう呼べないよね。
「放り込んできたぞ。」
「ああ、ありがとね、ジロちゃん。」
そこへ次郎が戻ってきた。あの男の声が急に聞こえなくなったのは、馬車の中にある檻に入れたからだったか、消音の魔法って素晴らしい。
「とりあえず、みんなは戻ってもらっていいよ。君たちの主君が待っているからね。あの馬車ごと領主館に戻っちゃってくれる?向こうで待ち構えてる人たちがいるから、その人たちに引き渡しちゃってね。僕はまだ用事があるから、先に帰ってて。」
「お前も帰れよ。」
「僕はジロちゃんに送ってもらうから、平気だよ。」
「聞け。」
「息子にはうまく言っておいてね!怒られちゃうから!!」
「帰れ!」
すごいな。総無視だ。怒られちゃうなら帰ればいいのに。ミコちゃんさんがいると、次郎がまともな人に見えてくるから不思議。次郎を無視したまま、ミコちゃんさんはユージンに話しかける。ユージン、その人一応偉い人みたいだから、太郎さんに教えてもらった対権力者用の仮面つけて!
「ユージン、久しぶり。」
「・・・久しぶり。」
え?知り合いなの?ミコちゃんさんは私を見た。
「ユージン、良かったね。お嫁さんが来てくれて。ほんと、良かった。・・・ごめん、僕、年のせいか涙もろくなっちゃって。」
嫁じゃない!秘書だ!と突っ込みたかったんだけど、ミコちゃんさんの目には本当に涙が光っていた。
「ありがと、ミコト。俺、ミコト変わってるから好き。」
「変わってるって失礼だよぉ!ユージン。」
ユージンがミコちゃんさんに優しく笑った。こんなユージンの顔を見たことがなくて、私は驚いた。そしてユージンのことを全部知っているわけじゃないんだとショックを受けている自分がいる事にも驚いた。
次回は次郎がセザン村に来た理由となります。
お読みいただきありがとうございました。




