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第十話

セザン村の話、この回で終わらなかった。


楽しんでいただけたら幸いです。

クッマーンの討伐を終え、セザン村に戻って報告をするため、村長との面会を求めた。そしてやっぱり呼んでもいないのについてくる領主。


「仕事が終わったと聞いたのだが、今晩は泊まっていくのだろう?領主として労わなければ。」

「いえ、依頼が終われば、すぐに戻ることになっておりますので。」

「おや、じゃあ、もう帰ってしまうのか?それなら、私が送っていこうではないか。」

「いえ。ご厚意はありがたいのですが、こちらに来る時にアシカサンを使いまして、往復で契約しておりますので帰りもアシカサンで帰ります。」

「アシカサンか。そんなに急いで帰るのか?」

「はい。ギルドに用事がございますので。」

「では、君だけアシカサンで帰るといい。奥方は私が送っていこう。せっかくの旅行なのだから、もっと観光もしなくては。私が奥方をご案内しよう。」


意味がわからない。一応設定上は新婚さんだ。新婚旅行だ。その妻が何で夫以外の男と馬車に乗って観光しなきゃいけないんだ。この領主の頭の中はどうなってるんだ。


「そうだ、私はアシカサンに乗ったことはなくてね。ギルドマスターにも挨拶をしなければいけないな、私が奥方とアシカサンに乗っていこうか。」

「いいえ、アシカサンは盗難や盗賊を避けるために、乗る人物の登録がされているのです、私と妻で登録してありますので、帰りも夫婦そろって乗らないと駄目なのです。」

「ふん。つまらん登録がされているな。」


領主は不機嫌になった。やっと私と行動を共にできる理由が見つけられなくなったらしい。これ以上この領主の相手をしているのは頭が痛くなりそうだったので、ユージンをつつく。ユージンは少し頷き、領主を無視して、村長の方に話しかける。


「ご依頼のタツカイヨオは全部で5つ見つかりました。それと、随分クッマーンが下の方まで降りてきたようです。タツカイヨオを見つけながら片づけましたが、かなりの数でした。もしかすると、何らかの原因でクッマーンが大量発生して、この冬の捕れる獲物が少なかったのかもしれませんね。」


というシナリオなので、そうユージンに言ってもらう。村長とは事前に打ち合わせ済みだ。


「そうですか、ありがとうございます。」

「タツカイヨオはどうなさいますか?このままここでお渡しすることもできますし、ギルドで換金してこちらに届けることもできますが。」

「では、換金をお願いしたい」

「ほ~これがタツカイヨオか。」


ユージンと村長が話をしていると、領主が話に割り込んでくる。邪魔だ。本当は秘書の私が村長と話すのだけれど、領主がいるだろうからとユージンに話すことを教えておいて正解だった。


「何もギルドで換金せずとも私が買い取ろうではないか。」

「いえ、これはうちのギルドを通したご依頼になりますので、換金するのであれば、ギルドでということになります。」

「ギルドよりも高く買い取ってやろうと言っているのだ。」

「そもそもこの依頼は成功すると、タツカイヨオがギルドへ渡る確率が高いので、依頼として許可されたのです。本来であればタツカイヨオの採取依頼はもっと値が張ります。成功するという確実な保証ができないことと、タツカイヨオ自体を村で使用するのではなく、お金に変えるのであれば、ギルドを通すこと、それが条件になっております。」


やっぱりこの領主が『いいご領主様』とは思えない。何かの間違いなんじゃなかろうか。だって、タツカイヨオをギルドよりも高くって言っているのに、いくら値段の変動があるとはいえ、図鑑に載っていた最低金額の10分の1以下を提示してくるなんてありえない。


相場を知っているのか知らないのかはわからないけれど、確実に村長は騙されるだろう。しかし、そのタツカイヨオを採取するために来ている冒険者を騙せると思っているのだとしたら、冒険者を馬鹿にしているのか、よっぽど本人が馬鹿なのか。あるいは両方か。


「このタツカイヨオは私の領地で採取されたもの、それを私の許可なく隣の領主が買っていくなど認められるわけがない!」

「ご、ご領主様。」

「村長は自分のところの領主よりも、隣の領主と手を組みたいというのか。私に逆らう意思を持っているということだな。」

「そ、そんなことはございません。」


『ギルド』=『隣の領主(次郎)』になっている。確かに次郎はギルドマスターだけれど、切り離して考えるべきんだなけどな。よっぽど次郎と仲が悪いのか。いや、恐らく次郎は相手にしてないんだろうな、こんなバカ領主。


「ご領主様、冒険者ギルドは領地を超えて存在しております。タツカイヨオをギルドで換金してもギルドマスター個人が潤うわけではございません。タツカイヨオを必要としている人の手に渡りやすくなるだけです。」


一応ユージンが村長の手助けに入ってみた。ギルドというより次郎を目の敵にしているのがわかったからだろう。すると、領主は少し考え、ニヤリと笑った。


「そうだな、どうしてもギルドで買い取りたいのならば、奥方を差し出せば考えてやらなくもない。」


バカ領主が下種なことを言い始めた。いや、最初から下種ではあったな。というか、もういい加減こいつを蹴飛ばしたくなってきた。いや、その前に一応ユージンを止めておこう。おそらく私よりももっと過激な発想をしているだろう。ユージンの振り上げそうだった腕をぎゅっと抑えた時、村長さんが真っ青な顔で言った。


「恐れながら、ご領主様、この村はこの方々に救われたのです。ご領主様にはもちろん大変お世話になっておりますが、この窮地を救ってくださったのはギルドから派遣されたお二方です。その大恩人に対してご領主様のお言葉は余りにも」

「この村は私の領地にはふさわしくないようだ。」

「え?」


領主は自分の連れてきた人たちの方を向くと、命じた。


「この男は私に逆らった。死罪。同時にこの村も反逆者の巣窟と判断する。火を放て!」


領主が声を荒げた時、第三者が話しかけてきた。


「これは一体何の騒ぎでしょうか?」


それは私が聞きたい。なぜここにいる。

お読みいただきありがとうございました。

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