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今日も魔王城は平和です。  作者: 斑猫
はじめまして、
9/42

8 魔王

……何処だ、ここ。


メインが住んでいた森は、異様に広い。

『報酬代りに押し付けられた』とか言っていたが、気に入っていたのだと思う。

森は整備され、普段は街の住人達もよく訪れているらしい。

何故か、森からも街からも離れたところに着いたが、おかげで、すんなり来ることができた。

それに、色々話も聞けた。

聞いた、というより、捲くし立てられたようなもんだが。


「水飲みてぇ……」

木に寄りかかり、街で会った婆さんに、押し付けられた地図を広げて眺める。

地図の通りに進んでいるはずだが、一向に辿り着かない。

飛んで行ければ楽だが、明るい内は誰かに見つかる可能性もある。

街を出たというのに、羽や角は仕舞いっぱなしだ。

「ったく、めんどくせぇ」

リディアに城を追い出され、すぐに人間界に来たが、正直早まったと思う。

あいつ、俺のこと何だと思っていやがる。ぜってぇ、王だと思ってねえな。

出際にはまた怒鳴っていた。そういや、叩かれたな。

すっかり忘れていたが、叩かれた所に手をやれば、少し湿った感触。

「?」

手を見れば、乾きかけの血がついている。

あの馬鹿、角で切ったらしい。どんくせぇ。

どうせ城でまた、後悔の嵐に苛まれているだろう。

後悔するなら抑えろ、って言ってんのにあの馬鹿、昔っから懲りやしねぇ。

「髪洗いてぇ」

地図が正しいのなら、川はメインの屋敷の近くだ。

……仕方がない。

ため息と共に、再び歩き出した。



メインの屋敷に着いた時、すでに日が暮れていた。

時間が掛かった理由は、意外にも単純だった。

森のあちこちに、掛けてあった魔術のせいだ。気がつくのに時間がかかった。

よくは見なかったが、大方、魔術関係者が道に迷うように、とかそんな所だろう。

魔力の塊のような、魔王に効かないはずがない。

メインの物ではなかったから、恐らく新しい領主の物だろう。

街の奴ら曰く、新しい領主は魔術嫌いらしい。

魔術に頼って、魔術を追い払うとは、何とも皮肉なもんだ。


「にしても、どういう事だ?」


小屋と屋敷の中間のような小さな建物に、僅かだが灯りが点いている。

今はメインの屋敷に、誰も住んでいないはずだが……。

しかも、屋敷の周りには兵士らしき影もあり、迂闊に近づけない。

後で誰かに調べさせるか。

リディアがまた騒ぐだろうが、知ったことか。

あー、確か、蔵は裏だったな。

屋敷を囲むように生えている木に隠れ、裏へと回る。


音を立てないよう静かに回り込めば、小さな蔵と、入り口に二人の兵士。

思わず舌打ちが出る。

邪魔っくせぇな。メインの奴、何かしてから死んだのか?

とにかく、あの兵士を何とかしねぇと。

仕舞っていた羽と角を出し、空へと飛ぶ。上からなら、気がつかないだろう。

幸い、月も出ていないから、簡単に近づける。

そのまま真上に浮遊しても、気がついた気配はない。


そこから落ちる容量で一直線に、兵士達の前に着地すれば、いい具合に怯えた表情。

「ヒッ!」

「あっ悪魔!?」

「おいおい、大声は困る」


口を塞いでやれば、片方は触った瞬間気絶した。

……お前、兵士だろうが。もう少し粘れよ。

気絶した方を地面に転がせば、もう片方に腕を掴まれる。

「ムー! ンーッ!」

よしよし。兵士ってのは、こう威勢が良くねぇと。

良い気分のまま笑えば、一層睨みつけられた。

大体の奴は、俺が笑えば逃げるのにな。

「ふん。お前はいい兵士だな。生かしてやるよ」

「!?」

「というより、遊びたいが時間がないんだ。悪いな」

「ングッ! グッ……」

空いた手で喉を締め上げれば、多少もがいた後、動かなかくなる。

口も抑えていたからだろう、落ちるのが早かった。

とりあえず約束通り殺していないから、起きても害のないよう、武器は取り上げておく。

「なんか、無駄に時間食った……」


やっと蔵に入れる。

当たり前だが、鍵が掛かっている。が、問題ない。

蔵の鍵を叩き壊し中に入れば、薄暗い中は書籍や薬草、薬品が所狭しと並んでいる。


それらの僅かな隙間に、"それ"はいた。


「おい、生きてるか」

ピクリとも動かない。

遅かった、か……。

近づいて、軽く蹴ってみる。

「おい」

返事はなかったが、確かにズボンの裾を掴んだ。

「ほお……。上出来だな」

ボロ雑巾のような"それ"を脇に抱え上げると、その場に陣を開き、足を踏み入れる。

帰ってからの予定を考えて、ふと気がつく。


あぁ……、そういや仕事溜まってたな。

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