表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も魔王城は平和です。  作者: 斑猫
たまにはこんなことも
27/42

26 補佐官と魔王

やっちゃいけないお酒の飲み方が書いてあるので、気になる方は人読まないでください!!

割れたグラスや、ワインで染まったタオルをそのままに酒盛りは続く。

そして再開するリディアの愚痴大会--ではなく惚気。

「もう本当にね! 可愛いの何のって」

「……」

グラスを手離しても、リディアの惚気は続く。

「笑った顔がさ~すごい可愛いくってさ! 癒されるっていうの?」

「……」

まだ続く。

「保護者なんて嫌だけど、このままでも構わないかな~? ってたまに思っちゃうんだよね~」

「……そうか」

そこまで話して、リディアはテーブルに突っ伏した。そしてまた似た内容を話し出す。

適当に聞き流していたが、流石に聞き飽きてきたと思う。

こいつ、やけに酔うのが早いな。そこまで飲ませていないはずだが。

テーブルに突っ伏したまま、話続ける金髪を眺めていたが、右手に巻かれている包帯が目に入り、酔いの原因に気がつく。

「でさ~」

「リディア」

「な~に?」

な~にじゃねえよ。ガキか。

こちらを上げる顔は、瞼が半分ほど落ちかけている。

「もう限界だろ。いいから寝ろ」

「えー。まだいつもの半分ぐらいだって~」

首だけで周囲を見渡す姿につられ、見回してみるが、確かにいつもより少ない。

しかし、確実に半分は超えている。

「半分は行っているか……」

リディアも気がついたらしい。

「でも大丈夫だって~」

何か眠いけどね~と言いながら起こす上体は、ふらついている。

「いいから寝ろ。お前、薬飲んでる事忘れてんだろ」

「? ああ。ちんつーざいか~。……ねー。そういえばこれ、何であんなに怒ってたの?」

ぷらぷら振られる右手を見て、はて何故だったかと思い出す。


確かこいつに叩かれて、とりあえず帰ったら仕置きしようと思って。その後、ガキを連れ出しに行って……。

ああそうだ。思い出した。


「腕の立ちそうな兵士と、殺りあえなかったんだ」

「えー、八つ当たりって事ー?」

まあ確かに、八つ当たりだろう。

しかし原因はこいつが作ったのだから、自業自得でもいいだろう。

「まあいいけどさー。いつもの事だし?」

「うるせえな。いいから寝ろよ」

「う~……。でも、もう動きたくない」

言うだけ言って、リディアはソファに横に倒れた。

ここまでくると、寝付くまで時間はかからないだろう。

「おい、上衣脱げ。また朝から『シワが』って騒ぐ気か」

「わかってるよー」

愚図りながらも起き上がり、何とか脱いだ上衣をソファの背もたれに掛けた所で、リディアは力尽きたのか再び倒れた。

やっと寝やがった。


今飲んでいるボトルは空けてしまおうかと思い、一人飲み続けていたが、リディアが寝返りを打ち、意識がそちらに向かう。

うつ伏せになったリディアを見て、ついいつ見ても妙な形の服だと思った。


俺の対だという意味の白い衣装は、リディアの意見が取り入れられ、装飾は少ないが代わりに刺繍が多い。

俺は派手すぎるのと動きにくくない限り、衣装課に任せっきりにしている。

まあ、色だとかはどうでもいいとして。形が妙だと思うのだ。


悪魔にはそれぞれ特性がある。

種族名もないような下位の悪魔だろうと、何かしらある。

城内の制服に関しては部署ごとに基本衣装が定まっているが、特性を活かせるよう、それぞれ多少カスタマイズしている。

しかし、上位の悪魔はそうはいかない。

特性を引き出せるように、かつ、衣装課が趣向を凝らして個別制作する。

城にわざわざ衣装課があるのは、そのためだ。

その中でも、リディアの衣装は妙な形の部類に入ると思う。

上衣さえ着ていれば目立つ箇所はないが、脱いでしまえば別だ。

ぱっと見は人間界の神父服に似ているが、背中が空き過ぎている。首や襟、腰の部分は前面と繋がっているが、襟首から腰にかけては、一切布がない。

これで本人は寒がりなのだから、笑える。

案の定、暫くすると「さむ……」と寝言が聞こえた。

「しょうがねえな」

ボトル片手に立ち上がり、ブーツだけ脱がして抱き抱える。

相変わらず薄っぺらい身体してんな。


「なに……? ここでいいのに」

「うるせえよ」

酒盛りをした日は、毎回どちらかの部屋に泊まっている。

互いのベッドも、男が二人寝ようと余裕がある程広いので、わざわざソファで寝ようとも、寝かせようとも思ったことはない。幸い、二人とも寝相が悪いなんて事もない。

今更だろう。

完全に寝落ちたリディアを抱え、寝室の扉を足で蹴り開ける。

とりあえずリディアをベッドの上に放り投げ、ボトルをベットサイドに置くと、灯りを消しに部屋へと戻った。


灯りだけ消して寝室へ戻れば、リディアはちゃっかりシーツに包まっていた。

どうやら運ばれた後、適当にシーツだけ被って眠ったらしい。

窮屈そうな官服のままだが、気にならないのか、寝顔は穏やかだ。

ベッドサイドの明かりだけ残した部屋で一人、ボトルを呷る。

襟元を緩めてやった後、何と無く頭に手を伸ばし、クシャリと金髪を混ぜるが身動ぎもしない。

寝室まで移動しても、ベッドに放り投げても、リディアが起きることはなかった。

薬と酒の作用で、余程深く寝ているのだろう。

後、あのクソ蛇のせいで、だな。

三日前、ガキの元から来ると聞いていた俺は、まさか具合の悪そうな雰囲気で来るとは思いもしていなかった。

キールもだいぶ怯えさせられたと聞いた。偶然居合わせたとはいえ、酷い目に合わせてしまったと思う。

「……あの蛇。いつかシメる」

こいつに構うなと、何回言えば済むんだ。

ガキの頃に出会って以来、あの蛇はリディアのトラウマだ。

クソ蛇も知ってか知らずか、妙にリディアに絡む。

俺ですら極力会いたくないのだから、キールが居なければ、どうなっていたか。

礼にもならないが、今回は大人しく写真を撮られてやろうと思う。


一人飲み続け、ついにボトルの中身がなくなった頃。

さっきまで聞いていた話、というか惚気を思い出していた。

「メリリアム、か」

メインが生きていた頃も含め、話した事はまだない。

リディアや女共から、報告という名の惚気や自慢を聞くだけだ。

会いに行くべきかと思ってはいたが、俺一人で子供に会いに行くのも気が引け、後回しにしていた。

だが、明日ならリディアも時間が取れた気がした。

昼間は視察だった気もするが、リディアなら飛んで帰ってこれるだろうと考えつつ、自身の明日の予定を考える。

行くかと思った時に動かないと、また機会を逃しそうな気がした。


西の案件は後少しだし、書類を片付ける程度か。……どうしても夜になるか?

どう予定を練り直しても、面会時間外になりそうだった。

急だが、予め爺に言っておけば大丈夫だろう。

「まぶし……」

なら行けるなと思ったところで、隣から小さな声が聞こえた。

見れば、モゾモゾとシーツの中に声の主は潜って行った。

灯りをベッドサイドだけにしていたのが、逆に眩しかったらしい。

「俺も寝るか」


寝支度を簡単に済ませ、残っていた灯りも消す。月明かりが十分入り込むが、眠りを妨げる程ではない。

ベッドに入れば、寒かったのかリディアが寄って来た。

だが、たとえ女だろうが、官服の奴を抱いて寝る趣味はないので引き剥がす。

リディアの場合、冬場以外は一度引き剥がせばもう寄ってくる事はないので、それ以上気にせず俺も眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ