19 補佐官と少女
あれ?
やっぱり聞いちゃいけなかったかな?
リディアに質問したら、動かなくなっちゃった。
おじいちゃんと一緒に部屋に入ってきたのは、ずっと会いたかった人だった。
人……、人でいいのかなー? ま、いっか。
ママの話によく出てた、わたしのおんじんさん。
おじいちゃんに、助けてもらった時のことを聞いて、ますます会いくなってたんだ。
嬉しいかった! やっと会えたんだもん!!
その人は悪魔に見えないし、男の人か女の人かもわからなくて、ついじっと見ちゃったけど、イヤに思わなかったかな?
でも、ママたちの言っていたとおり、きれーな人だなって思った。
ふわふわしたまっ白のお洋服に、きらきらの髪の毛。それに目も、春の森みたいですっごくきれー!
天使様かなっていっしゅん思っちゃった。会ったことないけどね。
それに声もきれーで、しゃべっても、男の人か女の人かわからなかった。
だからつい、聞いちゃったんだけど…………。
「ごめんなさい。しつれいだったよね……」
「い、いいいいいえ、全っ然! ええーと……そうそう! ただ意外だなーとか、久しぶりだなーと。そう思ってただけですから!」
「本当? 怒ってない?」
「ええ! 全然!」
『全然』に力を入れて話すリディアは、きょどうふしんって感じだった。
やっぱり聞いちゃいけなかったんだ。
「ごめんなさい……」
「あぁいえ……、こちらこそすみませんでした。こんな見た目ですが男ですよ。よく間違えられますので、気にしないでください」
そう言って、リディアはまた頭を撫でてくれた。
本当に優しい人。
ママの言ってたとおり。
それから、二人で色んな話をした。
魔界のこと、リディアのこと、魔王様のこと。
おじいちゃんも色々教えてくれたけど、リディアもすごい物知りだと思う。
手のケガは『気にしなくていい』しか、言わなかったけど。
でも、包帯ぐるぐるなのにお仕事してるって、大丈夫なのかな?
ペン持つの大変そう。
そうやって色々話をしていたら、すぐにめんかい終了時間になっちゃった。
「リディア、また来てくれる?」
「ええ。約束します」
また、頭を撫でてくれた。
ママみたいだなって思ったからかな。ママとの約束を思い出した。
……約束、か。
リディアにお願いしても、本当にいいのかな。
めーわく、かけないかな?
おじいちゃんは『大丈夫だ』って、言ってたけど。
不安になって、ぎゅっと手をにぎる。
「メリル、どうかしましたか? 暗い顔をしていますよ」
「……。ううん、何でもないよ」
「ですが……」
見上げた先の、リディアも暗い顔をしてる。
またやっちゃった、心配させちゃダメなのに。
笑わなきゃ。
「本当に大丈夫だよ。ちょっと疲れちゃっただけ」
「……、そうですか。何かあったら、すぐに私かアルニ老に言うのですよ」
「うん!」
ちゃんと笑えたかはわからないけど、リディアはそれ以上何も言わなかった。
ただ、さっきより優しく頭を撫でて、髪をとかしてくれた。
次に来る時、おかしを持ってきてくれる約束をして、リディアは帰った。
「リディア、心配そうな顔してたね。ウソついてごめんなさい、って言いたいな……」
となりにいるぬいぐるみに、話しかける。
ふわふわの体を抱きしめて、一緒にベットに寝転がった。
「ママとの約束も守りたいけど、やっぱりダメだよね。あとでおじいちゃんに話そっか」
黒いボタンの目が、そうしなよ、って言ってるみたいに光った。
「えへへ、ありがと」
もう一度、ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。
「リディア、また来てくれるって、言ってたよね。早く会いたいな」




