16 補佐官と少女
黒や赤など暗色系で統一され、重厚感を漂わせる魔王城内において、医療関係の室内だけは例外となっている。
「精神にも影響する」と意見する医師達の好きにさせ、医務室然り、病室然り、全体的に白を基調とし、余計な物がない……はず。
いや、この間見た時はなかった。
えー、何これー……。
扉の先は別世界、を体験するとは思わなかった。
殺風景なはずの室内が、すっかり模様替えをしていた。
壁が白いのはそのままだが、荷物……いや、ぬいぐるみと本が凄い。
ベットの上と横に置かれたぬいぐるみは、数こそ3つしかないが、大きさのせいで存在感が半端ない……。
大中小と種類があり、中でも――乗り切らないのか――ベット横に置かれた一体が異様に大きい。
ぬいぐるみと言うより、何あれ、着ぐるみ?
子供と並んでいるぬいぐるみが、やたら小さく見えるが、あれが恐らく普通の大きさだろう。
誰が持ってきたんだろう。というか、何処で売っているんだろう……。
人間界のくまのぬいぐるみにも似ているが、小さな角と羽がある。
人気、なのか? 確かに可愛いけど。
元々あった棚には、分厚めの本や絵本がごちゃまぜに数冊重ねられ、ベットの上にも、散らばっている。
その荷物だらけの部屋で、ぬいぐるみに紛れて子供が一人、本を抱えている。
大きな目でこちらを見ている子供は、見るからに幼い。
「ほれ、何をぼさっとしとるんじゃ。メリル、この人がリディア様。リディア様、この子はメリル」
「あ、ああ、すみません。はじめまして。メリル、で良いのかな?」
「はい。はじめまして」
ぺこりとお辞儀をした少女は、不思議な雰囲気を纏っていた。
赤と金の間のような髪色に、吸い込まれるような淡い緑の目が特徴的だ。大人用しかなかったのか、白い入院服はダボついていて、余計に身体が小さく見える。
つい面白い髪色だと思って眺めていると、再びアル二老に肩を叩かれた。
「じゃ、後は若い者同士での」
「え?」
「ちょっ、アルニ老!?」
「ほっほっほ。リディア様、メリルを怖がらせんで下さいよ〜」
言うだけ言って、動けなくなった私達を尻目に、アルニ老はさっさと病室から出て行った。
おいおいおいおい、説明は!? 後って、まさか話し終わった後!?
閉まった扉の方を向き、二人揃って呆気に取られていたが、現実に戻るのはメリルの方が早かった。
「あのー、リディア、様?」
いつの間にか本を閉じ、大きな目でこちらを見上げている。
「あ! すみませんでした。えっと、リディアで構いませんよ」
「え、でも。あ、それより……、ありがとうございました!」
「? 何のことですか?」
聞きながら、近くにあった椅子を出して座る。
初めて会うはずだが?
緊張しているのか、落ち着かなそうに身じろぎしながら、メリルはたどたどしく話始めた。
「おじいちゃん、えっと……アルニエールさんに聞きました。リディア、さんが助けてくれたって」
「呼び捨てで構いませんよ。それに敬語も止めていい」
「え、でも」
「構いませんよ。話しやすいように、話してくれて。それとも、私とは仲良くしてくれないのですか?」
部屋の荷物だけでも、この子が好かれている事がわかる。
恐らく、アルニ老以外もこの部屋を訪れているのだろう。
卑怯かと思うが、ちょっと悲しげに言ってみれば、メリルは慌てたように首を左右に大きく振った。
「そんなことない! わ、わたしとお友達になってくれる!?」
「ええ、君が望んでくれるなら」
瞬間、目がキラキラと輝き出し、メリルの顔に、ぱあっと喜色が広がった。
あ、可愛い。




