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今日も魔王城は平和です。  作者: 斑猫
はじめまして、
14/42

13 補佐官と医者

サイドテーブルの水差しからグラスに注ぎ、薬と共に一気に飲み込む。

「まったく。仕事中毒も良い加減にしなされ」

「今は休めないんですよ」

「ああ。確かに書類が、稀に見る高さになっておったの」

知っているんじゃないか。

ついジト目で見てしまうが、気にもされずに笑われる。

「魔王様にも困ったもんじゃの。ま、言っておいたんで、マシになるじゃろうて」

「なり、ますかね……。結構な量が溜まっているんですよ」

「ふむん。書類仕事なら、昨夜から取り掛かっておるでの。リディア様”で”憂さ晴らししたんで、すっきりした顔しとったでの」


あの野郎……!

随分手荒だと思ったら、憂さ晴らし込みか!

人を何だと思っているんだ!


手に持っていたグラスにヒビが入り、取り上げられる。

「危ないのう。指まで怪我をしてしまうぞ。ほれ、深呼吸深呼吸」

言われた通り、深呼吸をする。

「よしよし。骨まで達しとるから、気を付けんと」

「骨!? そんなに酷いのですか!?」

「うむ。メイドの子が飛び込んだから、それで済んでの。彼女が居らんかったら、骨も砕けとったかもしれんの」

ああ、彼女か。

今度お礼をしに行かないとな。

「なんでも、聞き耳立てつつ入ろうか迷っとったら、急に悲鳴が聞こえて驚いた、と言っておったの」

……お礼はいらないな。

きっと抉られていた時には、扉の前にいたんだろう。

その時に入って来て欲しかった。

ついでに言えば、悲鳴……忘れてくれないかな……。

思わず出たため息に、蹄でグラスのヒビを突ついていたアルニ老が笑う。

「リディア様相手じゃと、手加減せんからの。やりすぎじゃと、きつーく言っておいたでの」

「……ありがとうございます」

それで聞いてくれれば、苦労はしないのだけど。

まあ、しばらくはマシになる、か?

「じゃが、王の命令は聞かんといかんのでの。縫っておらんよ」

「……」

やっぱり、伝えていやがったのか。


「ああ、そうそう。あの子も無事じゃよ」

えーと、あの子あの子……、誰のことだ?


「何じゃ、聞いておらんのか? 昨夜、魔王様の部屋に人の子がおったんじゃよ」

「あー! いた! いましたね。すっかり忘れてた!」

情けなさにベットに崩れる。

本気で忘れてた。

「忘れるなんて酷いのう。まだまだ幼い人の子じゃったよ。まったく……、主らの子じゃろうに」

アルニ老を気にせずうつ伏せになり、柔らかなクッションに顔を埋める。

そうだ、何で忘れていたんだろう。

ソファの上にいたじゃないか。

昨日一日、頭を抱える羽目になった原因で、怪我が悪化した原因なのに。


………………ん?


クッションは抱えたまま、顔を上げる。

振り返れば、アルニ老は相変わらず人のいい笑顔のまま。

「アルニ老、今何て?」

「『酷いのう』、って言ったの」

「いえ、その後」

「『人の子じゃったよ』」

「……遊んでいるでしょ」

「ほっほっほ。すまんすまん、ついの」

「いいですよ。で、もう一度」

「『主らの子』、と言うたの」


あ、聞き間違いじゃなかった。

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