97話 記憶
ギルドの一室。
俺たちは、保護した少女――ルナと向き合っていた。
昨日まで何も知らなかった少女。
けれど、黒き核と深く繋がり、そして伝説の三人とも関係している。
「少しだけ、思い出したことがあります」
ルナが静かに口を開く。
「昔のこと……」
「無理しなくていいよ」
俺がそう言うと、ルナは小さく首を振った。
「大丈夫です」
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「昔、三人の人が私を守ってくれました」
「三人……」
俺は思わず聞き返す。
「どんな人だった?」
ルナは目を閉じる。
「一人は、金色の髪をした男性」
俺の頭に、あの姿が浮かぶ。
「剣を持っていました」
「アシュレイン……」
「はい」
ルナが頷く。
「剣聖アシュレイン」
次に、青い髪の女性。
「水色の髪で、たくさんの魔法を使っていました」
「リリー?」
「はい」
ルナが微笑む。
「大賢者リリー」
そして最後に――
「オレンジ色の髪をした女性」
弓を持っていた。
「とても遠くから、私を守ってくれました」
「リゼッタ……」
「弓王リゼッタ」
ルナは三人の名前を、ゆっくり口にした。
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「その三人は、何をしていたの?」
レティシアが尋ねる。
「私を逃がそうとしていました」
「誰から?」
ルナの表情が曇る。
「黒い魔力を持った人たちからです」
部屋の空気が重くなる。
「あの男と同じ?」
エリスが聞く。
「……たぶん」
ルナは頷いた。
「でも、もっとたくさんいました」
俺は息を呑む。
あの男は一人ではない。
黒き核を利用している者たちは、他にもいる。
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「その後、どうなった?」
俺が尋ねる。
「分かりません」
ルナは頭を押さえる。
「突然、すごく大きな光があって……」
その瞬間。
ルナの周囲に魔力が集まった。
「ルナ!」
「大丈夫です!」
しかし、彼女の目の前に淡い映像が浮かび上がる。
森。
燃える建物。
そして三人。
アシュレインが剣を振るっている。
リリーが巨大な魔法陣を展開している。
リゼッタが遠くから矢を放っている。
三人は、何か巨大な存在と戦っていた。
「これ……」
レティシアが呟く。
その映像の中央に、幼いルナがいた。
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「逃げろ!」
映像の中。
アシュレインが叫ぶ。
『ルナ! 走れ!』
リリーが魔法を放つ。
『この子は私が守る!』
リゼッタが弓を引く。
『後ろは任せて!』
そして――
三人が同時に何かを封じ込める。
黒い巨大な影。
その中心には、巨大な黒き核があった。
「これが……」
俺は映像を見つめる。
グレートオーガの胸にあったもの。
森にあったもの。
砦にあったもの。
すべての始まりは――
この黒い影なのか?
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「キラ」
突然、ルナが俺を見る。
「あなたも、あの人たちと同じです」
「え?」
「黒き核に触れても、飲み込まれなかった」
俺は自分の手を見る。
確かに、俺が黒き核に触れたとき――
不思議な感覚があった。
「アシュレインたちも、同じことができた?」
「分かりません」
ルナは首を振る。
「でも……」
少しだけ笑う。
「アシュレインは言っていました」
「何を?」
ルナは記憶を辿る。
「いつか、俺たちの代わりに戦う者が現れる」
胸がざわついた。
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レティシアが剣を握る。
「じゃあ、私たちがその人たちの代わりになるの?」
「まだ早い」
俺は答える。
グレートオーガには歯が立たなかった。
黒き器にも苦戦した。
俺たちはまだDランク。
伝説の三人には、到底届かない。
「でも……」
俺はルナを見る。
「いつかは追いつきたい」
レティシアが笑う。
「うん」
エリスも頷く。
「私もです」
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その日の夕方。
ギルドから正式な依頼が届いた。
西の森と砦で確認された黒き核について、さらに調査することになった。
ただし――
「ルナさんは、王都へ移送することになりました」
受付嬢が告げる。
「王都?」
「専門の魔導士たちに保護してもらうそうです」
ルナが不安そうな顔をする。
「……キラ」
「どうした?」
「私も……一緒に行っていい?」
俺たちは顔を見合わせた。
このまま彼女を一人にするわけにはいかない。
「もちろん」
俺は頷いた。
「王都まで一緒に行こう」
レティシアが笑う。
「また旅だね」
「はい」
エリスも嬉しそうに頷く。
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しかし、その夜。
街の外れでは――
一人の男が暗闇の中で通信魔法を使っていた。
「少女が見つかった」
返事が返ってくる。
『……そうか』
「そして、あの少年もいる」
『キラか』
「はい」
男は笑う。
「どうしますか?」
しばらく沈黙。
そして――
『まだ手を出すな』
「なぜ?」
『今はまだ、育てさせろ』
男の口元が歪む。
『強くなったところで――』
黒い魔力が揺らめく。
『すべて奪えばいい』
第97話 終




