96話 追跡者
森の奥から、あの男が現れた。
黒い紋章が腕に浮かんでいる。
「……あの男」
レティシアが剣を握る。
エリスもすぐに弓を構えた。
俺は少女の前に立つ。
「もう逃がさない」
男は笑った。
「逃がす?」
そして少女を見る。
「逃げる必要などない。彼女は私たちに必要な存在だからな」
「私たち……?」
俺が聞き返す。
男は答えない。
「その少女を渡せ」
「断る」
即答した。
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男の紋章が光る。
「ならば、力ずくで連れていく」
――ドンッ!
黒い衝撃波が飛んでくる。
「《ウィンドシールド》!」
風の壁を展開する。
――バァン!
衝撃で身体が後ろへ押される。
「キラ!」
「大丈夫!」
レティシアが男へ斬り込む。
「はぁっ!」
――キンッ!
男は短剣で受け止める。
「前より動きが良くなったな」
「あなたに褒められても嬉しくない!」
レティシアが剣を弾き、もう一度斬り込む。
エリスの矢も飛ぶ。
――シュッ!
男は身体をひねって避ける。
「三人の連携も良くなっている」
「だったら――!」
俺は魔力を集める。
「《フレイムスパイラル》!」
炎の渦が男へ迫る。
男は後退する。
「……その魔法か」
黒い魔力と炎がぶつかる。
――ゴォォォッ!
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「うっ……!」
少女が胸を押さえる。
「どうした!?」
「核が……」
黒き核が激しく脈動している。
――ドクン!
――ドクン!
「私がここにいると、あの人の力が強くなる……」
俺は気づいた。
男が少女へ近づこうとするたび、黒き核の魔力が増している。
「じゃあ、離れればいいんだ!」
「でも……」
少女が首を振る。
「私が核から離れると、もっと危険になる」
「どういうこと?」
「私とこの核は……繋がっているから」
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俺は迷った。
少女を連れて逃げる。
でも、それでは黒き核を放置することになる。
核を破壊する。
それもできない。
あの石板には、はっきりと書かれていた。
黒き核を破壊してはならない。
「キラ!」
レティシアの声。
男が迫っている。
「考えるのは後!」
「分かった!」
俺は杖を構え直す。
「まず、この人を守る!」
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レティシアが男の前に立つ。
「ここは通さない!」
剣が何度もぶつかる。
エリスは少し離れた場所から狙う。
「キラ、右!」
――シュッ!
矢が男の足元へ突き刺さる。
男が一瞬動きを止める。
「今!」
俺は魔力を込める。
「《ウィンドバレット》!」
――ドンッ!
男が後ろへ吹き飛ぶ。
「やった!」
しかし――
男はゆっくり立ち上がった。
「なるほど」
口元に笑みを浮かべる。
「お前たちは、本当に面白い」
そして黒い紋章を押さえた。
「だが、今日はここまでだ」
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「待て!」
俺が叫ぶ。
男の足元に黒い魔法陣が浮かぶ。
「次に会うときは――」
男がルナを見る。
「その器を連れていく」
「させない!」
レティシアが駆ける。
だが、あと一歩届かない。
――シュン。
男の姿が消えた。
「また逃げられた……」
レティシアが悔しそうに剣を下ろす。
エリスも弓を収める。
「でも、ルナは守れました」
「うん」
俺はルナを見る。
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「ルナ」
俺は尋ねる。
「さっき見えた映像について、何か覚えてる?」
「少しだけ」
ルナは目を閉じる。
「三人の人がいた」
「アシュレインたち?」
「たぶん……」
ルナは胸元に手を当てる。
「その三人は、昔も私を助けようとしていた」
「昔?」
「うん」
俺たちは驚く。
「じゃあ、アシュレインたちはルナのことを知ってる?」
「分からない」
ルナは首を振る。
「でも……」
しばらく考えたあと、呟いた。
「リリーという名前を聞いたとき、すごく懐かしい気持ちがした」
俺は息を呑む。
大賢者リリー。
あの人が、ルナについて何か知っているのかもしれない。
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ルナを連れて街へ戻る。
ギルドに報告すると、大騒ぎになった。
「黒き核?」
「黒い紋章の男?」
「少女が核と繋がっている?」
すぐに上層部へ報告が送られることになった。
俺たちはその間、ギルドの一室で休むことになった。
「今日は色々ありすぎたね」
レティシアが椅子に座る。
「うん」
エリスも疲れた様子だ。
俺は窓の外を見る。
ルナは静かに眠っている。
まだ何も分からない。
でも、一つだけ確かなことがある。
この少女は――
黒き核と、そして伝説の三人と深く関係している。
そして俺たちは、知らないうちにその秘密の中心へ近づいていた。
第96話 終




