94話 逃げて
西の森へ向かう道。
俺たちはいつもより慎重に進んでいた。
今回の依頼は、魔物の異常発生。
ただ数が増えただけならいい。
でも――
ここ最近、黒き核に関わる事件が続いている。
「キラ」
レティシアが前方を指差した。
「魔物の足跡」
地面には、いくつもの足跡が残っている。
しかも、同じ方向へ向かっている。
「森の奥へ集まってる……」
エリスが呟く。
俺は魔力を探る。
「普通の魔物だけじゃない」
「何かいる?」
「……強い魔力が一つ」
レティシアが剣に手をかける。
「行ってみよう」
---
森の奥へ進むにつれて、魔物の数が増えていく。
ゴブリン。
ウルフ。
オーク。
普段なら敵対するはずの魔物たちが――
なぜか同じ方向へ進んでいる。
「おかしいです」
エリスが言う。
「魔物同士が争っていません」
「何かに操られてる?」
レティシアが尋ねる。
「可能性はある」
俺は魔力の流れを追う。
森の奥から、微かな黒い魔力が漂っている。
「やっぱり……」
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魔物との戦闘
突然、オークがこちらへ振り向いた。
「来る!」
レティシアが前へ出る。
「はっ!」
――ザンッ!
オークの腕を斬りつける。
エリスの矢が続く。
――シュッ!
俺も魔法を放つ。
「《ウィンドバレット》!」
――ドンッ!
三人の攻撃で、オークが倒れる。
「次!」
今度はウルフの群れ。
「多い!」
俺は周囲を見る。
十体以上。
「レティシア、右をお願い!」
「分かった!」
エリスが木の上へ移動する。
俺は魔法で群れの動きを止める。
「《ウィンドカッター》!」
風の刃が地面を走る。
ウルフたちが怯んだ。
「今!」
レティシアが一気に踏み込む。
エリスの矢も次々と飛んでいく。
数分後。
群れはすべて倒れていた。
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「……弱い」
レティシアが呟く。
「え?」
「いや、魔物として弱いって意味じゃない」
レティシアは倒れたウルフを見る。
「動きがおかしかった」
確かに。
普通なら、もっとバラバラに襲ってくる。
なのに今回は、まるで誰かに命令されているようだった。
俺は倒れたオークへ近づく。
首元に――
黒い線が浮かんでいる。
「これ……」
エリスが息を呑む。
「黒い紋様です」
昨日の男の腕にあったものと似ている。
「やっぱり、関係してる」
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さらに進む。
すると、木々の間から開けた場所が見えてきた。
中央に大きな岩。
その岩には――
黒い結晶が埋め込まれていた。
「また……」
俺は息を呑む。
しかし、今まで見た黒き核とは違う。
小さい。
そして周囲には無数の魔物が集まっている。
まるで黒き核を守っているようだ。
「壊す?」
レティシアが剣を抜く。
「待って」
俺は首を振った。
昨日の石板。
『黒き核を破壊してはならない』
あの言葉が頭から離れない。
「むやみに触らない方がいい」
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そのとき。
黒き核が光った。
――ドクン。
魔物たちが一斉にこちらを向く。
「……まずい」
次の瞬間。
魔物の身体に黒い紋様が広がった。
「来る!」
三人が構える。
ゴブリンも。
オークも。
ウルフも。
全ての魔物が一斉に襲いかかってくる。
「数が多すぎる!」
レティシアが叫ぶ。
「俺が道を作る!」
杖を構える。
炎を集める。
だが――
黒き核から、さらに魔力が流れ込んだ。
魔物たちの力が一気に増していく。
「そんな……!」
エリスが驚く。
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「下がって!」
俺は魔力を集中させる。
炎が渦を巻く。
「《フレイムスパイラル》!」
――ゴォォォォッ!!
巨大な炎の渦が魔物の群れを飲み込む。
炎の道が開く。
「今!」
三人で一気に駆け抜ける。
「黒き核を調べる!」
「分かった!」
レティシアが魔物を抑える。
エリスが周囲を警戒する。
俺は黒き核へ近づく。
そして――
核の奥に、人影が見えた。
「……誰だ?」
黒い結晶の向こう。
そこに立っていたのは――
昨日の男ではない。
見知らぬ少女だった。
少女は俺を見ると、静かに口を開いた。
「……あなたが、キラ?」
俺は固まった。
「どうして俺の名前を……?」
少女は答えない。
ただ悲しそうな顔で、黒き核に手を触れた。
「お願い……」
小さな声が響く。
「この森から、逃げて」
――ドクン。
黒き核が大きく脈動した。
第94話 終




