93話 残されたもの
翌朝。
昨日の戦いで崩壊した砦を、冒険者ギルドの調査隊が調べていた。
俺たちもその中にいた。
「地下に何か残っている可能性があります」
調査員が言う。
「ただし、危険なので深入りはしないでください」
「分かりました」
俺たちは瓦礫の周辺を調べ始めた。
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黒い結晶の欠片
しばらくして、エリスが何かを見つけた。
「キラ、これ……」
地面に落ちていたのは、小さな黒い欠片。
ほんの数センチほどしかない。
しかし――
近づいただけで、嫌な魔力を感じる。
「触らない方がいい」
俺は慎重に拾い上げる。
布で包んでも、微かな魔力が伝わってくる。
「昨日の黒い結晶の一部?」
レティシアが聞く。
「たぶん」
そのとき。
欠片が――
ドクン。
「……!」
俺の手の中で脈動した。
慌てて地面へ置く。
「今、動いたよね?」
「はい」
エリスも頷く。
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俺たちはすぐに調査員へ渡した。
だが、その男は欠片を見た瞬間、顔を曇らせた。
「これはギルド本部へ送ります」
「そんなに危険なものですか?」
「分かりません」
男は首を振る。
「だからこそ、専門家に調べてもらう必要があります」
厳重に箱へ入れられる。
これで一件落着――
俺はそう思っていた。
しかし。
「キラ」
レティシアが小声で呼ぶ。
「あそこ」
崩れた地下への入口。
瓦礫の隙間に――
黒い紋章が描かれていた。
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近づいて見る。
円形の紋様。
中心に黒い結晶。
その周囲を、三本の線が囲んでいる。
「昨日の男の腕にあったものと似てる」
俺は呟く。
「でも、少し違います」
エリスが指差す。
よく見ると、古代文字が刻まれていた。
「これは……」
俺には読めない。
だが、魔力を流すと文字が淡く光った。
――カチッ。
「何か仕掛けがある!」
レティシアが剣を構える。
次の瞬間。
紋章の中央に、小さな魔法陣が浮かび上がった。
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魔法陣から映像が現れた。
古い時代のものらしい。
一人の魔法使いが映っている。
『この記録を見ている者へ』
三人は息を呑む。
『黒き核を破壊してはならない』
「……え?」
レティシアが驚く。
映像は続く。
『黒き核は、封印そのものではない』
俺は耳を疑った。
『それは、封印された存在へ力を流し続けるための――』
そこで映像が途切れた。
「待って!」
俺が叫ぶ。
しかし、もう何も映らない。
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「黒き核を壊しちゃいけない?」
レティシアが考え込む。
「グレートオーガの胸にあったものも……?」
「分からない」
俺は首を振る。
今まで俺たちは、
黒き核が魔物を強くするものだと思っていた。
でも、それだけではないらしい。
「封印された存在へ、力を流してる……」
エリスが呟く。
「それなら、昨日の男が黒き核を集めている理由も……」
俺たちは黙り込んだ。
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調査を終え、街へ戻る。
ギルドでは、昨日の戦いについて正式な報告がまとめられていた。
「皆さんの働きが評価されています」
受付嬢が言う。
「避難誘導、それからグレートオーガへの援護。非常に助かったそうです」
「俺たちは何もできませんでした」
俺が答える。
「そんなことありません」
受付嬢は笑った。
「今の皆さんにできることを、きちんとやったんです」
その言葉に、少しだけ救われた。
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帰ろうとしたとき。
受付嬢が一枚の依頼書を差し出した。
「実は、皆さんにお願いしたい依頼があります」
「今度は何ですか?」
「街の西側にある森で、魔物の異常発生が確認されています」
俺は依頼書を見る。
危険度はDランク。
今の俺たちでも受けられる。
「黒き核と関係している可能性は?」
「まだ不明です」
俺はレティシアとエリスを見る。
「どうする?」
「行こう」
レティシアが即答する。
「私も」
エリスも頷いた。
「決まりだね」
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ギルドを出る。
俺は空を見上げた。
アシュレイン。
リリー。
ロゼッタ。
いつか、あの三人のように強くなりたい。
そのためには、今の自分たちの力を磨くしかない。
まだ大きな力は必要ない。
まずは一つずつ。
できることを増やしていく。
そして――
いつか、もう一度グレートオーガのような強敵と戦ったとき。
今度は、ただ逃げるだけでは終わらせない。
俺は杖を握った。
「行こう」
三人は西の森へ向かって歩き始めた。
その背後。
誰もいないギルドの路地裏で――
一人の男が、その姿を見つめていた。
黒い紋章。
あの男だった。
「……順調だ」
男は小さく呟く。
「まだ気づいていない」
そして、懐から一枚の黒い石板を取り出した。
「本当の目的には――」
黒い石板が、微かに脈動する。
「まだ時間がある」
第93話 終




