↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』30000pv突破  作者: きらっち
少年期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
86/271

85話 想像を超える恐怖





 北西の空に、黒い雲が広がっていた。


 雨が降っているわけではない。


 黒い魔力が、空気そのものを濁らせている。


「昨日より濃くなってる……」


 俺は街の外を見つめる。


 エリスも魔力を感じ取っていた。


「北西鉱山からです」


 レティシアが剣に手をかける。


「何か起きてる」


 その直後――


 ギルドから緊急の鐘が鳴り響いた。


 ――ガァン! ガァン! ガァン!


「緊急招集です!」


 街中に声が響く。



---




 ギルドへ駆け込むと、冒険者たちが慌ただしく動いていた。


「北西鉱山から、グレートオーガが地上へ出ました!」


 受付嬢が叫ぶ。


 昨日まで地下にいたはずの魔物。


 それが――


 地上へ出てきた。


「現在、Cランク以上の冒険者が討伐に向かっています」


「私たちは?」


 レティシアが尋ねる。


「街道の避難誘導をお願いします」


 俺たちは頷いた。


 今回も討伐隊ではない。


 でも――


 街の人たちを守ることならできる。



---




 北西方面の村から、多くの住民が街へ向かってくる。


 子供。


 老人。


 荷物を抱えた人。


「急いで!」


 レティシアが誘導する。


「慌てなくて大丈夫です!」


 エリスも声をかける。


 俺は後方を警戒する。


 そして――


 地面が揺れた。


 ――ドォォォン。


「……!」


 遠くの山から鳥が一斉に飛び立つ。


「まさか……」


 俺は北西を見る。


 山の向こうから、巨大な魔力が近づいてくる。


「来る」



---




 山道の先。


 木々が次々となぎ倒される。


 ――バキバキバキッ!


 そして、その奥から巨大な腕が現れた。


 続いて身体。


 頭。


 二本の角。


 岩のような筋肉。


「グレートオーガ……」


 レティシアが息を呑む。


 俺たちは言葉を失った。


 大きい。


 あまりにも大きい。


 以前戦った魔物とは、存在そのものが違う。


 胸には――


 巨大な黒い結晶。


 そこから黒い魔力が流れ込んでいる。



---




「全員、街へ!」


 俺は叫んだ。


 グレートオーガはまだこちらを狙っていない。


 だが、近くにいるだけで危険だ。


 住民たちを急いで避難させる。


 そのとき――


 グレートオーガが咆哮した。


「グォォォォォォッ!!」


 ――ズドォン!!


 衝撃波が街道を走る。


「うわっ!」


 俺たちは吹き飛ばされる。


 何人かの避難民も転倒した。


「キラ!」


「大丈夫!」


 俺はすぐに立ち上がる。


 しかし――


 グレートオーガがこちらを見た。


 赤い目。


 視線が交わる。


「……まずい」


 グレートオーガが歩き始めた。


 こちらへ。



---




「来るよ!」


 レティシアが剣を抜く。


「でも、戦う必要はない!」


 俺は叫ぶ。


「逃げながら時間を稼ぐ!」


 グレートオーガの拳が振り下ろされる。


「《ウィンドステップ》!」


 エリスの魔法。


 三人が一斉に横へ飛ぶ。


 ――ドゴォォォン!!


 地面が大きく陥没した。


「……こんなの、まともに受けたら死ぬ」


 レティシアが呟く。


 俺も頷く。


「絶対に正面から受けない」



---




 グレートオーガが再び近づく。


 避難民はまだ逃げ切れていない。


 ここで止めるしかない。


「キラ、どうする?」


 レティシアが聞く。


「俺が足を止める」


「危険すぎる!」


「一瞬だけでいい!」


 俺は杖を構える。


 炎の魔力を集める。


「《フレイムスパイラル》!」


 ――ゴォォォォォッ!!


 巨大な炎の渦がグレートオーガの脚へ巻きつく。


 炎が身体を包む。


 地面まで赤く染まる。


「効いてる!」


 エリスが叫ぶ。


 だが――


 グレートオーガは止まらない。


「……嘘だろ」


 炎の中から、一歩。


 さらに一歩。


 こちらへ歩いてくる。


「フレイムスパイラルを受けても……」


 レティシアの表情が変わる。


「全然、止まってない」



---




 グレートオーガが腕を振る。


「避けて!」


 ――ブンッ!!


 風圧だけで俺たちの身体が飛ばされる。


 地面を転がる。


「キラ!」


「大丈夫……!」


 立ち上がろうとする。


 足が震えている。


 怖い。


 今まで感じたことのない恐怖だった。


 レベルでも。


 魔法でも。


 経験でも。


 目の前の魔物には届かない。



---




「キラ!」


 レティシアが叫ぶ。


「まだ逃げてない人がいる!」


 俺は顔を上げる。


 街道の端。


 老人が一人、倒れている。


 グレートオーガとの距離は近い。


「エリス!」


「はい!」


 エリスが老人へ走る。


 俺はグレートオーガの前へ出る。


「こっちだ!」


 自分でも驚くほど大きな声が出た。


 グレートオーガの目が俺を捉える。


「来い!」


 炎をまとわせる。


 《フレイムスパイラル》をもう一度。


 魔力が急速に減っていく。


「まだ……!」


 炎の渦が再び巻き起こる。


 グレートオーガが拳を振り上げた。


「キラ!」


 レティシアが叫ぶ。


 俺は逃げない。


 ただ時間を稼ぐ。


 ――ドォォォン!!


 拳が地面へ叩きつけられた。


 衝撃で身体が宙へ浮く。


 その瞬間――


「避難完了!」


 エリスの声が響いた。


 俺は笑った。


「……よかった」


 そのまま地面へ落ちる。



---




 その瞬間。


 遠くから大量の魔力が近づいてきた。


「下がれ!」


 冒険者たちの声。


 Cランク冒険者を中心とした討伐隊が到着した。


 さらに、その中には――


 昨日、地下遺跡でグレートオーガと戦っていた冒険者の姿もあった。


「お前たち!」


 彼が叫ぶ。


「よく時間を稼いだ!」


 俺は立ち上がろうとする。


 だが、もう力が残っていない。


「……俺たちじゃ、勝てない」


 レティシアが隣に立つ。


「うん」


 エリスも頷く。


 悔しい。


 でも――


 今はそれでいい。


 俺たちの役目は果たした。



---


 討伐隊がグレートオーガを取り囲む。


 その戦いを見ながら、俺は拳を握った。


 強くなりたい。


 もっと。


 もっと強く。


 いつか――


 あの魔物を前にしても、恐怖で動けなくならないくらいに。


 そのとき、遠くの森の木の上から一人の男が戦場を見つめていた。


 黒いローブ。


 昨日の男だ。


「……なるほど」


 男はキラたちを見る。


「まだDランクか」


 そして、小さく呟いた。


「だが――あの三人は、面白い」


 男はその場を離れる。


 その視線の先には、まだ黒い魔力を放つグレートオーガ。


 そして――


 その胸の黒い結晶には、新たな亀裂が入っていた。


第85話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。