83話 脅威
ギルド内が騒然としていた。
「Aランク相当って……本当なの?」
レティシアが受付嬢に尋ねる。
「はい。先ほど救援要請が入りました」
受付嬢は震える手で書類を整理している。
「現在、Cランク以上の冒険者を中心に緊急討伐隊が編成されています」
「じゃあ、私たちは……」
「避難誘導と街道の警戒をお願いします」
やはり、俺たちは討伐隊には入れない。
悔しい。
でも――
今の自分たちのランクを考えれば当然だった。
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俺たちは北西方面へ続く街道に配置された。
鉱山から逃げてくる人たちを安全に街へ誘導する。
しばらくは何も起きなかった。
「……静かすぎるね」
レティシアが周囲を見る。
「うん」
俺も魔力感知を広げる。
すると――
「来る」
「魔物?」
「たくさん」
森の中から魔物が飛び出してきた。
「グレイウルフ!」
エリスが弓を構える。
十数匹の群れだ。
しかし、様子がおかしい。
「街へ向かってる……」
俺は気づいた。
魔物たちは俺たちを狙っているのではない。
何かから逃げている。
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グレイウルフの群れが街道を横切っていく。
「どういうこと?」
レティシアが困惑する。
その直後。
森の奥から――
ドォォォン!!
巨大な音が響いた。
木々が倒れる。
鳥たちが一斉に飛び立つ。
「……何か来る」
俺は息を呑む。
森の中に巨大な魔力がある。
でも、こっちへ来ているわけじゃない。
「大丈夫」
俺は言う。
「今のところ、街道には来ない」
しかし――
遠くで咆哮が響く。
――グォォォォォッ!!
地面が震えるほどの声。
避難民たちが怯える。
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逃げてきたグレイウルフの一部が、混乱してこちらへ向かってきた。
「迎え撃つ!」
レティシアが剣を抜く。
「エリス、後ろをお願い!」
「はい!」
俺は魔力を集中する。
群れが迫る。
「《フレイムスパイラル》!」
――ゴォォォッ!
炎の渦が前方を塞ぐ。
グレイウルフたちが急停止する。
「今!」
レティシアが飛び込む。
――ザンッ!
エリスの矢が次々と飛ぶ。
――シュッ!
――シュッ!
俺も《ウィンドバレット》で援護する。
短い戦闘の末、群れを撃退した。
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「ありがとうございました!」
村人が頭を下げる。
「気にしないでください」
レティシアが笑う。
俺は森を見る。
まだ、あの巨大な魔力が消えていない。
むしろ――
少しずつこちらへ近づいている。
「キラ?」
エリスが俺の表情を見る。
「……嫌な感じがする」
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しばらくして、伝令が街道へ駆け込んできた。
「緊急連絡!」
全員が振り向く。
「北西鉱山の地下で、Aランク相当のグレートオーガが暴れています!」
やはり、あの魔物だった。
「討伐隊は?」
レティシアが聞く。
「Cランク冒険者が中心になって戦っています!」
「勝てそう?」
伝令は答えなかった。
その沈黙だけで十分だった。
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俺は地図を見る。
北西鉱山。
街。
そして避難民。
「……もし討伐隊が負けたら?」
エリスが答える。
「魔物が街まで来る可能性があります」
「だったら――」
俺は街道の先を見る。
「俺たちはここを守る」
レティシアが頷く。
「うん」
「鉱山には行かないんですか?」
エリスが尋ねる。
「今の俺たちじゃ、Aランク相当の魔物には勝てない」
悔しい。
だけど、無謀と勇気は違う。
「それより、逃げてくる魔物や人を止める」
レティシアが笑った。
「それも立派な仕事だよ」
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一方――
北西鉱山の地下。
グレートオーガが巨大な拳を振り下ろす。
――ドゴォォォン!!
「くっ!」
Cランク冒険者が吹き飛ばされる。
黒いローブの男が封印魔法を展開する。
「《封印鎖》!」
黒い鎖がグレートオーガの腕に絡みつく。
だが――
バキッ!
簡単に引きちぎられる。
「……このままでは止められない」
男が呟く。
グレートオーガの胸にある黒い結晶。
そこから、さらに魔力が流れ込んでいる。
「黒き核が、こいつを強化している……」
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グレートオーガが突然、鉱山の奥を見る。
「……?」
何かを感じ取ったようだった。
ゆっくりと歩き始める。
「待て!」
Cランク冒険者が追う。
しかし、グレートオーガは彼らを無視して――
古代遺跡のさらに奥へ進んでいく。
そこには巨大な石碑があった。
黒き核に関する古代文字。
そして、その中央には――
「選ばれし器」
という文字が刻まれていた。
グレートオーガが石碑へ手を伸ばす。
――ドクン。
黒い結晶が脈動した。
その瞬間。
街道にいた俺も、突然胸の奥に強烈な違和感を感じた。
「……っ!」
「キラ?」
レティシアが心配そうに見る。
俺は胸を押さえる。
「今……何かが……」
遠く北西の方角。
黒い魔力が、一瞬だけ空まで立ち昇った。
そして――
古代遺跡の封印が、一つ解除された。
第83話 終




