82話 Aランク級の魔獣
――ドクン。
古代の扉の向こうから、また音が響いた。
Cランク冒険者は剣を構える。
「その結晶を渡せ」
黒いローブの男は静かに首を振った。
「あなたには渡せない」
「なら、力ずくで奪う」
一歩踏み込む。
その瞬間――
地下遺跡の壁から、黒い魔力が噴き出した。
「っ!」
二人が同時に距離を取る。
床が揺れる。
「この魔力……」
Cランク冒険者の顔が強張る。
「ここに何がいる?」
「だから言ったでしょう」
男が扉を見る。
「まだ眠らせておかなければならないものがいる」
---
一方、街では
俺たちはいつものように訓練をしていた。
「《フレイムスパイラル》!」
――ゴォォッ!
炎の渦が訓練用の標的を包む。
以前よりも炎の流れが安定している。
「いい感じ!」
レティシアが笑う。
「でも、魔力の消費はまだ大きい」
俺は息を整える。
「長期戦では連発できないな」
「じゃあ、使うタイミングが大事ですね」
エリスが言う。
「うん」
強力な魔法だからこそ、使いどころを考える必要がある。
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訓練を終えてギルドへ戻る。
いつもより空気が重い。
「何かあったんですか?」
俺が受付嬢に聞く。
「……北西鉱山から、緊急連絡が入りました」
「調査隊は?」
「現在、救援に向かっています」
俺たちは顔を見合わせる。
どうやら状況が変わったらしい。
「私たちも行きます」
レティシアが言う。
「申し訳ありませんが……」
受付嬢は困った顔をする。
「皆さんはDランクです。今回は参加できません」
「……」
レティシアが黙る。
俺も何も言えない。
悔しい。
でも、今の俺たちはまだそこまでの実力を持っていない。
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しばらくして、別の依頼が入った。
『北西方面から避難してくる住民の護衛』
「これなら……」
俺は依頼書を見る。
「俺たちでもできる」
レティシアが頷く。
「うん!」
エリスも弓を背負う。
「行きましょう」
俺たちはすぐに出発した。
---
街道には、すでに何人もの村人が集まっていた。
「怖い……」
「山から変な音がするんだ」
老人や子供たちもいる。
俺たちは周囲を警戒しながら進む。
「魔物が来るかもしれない」
俺が言う。
「任せて」
レティシアが先頭に立つ。
エリスは後方を警戒する。
俺は中央。
自然と三人の役割が決まっていた。
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森の中から――
「ブオォォォ!」
雄叫び。
「魔物!」
現れたのは五体のオーク。
村人たちが悲鳴を上げる。
「下がって!」
レティシアが前へ出る。
オークが棍棒を振り下ろす。
――ドゴン!
レティシアが受け流す。
「キラ!」
「分かってる!」
俺は炎を集める。
「《フレイムスパイラル》!」
――ゴォォォォッ!!
炎の渦がオーク二体を巻き込む。
動きが鈍った。
「今です!」
エリスの矢が飛ぶ。
――シュッ!
レティシアが一気に距離を詰める。
――ザンッ!
一体。
続けてもう一体。
残ったオークも三人の連携で倒していく。
「終わった!」
村人たちから安堵の声が上がる。
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俺は周囲を見渡した。
以前なら、五体のオークを相手にするだけでもかなり苦戦しただろう。
今は違う。
レティシアが前衛。
エリスが援護。
俺が魔法で戦場を動かす。
三人の戦い方が、少しずつ形になってきている。
だけど――
北西鉱山の地下にいるものは、こんなものではない。
そう思うと、まだまだ足りない。
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地下遺跡では
「来るぞ!」
Cランク冒険者が叫ぶ。
古代の扉に亀裂が走る。
――バキッ。
「まずい……!」
黒いローブの男が結晶を掲げる。
「《封印術式》!」
魔法陣が広がる。
だが――
ドゴォォォン!!
扉が吹き飛んだ。
黒い煙が地下空間を満たす。
その中から巨大な影が姿を現す。
四本の腕。
岩のような身体。
胸には巨大な黒い結晶。
そして、頭には二本の角。
Cランク冒険者が震える。
「……あれは……」
男が呟いた。
「グレートオーガ」
だが、その身体から漏れ出す魔力は通常のグレートオーガとは比較にならない。
「黒き核の力を……取り込んでいる」
男が歯を食いしばる。
グレートオーガが咆哮する。
――グォォォォォォッ!!
地下遺跡全体が揺れた。
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その頃。
避難民を街まで送り届けた俺たちは、ギルドへ戻っていた。
すると――
ギルド中に警報が鳴り響く。
――ガァン! ガァン! ガァン!
「緊急事態です!」
受付嬢が叫ぶ。
「北西鉱山で、Aランク相当の魔物が確認されました!」
ギルド内が騒然となる。
レティシアが俺を見る。
「……Aランク?」
俺は拳を握る。
まだ俺たちはDランク。
到底、手を出せる相手ではない。
だけど――
俺たちの知らないところで、黒き核を巡る戦いは確実に大きくなっていた。
第82話 終




