80話 なぜ知っている
翌朝。
俺たちは冒険者ギルドへ向かっていた。
昨日見かけた黒いローブの男。
どうしても気になっている。
「昨日の人、また来るかな?」
レティシアが言う。
「分からない」
俺は答える。
「でも、北西鉱山の黒い結晶を探していたのは間違いないと思う」
「敵でしょうか?」
エリスが尋ねる。
「まだ分からない」
俺は首を振った。
魔力が怪しかった。
でも、敵だと決めつけるには情報が少なすぎる。
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受付へ行くと、すぐに声をかけられた。
「ちょうどよかったです」
「何かありましたか?」
「昨日、北西鉱山へ向かった調査隊から連絡がありません」
レティシアの表情が変わる。
「連絡がない?」
「予定では昨夜戻ることになっていました」
調査隊はCランク以上の冒険者を中心に編成されている。
俺たちよりずっと強い。
それなのに――
「何かあったんでしょうか」
エリスが不安そうに言う。
「そこで、皆さんには別の仕事をお願いしたいのです」
渡されたのは、村への物資運搬依頼だった。
「調査隊の捜索じゃないんですか?」
「皆さんだけでは危険すぎます」
受付嬢が真剣な顔で答える。
「捜索隊は別に編成します」
俺は依頼書を見る。
確かに、その方がいい。
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俺たちは物資を積んだ馬車と共に出発した。
途中、森の中で魔物に遭遇する。
「前方に四体!」
俺が魔力感知で確認する。
現れたのは、
ホーンラビット。
見た目は小さい。
しかし角を使った突進はかなり速い。
「エリス!」
「はい!」
《ウィンドステップ》が発動する。
ホーンラビットが突進。
――シュッ!
俺たちの横を通り抜ける。
「速い!」
レティシアが振り返る。
俺は魔力を集中する。
「《ウィンドバレット》!」
――ドンッ!
一匹の進路を逸らす。
そこへエリスの矢。
――シュッ!
レティシアが斬り込む。
――ザンッ!
残りのホーンラビットも、三人の連携で倒していく。
「小さいからって油断できないね」
レティシアが息を吐く。
「うん」
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夕方。
村へ到着する。
物資を届けると、村長から妙な話を聞いた。
「昨夜、山の方から大きな光が見えた」
「光?」
「はい。その後、地面が揺れました」
俺はエリスを見る。
「黒い魔力かもしれません」
彼女が小声で言う。
だが、俺たちは捜索を任されていない。
今は余計な行動をしない方がいい。
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そして夜
村で一晩泊まることになった。
夜中。
俺は目を覚ました。
「……ん?」
何かを感じる。
魔力。
かなり遠い。
でも、知っている魔力だった。
「この感じ……」
俺は窓の外を見る。
山の方。
そこに――
一瞬だけ黒い光が見えた。
――パァン。
すぐに消える。
「やっぱり……」
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翌朝
村を出る準備をしていると――
「キラ!」
レティシアが叫ぶ。
村の入口に、一人の冒険者が倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
エリスが駆け寄る。
その冒険者は、昨日の調査隊の一人だった。
「……鉱山……」
「何があったんですか?」
「黒い……魔物……」
そこまで言うと、冒険者は意識を失った。
「黒い魔物?」
レティシアが不安そうにする。
俺は地面を見る。
冒険者の服に――
黒い粉が付着している。
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俺はその粉を調べる。
「……間違いない」
「黒い魔力?」
「うん」
だが、今までのものとは違う。
かなり濃い。
俺は魔力感知を使う。
「鉱山の方から、まだ感じる」
エリスが地図を広げる。
「でも、私たちは捜索隊ではありません」
「分かってる」
俺は少し迷った。
助けを求めている人がいる。
でも、勝手に動けば危険だ。
「まずギルドへ戻ろう」
俺たちは馬車を街へ向けた。
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街へ戻る途中。
森の中で、昨日の黒いローブの男が立っていた。
「……!」
レティシアが剣に手をかける。
男はこちらを見る。
「君たちか」
「昨日、ギルドにいましたよね?」
俺が尋ねる。
「ああ」
男は否定しなかった。
「北西鉱山の黒い結晶を探しているんですか?」
少しの沈黙。
「そうだ」
男が答える。
「何のために?」
「止めるためだ」
予想外の答えだった。
「黒き核が目覚めれば、この地域だけでは済まない」
男はそう言う。
「だから私は、欠片を集めている」
「じゃあ、あなたは敵じゃない?」
レティシアが聞く。
男は答えない。
「それは、君たちが決めることではない」
そして俺を見る。
「キラ」
「……!」
俺は驚いた。
なぜ名前を知っている?
「どうして俺の名前を?」
男は一瞬だけ黙った。
「君たちの戦いを見たことがある」
それだけ言うと、男は背を向ける。
「待って!」
俺が呼び止める。
だが――
「北西鉱山には近づくな」
男は振り返らずに言った。
「今の君たちでは、死ぬ」
そのまま森の奥へ消えていった。
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街へ戻った夜。
俺はステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:46
今回は大きな戦闘がなかったため、レベルは変わっていない。
けれど――
俺の中には、別の変化があった。
黒き核。
黒い結晶。
そして、あの男。
少しずつ謎が繋がり始めている。
ただ一つ分からない。
なぜ、あの男は――
俺たちのことを知っているのか。
第80話 終




