79話 怪しい冒険者
ギルドの会議室。
机の上には、これまでに発見された黒い結晶の情報が並べられていた。
鉱山。
北部の森。
そして、今回の北西鉱山。
「三つの場所に共通点があります」
調査員が地図を広げる。
俺たちは地図を覗き込む。
「全部、古い鉱脈の近くです」
「鉱脈?」
レティシアが首を傾げる。
「昔、この地域では魔力を含んだ鉱石が採掘されていました」
エリスが地図を見る。
「ということは、魔力が集まりやすい場所に黒い結晶が生まれている?」
「その可能性があります」
俺は地図上の三つの地点を線で結ぶ。
すると――
「……三角形になってる」
俺が呟く。
調査員が頷いた。
「そして、その中心にあるのが――」
指が地図の一点を示す。
古代遺跡。
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「そこへ調査に行くんですか?」
レティシアが尋ねる。
「いえ」
調査員は首を横に振った。
「現在、Cランク以上の冒険者を中心に調査隊を編成しています」
俺たちはDランク。
今回も無理に参加することはできない。
「分かりました」
俺は頷く。
悔しくないと言えば嘘になる。
だけど、今の自分たちの実力は分かっている。
焦って遺跡へ向かえば、足手まといになる。
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その日の午後。
俺たちは別の依頼を探した。
「これにしよう!」
レティシアが取ったのは、
『薬草採取・護衛』
近くの森で薬草を集める商人を護衛する依頼だ。
「魔物討伐より簡単そうですね」
エリスが言う。
「たまにはこういう依頼もいいよ」
俺たちは依頼を受けた。
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森へ入り、商人の護衛をしながら薬草を探す。
戦闘ばかりの日々ではない。
こうした仕事も冒険者には必要だ。
「この葉です」
エリスが薬草を見つける。
「こっちにもあります!」
レティシアも採取する。
俺は周囲を警戒する。
「……平和だね」
「そういう日も大事ですよ」
エリスが微笑む。
しかし――
魔力感知に反応が入った。
「……魔物」
「また?」
レティシアが剣を抜く。
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岩場から現れたのは、三匹のロックリザード。
硬い鱗を持つ爬虫類型の魔物だ。
「私が前に出る!」
レティシアが走る。
ロックリザードが尻尾を振る。
――ブンッ!
レティシアが避ける。
「キラ!」
「任せて!」
俺は炎を集める。
「《フレイムスパイラル》!」
――ゴォォォッ!!
炎の渦が一匹を包む。
硬い鱗が熱で赤くなる。
「今!」
レティシアが斬り込む。
――ザンッ!
そのまま一匹を倒す。
残り二匹。
エリスの矢が足を狙う。
――シュッ!
動きが鈍ったところへ、俺が《ウィンドバレット》を撃つ。
――ドンッ!
レティシアが最後の一撃を加える。
残りの二匹も倒れた。
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戦闘後。
俺は自分の手を見る。
《フレイムスパイラル》。
以前より明らかに扱いやすくなっている。
魔力の流れも安定してきた。
「少し威力が上がった?」
エリスが尋ねる。
「うん。前より魔力を無駄にしなくなった気がする」
「新しい魔法だけじゃなく、昔から使っている魔法も成長してるんですね」
「そうみたい」
魔法は覚えたら終わりじゃない。
使い続けることで、精度も威力も上がっていく。
それが少し嬉しかった。
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依頼を終えて街へ戻る。
今回の戦闘では――
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:46
レベルが一つ上がっていた。
「46か」
40を超えてからも、少しずつ上がっている。
けれど、レベルだけを追いかけるつもりはない。
今は――
戦い方を身につけること。
三人の連携を磨くこと。
そして新しい魔法を研究すること。
それが一番大事だ。
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ギルドへ報告に戻ったときだった。
入口から、一人の男が入ってくる。
黒いローブ。
顔の半分を隠すようなフード。
男は受付へ向かうと、低い声で尋ねた。
「北西鉱山で回収された魔石について聞きたい」
「申し訳ありません。調査中の情報ですので――」
男は受付嬢を睨む。
「……そうか」
そして、そのままギルドを出ていった。
「なんだったんだろう?」
レティシアが首を傾げる。
俺は男が消えた扉を見つめる。
「……分からない」
でも――
男から感じた魔力は、普通の冒険者とは少し違っていた。
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その夜。
街の外。
黒いローブの男が一人で歩いていた。
手には、小さな黒い結晶。
「もう見つかったか……」
男は結晶を握る。
「ならば、こちらも急がなければ」
その視線の先には――
古代遺跡へ続く山道。
「黒き核が完全に目覚める前に、欠片を集めなければならない。」
男は静かに歩き始めた。
彼が敵なのか。
それとも――
黒き核を止めようとしているのか。
まだ、誰にも分からなかった。
第79話 終




