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8話 森の奥での死闘

いじめられっ子の貴族少年、万能テイムスキルで世界で唯一のテイマーになりました


も書いてますのでよろしくお願いしますm(_ _)m


 翌朝。


 俺はいつもより早く目を覚ました。


 窓の外は、まだ薄暗い。


 鳥の鳴き声も聞こえない。


「……眠い」


 昨日、魔法の研究をしすぎた。


 《重力操作》と《冷却》の組み合わせ。


 それから、風の魔法。


 炎と風。


 水と冷却。


 いろいろ試していたら、気づけば夜遅くになっていた。


 それでも。


「今日はレベル4だ」


 昨日、父さんと決めた。


 今日は森へ行く。


 レベルを上げる。


 そして、新しい魔法を実戦で試す。


 ベッドから降りると、机の上に置いていた紙を確認する。


 そこには昨日の研究結果が並んでいる。


 《重力操作》


 ・対象を限定すれば消費魔力を減らせる

 ・方向だけ変更する場合、さらに消費が少ない

 ・生物に使う場合、抵抗される可能性がある


 《冷却》


 ・対象から熱を奪う魔法

 ・一点に集中すると効果が速くなる

 ・水や地面への使用が有効


 そして一番下。


 《魔法複合》


 ・複数の魔法を組み合わせる

 ・単独では弱い魔法でも戦闘に利用できる


「よし」


 俺は紙を折りたたんだ。


 これを持っていく。



---


 朝食を終えると、父さんが待っていた。


「準備はできたか?」


「うん」


 昨日と同じ短剣を腰に下げる。


 それから、水筒と簡単な食料。


 今日は小さな鞄も背負っている。


「今日は森の少し奥まで行く」


「昨日より?」


「ああ」


 父さんが真剣な顔をする。


「昨日の場所は、まだ森の入口に近い。今日は少しだけ奥へ入る」


「どんな魔物がいる?」


「ゴブリンやウルフはいるだろうな。運が悪ければホーンラビットやオークにも会う」


「オーク……」


 聞いたことがある。


 人型の魔物。


 ゴブリンよりもかなり強いらしい。


「でも、危険な魔物が出たら俺が対応する」


「分かった」


 馬車に乗り込む。


 昨日と同じ道を進む。


 街を出て、草原を抜ける。


 そして森へ。


 昨日とは違い、俺は少しだけ余裕があった。


 森の入口を見る。


「……今日は昨日より怖くない」


「慣れてきたか?」


「うん」


「それが一番危ない」


「え?」


「慣れた頃に油断する」


「……気をつける」


 父さんは笑った。


「それでいい」



---


 森の中へ入る。


 昨日と同じように、足元には枯れ葉が積もっている。


 俺は昨日より周囲を意識する。


 木。


 草。


 足跡。


 鳥の鳴き声。


 そして――魔力。


「……」


 ふと、足を止める。


「父さん」


「どうした?」


「あっち」


 右側の茂みを指差した。


 父さんが目を細める。


「何か感じたのか?」


「うん。少しだけ」


 父さんが静かに歩いていく。


 茂みを覗く。


「……ホーンラビットだ」


 小さな兎がいた。


 ただし、額には一本の角がある。


 こちらを見ると、耳を立てた。


「可愛い」


「見た目に騙されるな」


 ホーンラビットが後ろ足を踏み鳴らす。


 次の瞬間。


 地面を蹴った。


「速い!」


 一直線にこちらへ向かってくる。


 俺は横へ飛ぶ。


 ザッ!


 角が服を掠めた。


「危なっ!」


 振り返る。


 ホーンラビットはすでにこちらを向いている。


 そして、再び跳ぶ。


「《重心操作》!」


 無詠唱。


 相手の重心を少しだけ右へずらす。


 ホーンラビットの軌道が逸れる。


 だが、完全には止まらない。


「まだ来る!」


 俺は後ろへ下がる。


 ホーンラビットが地面を蹴る。


 今度は真正面。


「だったら――」


 地面を見る。


 昨日の実験を思い出す。


「《冷却》」


 ホーンラビットの足元。


 地面が凍る。


「キュッ!?」


 足が滑った。


 身体が横へ流れる。


「今だ!」


 俺は走る。


 短剣を握る。


 でも――。


 怖い。


 昨日のゴブリンとは違う。


 小さい身体のくせに、動きが速い。


 だから俺は、無理に近づかない。


「《重力操作》」


 ホーンラビットの身体を地面へ押さえつける。


 ほんの一瞬。


 それだけで十分だった。


 俺は距離を詰める。


 一撃。


 ホーンラビットが動かなくなった。


【ホーンラビットを討伐しました】


【経験値を獲得しました】


【レベルが3から4へ上昇しました】


「……!」


 身体の奥が熱くなる。


「レベル4……!」


 俺はすぐに鑑定する。


【名前:キラ】


【年齢:6】


【レベル:4】


【魔力:9】


【筋力:7】


【敏捷:8】


【知力:10】


「魔力9……」


 レベル3のときは7。


 また2増えた。


「順調だな」


 父さんが言う。


「うん!」


 でも。


 俺が喜んでいると、父さんがホーンラビットの死体を見た。


「キラ」


「何?」


「今の戦い、よかったぞ」


「本当?」


「ああ」


 父さんは頷く。


「最初から攻撃魔法を使わなかった」


「うん」


「相手の動きを見て、必要な魔法だけ使った」


「……それがいいの?」


「魔法使いは魔力を無駄にするな。特にお前はな」


「どうして?」


「お前は魔力が少ない」


「……」


 確かにそうだ。


 レベル4になったとはいえ、魔力は9。


 強力な魔法を何度も使えばすぐになくなる。


「だから、頭を使え」


「分かった」


 父さんはホーンラビットの角を拾った。


「これは売れる」


「角が?」


「ああ。薬や魔道具の材料になる」


「へえ……」


 魔物は倒すだけじゃない。


 素材にもなる。


 冒険者という仕事が、少しずつ分かってきた気がする。



---


 さらに森の奥へ進む。


 時間が経つにつれて、木々が大きくなっていく。


 道もなくなった。


 俺たちは木々の間を進んでいく。


 すると――。


 父さんが立ち止まった。


「……おかしい」


「何が?」


「魔物の痕跡が多すぎる」


 地面を見る。


 足跡。


 爪痕。


 木の幹についた傷。


「ウルフ?」


「ああ」


「昨日より多い?」


「かなり多い」


 父さんが剣を抜く。


「ここからは警戒しろ」


「分かった」


 俺も周囲を見る。


 静かだ。


 あまりにも静か。


 そのとき。


 遠くから――。


「グルルル……」


 唸り声。


 一つ。


 そして。


「グルル……」


 二つ。


 三つ。


 森の奥から、次々と目が現れた。


「……ウルフ」


 昨日より多い。


 十匹近くいる。


「父さん」


「俺が前に出る」


 父さんが俺を庇う。


 ウルフたちが一斉に走り出した。


「来るぞ!」


 一匹。


 二匹。


 三匹。


 地面を蹴る音が響く。


 父さんが剣を振る。


 ガキィン!


 一匹を弾き飛ばす。


 別の一匹が横から襲う。


 父さんが身体を捻って避ける。


 その隙に、三匹目が俺へ向かってきた。


「俺も戦う!」


「無理するな!」


 俺は手を伸ばす。


「《冷却》!」


 地面が凍る。


 ウルフの足が滑った。


「今!」


 続けて。


「《重力操作》!」


 身体を地面へ押し付ける。


 だが――。


「グルァッ!」


 ウルフが力任せに立ち上がった。


「嘘……!」


 昨日より強い。


 俺の魔法だけでは止められない。


 ウルフが飛びかかってくる。


「《重心操作》!」


 身体を逸らす。


 ウルフの牙が目の前を通り過ぎる。


 俺は転がる。


 立ち上がる。


 また来る。


「速い……!」


 攻撃を避ける。


 また避ける。


 でも、これでは勝てない。


 俺の魔力にも限界がある。


 残り――。


【魔力:6】


「あと六……」


 考えろ。


 昨日の岩。


 冷却。


 重力。


 組み合わせ。


 でも、ウルフは岩じゃない。


 動いている。


「だったら……」


 俺は足元を見る。


 土。


 石。


 枯れ葉。


 そして、木。


「使える」


 ウルフが再び飛び込んでくる。


 俺は横へ逃げる。


 そして地面へ手をつく。


「《重力操作》!」


 地面に転がっていた石を浮かせる。


 ほんの少し。


 その石を――。


「《風操作》」


 風を作る。


 浮かせた石を前へ飛ばす。


 ドンッ!


 石がウルフの身体に当たった。


「グルッ!?」


 ウルフが怯む。


「できた……!」


 魔法同士を組み合わせる。


 ただし、今度は違う。


 魔法で魔法を補助する。


 重力で石を浮かせる。


 風で飛ばす。


 俺はさらに術式を組み立てる。


 風を一点に集中。


 石の周囲だけに風を流す。


「《風操作》!」


 石が加速する。


 ウルフの肩へ直撃した。


「グァッ!」


 倒れる。


 俺は走る。


 短剣を握る。


 そして――。


 一撃。


 ウルフが動かなくなった。


【ウルフを討伐しました】


【経験値を獲得しました】


 俺は息を切らしながら立っていた。


「……倒した」


 自分の手を見る。


 今のは俺一人で倒した。


 父さんの援護はなかった。


 初めて。


 自分の魔法だけで。


 俺は魔物を倒した。


「キラ!」


 父さんが叫ぶ。


「まだ終わってない!」


「え?」


 振り返る。


 残りのウルフたちがこちらを見ていた。


 そして――。


 一斉に走り出す。


「……マジかよ」


 俺は短剣を構えた。


 怖い。


 でも。


 もう、最初ほど怖くない。


「父さん」


「なんだ?」


「俺も戦う」


 父さんが笑った。


「分かった」


 剣を構える。


「ただし、無茶はするな」


「うん!」


 俺は右手を前へ出す。


 頭の中で魔法を組み立てる。


 冷却。


 重力。


 風。


 三つの魔法を、一つずつではなく。


 一つの流れとして組み合わせる。


「……これなら」


 地面を凍らせる。


 ウルフの足を滑らせる。


 重力を横へ。


 身体の軌道を逸らす。


 そこへ風をぶつける。


 ウルフが吹き飛ぶ。


 父さんが斬る。


 別のウルフが来る。


 俺は重心をずらす。


 牙を避ける。


 風で距離を取る。


 冷却で足元を奪う。


 一匹。


 また一匹。


 少しずつ数が減っていく。


 最後の一匹が逃げようとした。


「待て!」


 俺は手を伸ばす。


「《重力操作》!」


 ウルフの身体が沈む。


 父さんが追いつく。


 そして――。


 一閃。


 森に静寂が戻った。


 俺はその場に座り込んだ。


「……疲れた」


 父さんが笑う。


「当然だ」


 俺は鑑定を確認する。


【レベル:4】


 まだレベルは上がっていない。


 けれど。


 今日、俺は一つ分かった。


 レベルを上げるだけでは強くならない。


 魔力を増やすだけでもない。


 自分の能力を理解して、工夫する。


 それも強さになる。


 俺は空を見上げた。


 木々の隙間から、夕方の光が差し込んでいる。


「もっと強くなりたい」


 その言葉は、昨日までとは少し違っていた。


 ただレベルを上げたいわけじゃない。


 魔法を極めたい。


 自分だけの魔法を作りたい。


 そして――。


 いつか《再構築》の力を理解したい。


 俺は立ち上がる。


「帰るぞ、キラ」


「うん」


 森を出る頃には、空が赤く染まっていた。


 そして俺は知らなかった。


 今日、森の奥で倒したウルフたち。


 その中に一匹だけ――。


 普通のウルフとは違う魔力を持った個体がいたことを。


 そして、その魔力の残滓が。


 俺の中にある《再構築》へ、ほんの少しだけ影響を与えていたことを。


 その変化に気づくのは――。


 もう少し先の話になる。

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