76話 限界
朝。
村の外から聞こえた地鳴りは、まだ耳に残っていた。
俺たちは森の入口に立っている。
「昨日のナイトウルフ……二匹だけじゃなかったんだ」
レティシアが剣を握る。
「うん」
俺は魔力感知を使う。
「かなりいる」
「何匹ですか?」
エリスが尋ねる。
「正確には分からない。でも……二十以上」
レティシアが息を呑む。
「そんなに?」
「しかも、全部が黒い魔力を持ってる」
森の奥から、遠吠えが響いた。
――アオォォォン……。
一匹。
そして別の場所からも。
――アオォォン!
まるで互いに呼び合っているようだった。
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村を守る
「ギルドに報告して、応援を呼びましょう」
エリスが言う。
「それが一番だね」
俺は頷く。
しかし、その直後――
村の反対側から悲鳴が聞こえた。
「魔物だ!」
村人の叫び声。
「森の中だけじゃない!」
レティシアが走り出す。
「行こう!」
俺たちも後を追う。
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村の南側。
ナイトウルフが三匹、柵を破って侵入していた。
「村人を守って!」
レティシアが飛び出す。
――ザンッ!
一匹を斬る。
残った二匹が別方向へ走る。
「逃がさない!」
エリスが弓を構える。
――シュッ!
矢が一匹の脚に刺さる。
「キラ!」
「任せて!」
俺は魔力を集める。
「《ウィンドバレット》!」
――ドンッ!
ナイトウルフの身体が吹き飛ぶ。
「最後!」
レティシアが仕留める。
しかし――
「まだ来る!」
エリスが叫んだ。
森から新たなナイトウルフが姿を現す。
「……五匹」
俺は魔力を探る。
「いや、もっといる!」
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「みんな、村の中央へ!」
レティシアが叫ぶ。
村人たちが集まってくる。
俺たちは村の入口を守る。
「エリス、補助魔法を!」
「はい!」
「《ウィンドステップ》!」
三人の身体が軽くなる。
ナイトウルフの群れが迫る。
「来るよ!」
レティシアが構える。
――ザンッ!
先頭の一匹を倒す。
次の一匹。
そのさらに後ろから、別の一匹。
「多い!」
俺は《ルミナ》を複数展開する。
光が周囲を照らす。
黒い魔力を持つナイトウルフたちの姿が浮かび上がった。
「見える!」
エリスが次々に矢を放つ。
――シュッ!
――シュッ!
――シュッ!
レティシアが前で食い止める。
俺は風魔法で群れを押し返す。
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黒い遠吠え
そのとき。
森の奥から、ひときわ大きな遠吠えが響いた。
――アオオオオオオオオッ!
ナイトウルフたちが一斉に止まる。
「……何?」
レティシアが振り返る。
森の奥から、一匹の巨大な狼が歩いてくる。
普通のナイトウルフより二回り以上大きい。
黒い毛並み。
そして胸元には――
黒い結晶が埋め込まれている。
「……あれが群れのボス」
エリスが呟く。
俺は魔力を感じ取る。
「違う」
「え?」
「魔力が……今までの奴らとは桁違いだ」
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ナイトウルフキング
巨大な狼が姿を現す。
その名前が頭に浮かぶ。
ナイトウルフキング。
通常のナイトウルフとは比較にならないほど強力な個体。
しかも――
黒い魔力によって、さらに強化されている。
「これは……」
レティシアが剣を握り直す。
「私たちだけじゃ無理だよ」
「うん」
俺も頷く。
昨日のナイトウルフとは違う。
今の俺たちが戦えば、勝てる可能性は低い。
だったら――
「村を守りながら、時間を稼ぐ」
「分かった!」
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ナイトウルフキングが走る。
「速い!」
レティシアが迎え撃つ。
――ガキィン!
剣と爪がぶつかる。
「ぐっ……!」
レティシアが押し飛ばされる。
「レティシア!」
俺はすぐに魔法を放つ。
「《フレイムスパイラル》!」
炎がナイトウルフキングを包む。
――ゴォォッ!
だが、黒い魔力が炎を押し返す。
「効かない……!」
エリスの矢が飛ぶ。
――シュッ!
ナイトウルフキングの肩に命中。
だが、浅い。
「強すぎる……」
俺は歯を食いしばる。
レベル40になった。
Dランクにもなった。
それでも――
この魔物には届かない。
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俺は《ルミナ・フレア》を思い出す。
黒い魔力を弱める魔法。
「一瞬だけなら……!」
魔力を集中する。
「《ルミナ・フレア》!」
――パァァァッ!!
強烈な光がナイトウルフキングを包む。
黒い魔力が薄くなる。
「今です!」
エリスが叫ぶ。
レティシアが踏み込む。
「――はぁっ!」
――ザンッ!
胸元の黒い結晶へ剣が当たる。
しかし――
カキィン!
「硬い!」
結晶には傷一つつかなかった。
ナイトウルフキングが咆哮する。
黒い魔力が再び膨れ上がる。
「ダメ……!」
俺たちは後退する。
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その瞬間。
遠くから馬の走る音が聞こえた。
――パカッ、パカッ、パカッ!
「冒険者だ!」
村人が叫ぶ。
応援が来た。
俺たちはようやく息をつく。
だが――
森の奥から現れた冒険者たちを見て、ナイトウルフキングはゆっくりと牙を剥いた。
戦いは――
これからが本番だった。
第76話 終




