75話 先兵
俺たちは依頼の村へ向かっていた。
街から半日ほど離れた、小さな農村。
「正体不明の魔物か……」
レティシアが依頼書を眺める。
「夜にしか出ないっていうのが気になるね」
「目撃した人も、姿をはっきり見ていないそうです」
エリスが答える。
「足音だけ聞こえた人もいるみたいです」
「じゃあ、実際に見てみるしかないね」
俺たちは歩みを進めた。
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昼過ぎ。
村へ到着する。
村人たちは、俺たちを見ると少し安心した表情を浮かべた。
「冒険者さんたちですか?」
「はい。魔物の調査に来ました」
村長が出てくる。
「来てくださって助かります」
「最近、何が起きているんですか?」
村長は周囲を見渡した。
「夜になると、村の外で何かが動き回るのです」
「魔物の姿は?」
「それが……」
村長は首を振る。
「誰も、はっきり見たことがないのです」
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夕方。
俺たちは村の外れで待機する。
武器を準備する。
エリスは弓。
レティシアは剣。
俺は杖を持つ。
「何も来なかったらどうする?」
レティシアが小声で聞く。
「その時は帰ろう」
「それだけ?」
「それだけ」
レティシアが笑う。
「キラらしいね」
そして――
夜になる。
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――ザッ。
森の方から音がした。
三人とも顔を上げる。
――ザッ……ザッ……。
何かが歩いている。
「来た」
俺は魔力感知を使う。
「一体……いや、二体」
エリスが弓を構える。
「どこです?」
「まだ森の中」
足音が近づく。
――ガサッ!
木々の間から、二つの影が現れた。
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月明かりに姿が浮かぶ。
「狼……?」
レティシアが呟く。
普通のフォレストウルフより一回り大きい。
黒い毛並み。
そして――
「ナイトウルフです」
エリスが名前を口にする。
夜間に活動する狼型の魔物。
「二体だけなら……」
レティシアが剣を構える。
だが俺は、違和感を覚えていた。
「待って」
「どうしたの?」
「こいつら……」
魔力を探る。
身体の奥から、微かに黒い魔力が漏れている。
「まただ」
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ナイトウルフが同時に襲いかかる。
「《ウィンドステップ》!」
エリスの補助魔法。
レティシアが一体を迎え撃つ。
――ガキィン!
爪と剣がぶつかる。
「速い!」
レティシアが後ろへ飛ぶ。
もう一体が俺へ向かってくる。
「《ウィンドバレット》!」
――ドンッ!
圧縮した風がナイトウルフの肩を撃ち抜く。
「当たった!」
新しく作った魔法。
まだ安定しないが、今回は上手くいった。
ナイトウルフが怯む。
その隙にエリスの矢が飛ぶ。
――シュッ!
「今です!」
レティシアが踏み込む。
――ザンッ!
一体を倒す。
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残った一体が突然、身体を震わせた。
「何?」
黒い魔力が濃くなる。
「下がって!」
俺が叫ぶ。
ナイトウルフの身体能力が一気に上がる。
「速い!」
レティシアが攻撃を避ける。
――ザンッ!
剣が空を切る。
「レティシア!」
「大丈夫!」
俺は《ルミナ》を使う。
「《ルミナ・フレア》!」
――パァァッ!
強烈な光がナイトウルフを包む。
「グルァッ!」
黒い魔力が一瞬薄くなる。
「今!」
エリスの矢。
レティシアの剣。
そして俺の風魔法。
全員の攻撃が同時に決まった。
ナイトウルフが倒れる。
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戦闘が終わった。
俺は倒れたナイトウルフを調べる。
「やっぱり……」
胸の奥に、小さな黒い結晶が埋め込まれていた。
「これも黒き核の欠片?」
エリスが尋ねる。
「たぶん」
レティシアが結晶を見る。
「じゃあ、この村の近くにもあるってこと?」
「そうだと思う」
俺たちは森を見る。
黒い魔力は、森の奥へ続いている。
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村へ戻ると、村長が驚いた。
「ナイトウルフだったのですか?」
「はい」
「そんな魔物が、この村の近くに……」
村人たちも不安そうにする。
俺たちは黒い結晶についてはギルドへ報告することにした。
「しばらく夜間の外出は避けてください」
村長が頷く。
「分かりました」
今回の依頼はまだ終わっていない。
森の奥に何かがある可能性が高い。
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宿を借りて、ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:40
「40……!」
レベルがついに40になった。
レティシアが笑う。
「また一つ強くなったね」
「うん」
けれど、俺は素直には喜べなかった。
レベルが40になっても――
黒い魔力をまとったナイトウルフには苦戦した。
まだまだ強くならなければならない。
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そして翌朝。
村のさらに奥にある森から、地鳴りが響いた。
――ゴゴゴゴゴ……。
「今の音……」
エリスが森を見る。
俺も魔力感知を広げる。
「……かなり大きい」
森の奥。
黒い魔力が、ゆっくりと広がっている。
そしてその中心には――
ナイトウルフたちが集まっている。
昨日の二体は、ただの先兵だった。
第75話 終




