74話 正体不明
黒い結晶の調査が進められている間も、俺たちは普段通り冒険者として依頼をこなしていた。
大きな事件だからといって、俺たちまで無理に首を突っ込む必要はない。
今の俺たちはDランク。
まずは、自分たちの力を伸ばすことが大切だ。
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朝、冒険者ギルド。
掲示板を見ていると、レティシアが一枚の依頼書を取った。
「これ、どう?」
『山道の魔物討伐』
討伐対象は――
ストーンゴート。
岩場に生息する山羊型の魔物だ。
「Dランク向けだね」
「最近、山の方の依頼が増えてますね」
エリスが言う。
「じゃあ、これにしよう」
俺たちは依頼を受けた。
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街を出て、山道を進む。
岩が多く、足場も悪い。
「歩きにくい……」
レティシアが足元を見る。
「戦うなら、もっと気をつけないと」
エリスが周囲を確認する。
そのとき――
「来る」
俺が魔力を感じ取った。
岩陰から三匹のストーンゴートが姿を現す。
大きな角。
岩のように硬い身体。
「いくよ!」
レティシアが剣を構える。
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一匹が突進してくる。
――ドドドドッ!
「速い!」
レティシアが横へ避ける。
俺は風魔法で進路を変える。
「《ウィンドカッター》!」
――シュッ!
身体を傷つけるが、浅い。
「硬いね!」
「角じゃなくて脚を狙って!」
エリスが矢を放つ。
――シュッ!
矢が脚に命中。
動きが鈍る。
「今!」
レティシアが踏み込む。
――ザンッ!
ストーンゴートが倒れる。
残り二匹も、同じように連携して倒した。
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依頼を終えた帰り道。
俺は少し考えていた。
最近、魔法を使う機会は増えている。
でも、使える魔法の種類はまだ少ない。
「新しい魔法、作ってみようかな」
レティシアが振り向く。
「また?」
「うん」
これまで使ってきた魔法を思い返す。
風。
炎。
光。
攻撃だけじゃない。
もっと戦い方を増やしたい。
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宿へ戻る前に、近くの訓練場を借りた。
俺は魔力を手のひらに集める。
「風を……一点に」
魔力を圧縮する。
――ビュン!
だが、うまくまとまらない。
「失敗」
もう一度。
今度は、風を小さな球状にする。
「《ウィンドバレット》!」
――ドンッ!
圧縮された風が飛び出す。
訓練用の木板に穴が開いた。
「できた!」
「すごい!」
レティシアが驚く。
エリスも木板を見る。
「《ウィンドカッター》より小さいですが、速いですね」
「うん」
狭い場所でも使いやすい。
これなら素早い魔物にも当てやすそうだ。
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しかし問題も
「もう一回!」
俺は再び魔力を集める。
「《ウィンドバレット》!」
――ドンッ!
今度は威力が弱い。
「……あれ?」
「さっきより弱いです」
エリスが指摘する。
「魔力の圧縮が安定してないんだと思う」
新しい魔法は、まだ完成していない。
威力も安定しない。
「練習が必要だね」
レティシアが笑う。
「じゃあ、明日もやろう!」
「うん」
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その夜。
ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:39
ストーンゴートとの戦闘で、レベルが一つ上がっていた。
「39……」
次で40。
順調にレベルは上がっている。
けれど、レベルだけでは強さは決まらない。
魔法の使い方。
戦闘経験。
三人の連携。
それらを全部伸ばしていく必要がある。
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翌朝。
ギルドへ行くと、受付嬢から声をかけられた。
「キラさん、レティシアさん、エリスさん」
「はい?」
「実は、皆さんにお願いしたい依頼があります」
受付嬢が一枚の依頼書を差し出す。
「少し遠い村からの依頼です」
内容を読む。
『村周辺の魔物調査・討伐』
そして備考欄には――
最近、夜になると正体不明の魔物が目撃されている。
「正体不明……?」
レティシアが首を傾げる。
俺は依頼書を見つめる。
Dランクになってから、少しずつ難しい依頼が増えてきた。
「受けよう」
俺たちは依頼書を受け取った。
その村が、黒い魔力の影響を受けていることを――
この時の俺たちは、まだ知らなかった。
第74話 終




