73話 避難経路確認任務
第73話 黒き核の欠片
翌朝。
冒険者ギルドに着くと、いつもとは違う空気が流れていた。
受付には人が集まり、職員たちが慌ただしく動いている。
「昨日の結晶のことかな」
レティシアが言う。
「たぶん」
俺たちが受付へ向かうと、昨日の調査員が待っていた。
「キラさんたち。少しお話があります」
俺たちは奥の部屋へ案内された。
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机の上には、昨日オーガから回収された黒い結晶の写しが置かれていた。
「この結晶について調査した結果、過去の魔力災害に関係するものだと分かりました」
「やっぱり……」
俺は頷く。
「昔、この地域には巨大な魔力の塊が存在していました。それを当時の魔術師たちが封印した」
調査員が古い記録を見せる。
「その中心にあったものが、黒き核です」
「黒き核……」
エリスが呟く。
「今回見つかった結晶は、その本体ではありません」
「じゃあ?」
「欠片です」
小さな黒い結晶。
それが、あの巨大な核の一部。
「それが魔物の身体に入っていた」
「はい」
黒き核の欠片には、周囲の魔力を吸収する性質があるらしい。
魔物が取り込めば、身体能力や魔力が異常に強くなる。
「だから、あのオーガは……」
「通常より遥かに強かったのでしょう」
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「では、黒い石を全部探すんですか?」
レティシアが尋ねる。
「それは上位冒険者と調査隊が行います」
俺たちはDランク。
まだ、この問題の中心に入るには早い。
「皆さんには、別の依頼をお願いしたい」
渡されたのは一枚の依頼書。
『北部街道周辺の魔物討伐および避難経路の確認』
「避難経路?」
「万が一、強化された魔物が街道へ出た場合に備えて、村人が安全に逃げられる道を確認します」
俺は依頼書を見る。
「分かりました」
俺たちにできることをする。
それでいい。
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北部街道近くの小さな村。
村長から話を聞く。
「最近、森の魔物が増えて困っておる」
「どんな魔物ですか?」
「フォレストウルフ。それからゴブリンも多い」
俺は地図を見る。
村の西側に森。
東側には街道。
「避難するとしたら、南へ向かうのが安全そうです」
エリスが地図を確認する。
「ですが、南側にも魔物の痕跡があります」
「じゃあ、先に確認しよう」
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森へ入る。
しばらく進むと、地面に大きな足跡があった。
「これは……」
レティシアがしゃがみ込む。
「オーガ?」
俺は首を横に振る。
「違う」
もっと小さい。
だが――
妙に深い。
「かなり重い魔物だ」
エリスが周囲を見渡す。
「何かいます」
木々の奥。
――ガサッ。
現れたのは、
アースベア。
巨大な熊型の魔物。
「三人でいける?」
レティシアが剣を構える。
「たぶん。でも慎重に」
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アースベアが突進する。
「《ウィンドステップ》!」
エリスの補助魔法。
レティシアが横へ避ける。
――ドゴォン!
爪が地面をえぐる。
「速い!」
「正面から受けないで!」
俺は《フレイムスパイラル》を放つ。
炎がアースベアの身体を包む。
――ゴォォッ!
アースベアが吠える。
だが、まだ動ける。
「硬い!」
レティシアが攻撃する。
しかし――
――ガキン!
剣が毛皮に弾かれた。
「浅い!」
「足を狙って!」
俺の指示にレティシアが動く。
エリスが矢を放つ。
――シュッ!
アースベアの足に命中。
「今!」
レティシアが踏み込む。
――ザンッ!
足を斬り裂いた。
アースベアが倒れる。
俺は最後に風魔法を放つ。
――バシュッ!
魔物が動かなくなった。
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俺はアースベアを調べる。
「……黒い魔力はない」
エリスも確認する。
「普通の個体ですね」
「よかった」
レティシアが息を吐く。
すべての魔物が黒い石の影響を受けているわけではない。
それだけでも安心できる。
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その後、南側の道を調査する。
大きな魔物はいない。
村人が避難するには十分な道だ。
俺たちは村へ戻り、村長へ報告した。
「ありがとう」
村長は深く頭を下げる。
「これで何かあっても、村の者を逃がせる」
依頼達成。
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宿へ戻ってステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:38
アースベアとの戦いで、レベルが一つ上がっていた。
レベル38。
少しずつ強くなっている。
でも――
今日の戦いで感じた。
俺たちの連携は確実に成長している。
それでも、強化されたオーガのような相手には、まだ届かない。
「もっと強くなろう」
レティシアが頷く。
「うん」
エリスも微笑む。
「三人で、少しずつですね」
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その夜。
ギルドの地下。
厳重に封印された箱の中で、黒い結晶が淡く光っていた。
――ピシッ。
表面に、小さな亀裂が入る。
そして結晶から漏れた黒い魔力が、床に刻まれた古い魔法陣へ流れ込んでいく。
魔法陣の一部が――
赤く光った。
第73話 終




