72話 グリーンオーガ討伐
黒い魔力が、グリーンオーガの全身を包んでいく。
さっきまでとは、明らかに違う。
「……魔力が膨れ上がってる」
俺は魔力感知を切れない。
見ているだけで分かる。
あのオーガは、今までの力をさらに引き出している。
「全員、下がれ!」
討伐隊の指揮役が叫んだ。
次の瞬間――
オーガが地面を蹴った。
――ドォン!!
「速い!」
一瞬で距離を詰める。
大剣を持った冒険者が迎え撃つ。
――ガキィィン!
「ぐっ……!」
大剣ごと身体を弾き飛ばされた。
「隊長!」
別の冒険者たちが一斉に攻撃する。
剣。
槍。
魔法。
矢。
あらゆる攻撃がオーガへ集中する。
だが――
黒い魔力が傷口を覆っていく。
「傷が……塞がってる?」
エリスが驚く。
「違う」
俺は目を凝らす。
「回復してるんじゃない。魔力で無理やり動かしてるんだ」
身体に負担をかけながら、力だけを引き上げている。
だからこそ――
「長くは続かないはず」
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「キラ!」
レティシアが叫ぶ。
「どうする!?」
「俺たちは討伐隊の援護!」
オーガに直接攻撃しても意味がない。
それなら――
周囲の魔物を近づけさせない。
「エリス、後ろを見て!」
「はい!」
森の奥から、新たな魔物が現れる。
ゴブリン。
しかも十匹以上。
「オーガの魔力に引き寄せられたのかも……」
エリスが弓を構える。
「来ます!」
――シュッ!
一匹を射抜く。
「レティシア!」
「任せて!」
レティシアが飛び出す。
――ザンッ!
二匹。
三匹。
俺は《ウィンドカッター》で後方の魔物を倒す。
「こっちは任せて!」
戦場の端で、俺たちも必死に戦う。
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ゴブリンを倒しながら、俺はオーガを見る。
討伐隊はまだ苦戦している。
正面から攻撃しても、黒い魔力が邪魔をしている。
「……魔力そのものを削れないか?」
俺は考える。
炎。
風。
光。
今まで覚えてきた魔法を思い浮かべる。
その中で――
光魔法なら。
「《ルミナ》!」
一つの光球を作る。
それをオーガへ向ける。
「……もっと!」
魔力を込める。
光が強くなる。
「《ルミナ・フレア》!」
――パァァッ!!
強烈な光がオーガの身体を照らす。
「グオオオッ!」
オーガが苦しそうに顔を覆った。
「効いてる!」
エリスが叫ぶ。
黒い魔力が、一瞬だけ薄くなった。
「キラ、今の魔法……!」
「まだ一回しか使えない!」
かなり魔力を消費した。
でも、使える。
「隊長!」
討伐隊の指揮役がこちらを見る。
「今だ!」
冒険者たちが一斉に攻撃する。
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剣が走る。
槍が突き込まれる。
魔法が炸裂する。
そして――
隊長の大剣が、オーガの肩へ深く食い込んだ。
「終わりだ!」
――ドォン!
グリーンオーガが膝をつく。
黒い魔力が、煙のように身体から抜けていく。
最後に巨大な身体が倒れた。
――ズズン……。
森が静かになる。
「……倒した」
レティシアが呟く。
「すごい……」
エリスも息を吐く。
俺はオーガを見つめた。
勝った。
でも――
あの黒い魔力は、消えていない。
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オーガの身体から、何かが落ちた。
――コトッ。
「何?」
レティシアが近づこうとする。
「待って!」
俺は止めた。
地面に落ちていたのは――
小さな黒い結晶。
鉱山や洞窟で見つかった黒い石と、よく似ている。
「同じもの……」
エリスが呟く。
俺は魔力感知を使う。
「……これ、オーガの身体の中にあったんだ」
つまり。
黒い石が魔物を強化していた。
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討伐隊の冒険者たちが黒い結晶を回収する。
俺たちはその様子を見ていた。
レティシアが剣を握る。
「私たちも、いつかあんな魔物と戦えるようになるかな」
「なるよ」
俺は答える。
「でも、今じゃない」
今日の戦いを見て、それがよく分かった。
俺たちはDランク。
レベルが上がっても、強敵との差はまだ大きい。
だから――
焦らない。
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街へ戻った夜。
俺はステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:37
「37……」
戦闘の経験でレベルが二つ上がっていた。
そして、新しく使った魔法。
《ルミナ・フレア》
強力な光を一瞬だけ放ち、魔物の身体にまとわりつく魔力を弱める魔法。
「これ、もっと練習しないとな」
まだ完成した魔法とは言えない。
でも――
新しい魔法が一つ増えた。
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その頃。
ギルドへ運ばれた黒い結晶を調べていた研究員が、顔を青ざめさせていた。
「……これはまずい」
「何が分かった?」
結晶を魔力測定器にかける。
針が大きく振れる。
「この結晶は、ただの魔力の塊じゃない」
「では何だ?」
研究員は、古い記録を取り出した。
「これは――」
数百年前の魔力災害について記されたページ。
そこには、こう書かれていた。
『災害の中心には、魔力を喰らい続ける黒き核が存在した』
研究員は、震える手でページをめくった。
「もし、この結晶が黒き核の欠片なら……」
封印はすでに――
少しずつ崩れ始めている。
第72話 終




