71話 討伐隊
翌朝。
冒険者ギルドは、いつもより慌ただしかった。
昨日、俺たちが報告したグリーンオーガ。
その討伐依頼が、すでに掲示板へ貼り出されている。
「すごい人数……」
レティシアが掲示板の前を見る。
Dランクだけじゃない。
Cランクや、さらに上の冒険者まで集まっている。
「オーガ一体に、こんなに?」
「森の中だからでしょう」
エリスが答える。
「街道に出てくれば、商人や村人にも被害が出ます」
俺も頷く。
昨日、戦わずに逃げた判断は間違っていなかった。
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ギルド職員が冒険者たちを集める。
「今回の目標は、北部街道周辺に出現したグリーンオーガの討伐です」
地図が広げられる。
「ただし、単独での行動は禁止します」
森の中には他の魔物もいる。
さらにオーガがどこへ移動するかも分からない。
「私たちは?」
レティシアが聞く。
「皆さんには、討伐隊の後方支援をお願いします」
「後方支援……」
「はい。周辺のフォレストウルフやゴブリンなどを排除し、討伐隊がオーガと戦いやすい状況を作ってください」
俺は頷く。
オーガと直接戦わなくていい。
今の俺たちには、その方がいい。
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討伐隊と共に北部街道へ向かう。
参加者は十数人。
俺たちのようなDランク冒険者もいれば、Cランクの冒険者もいる。
先頭には、今回の討伐を任されたベテラン冒険者がいた。
「昨日、オーガと遭遇したのは君たちか?」
「はい」
俺が答える。
「よく逃げ切ったな」
その冒険者は笑う。
「オーガを見て戦おうとしなかった。それだけでも十分な判断だ」
レティシアが少し嬉しそうにする。
「ありがとうございます」
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森へ入ってすぐ。
俺は魔力を感じ取った。
「前方に魔物」
「数は?」
「七……八匹」
木々の向こうからフォレストウルフが姿を現す。
「俺たちがやります!」
レティシアが前へ出る。
「エリス!」
「はい!」
「《ウィンドステップ》!」
三人の身体が軽くなる。
俺は《ルミナ》を浮かべる。
木々の間を走る魔物の位置を照らす。
「左!」
レティシアが一匹を斬る。
エリスの矢が続く。
俺は風魔法で動きを止める。
――ザンッ!
――シュッ!
――バシュッ!
短い戦闘だった。
「全部倒した!」
「周囲にまだいる」
俺は魔力感知を広げる。
「ゴブリンも近くにいる」
「じゃあ、そっちも行こう」
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討伐隊がオーガを探している間、俺たちは周囲の魔物を排除していく。
以前なら、目の前の敵を倒すことで精一杯だった。
今は違う。
エリスが遠くから敵を見つける。
レティシアが前で足止めする。
俺が魔法で援護する。
三人の役割が自然に決まっていた。
「キラ!」
「分かってる!」
俺は《ルミナ》を上空へ飛ばす。
森の中が一瞬明るくなる。
「右側に三匹!」
レティシアが走る。
――ザンッ!
エリスの矢。
俺の風魔法。
連携して魔物を倒す。
「かなり動きやすくなったね」
レティシアが言う。
「うん」
俺も実感していた。
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そのとき。
森の奥から――
グオオオオオッ!!
巨大な咆哮が響いた。
鳥たちが一斉に飛び立つ。
「……来た」
全員の動きが止まる。
「オーガです!」
エリスが叫ぶ。
遠くで木が倒れる。
――ドォン!
また一つ。
――ドォン!
ゆっくりと近づいてくる。
「全員、配置につけ!」
討伐隊の指揮役が叫ぶ。
俺たちも後方へ下がる。
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木々をなぎ倒しながら、グリーンオーガが姿を現した。
昨日よりもはっきり見える。
巨大な身体。
太い腕。
巨大な棍棒。
そして――
「……黒い」
俺は呟いた。
身体の一部から、黒い魔力が滲み出ている。
「やっぱり……」
エリスも気づいた。
オーガはただ強いだけではない。
黒い魔力の影響を受けている。
「全員、攻撃!」
討伐隊が一斉に動く。
魔法が飛ぶ。
矢が飛ぶ。
剣士たちが走る。
――ドォォン!
オーガの棍棒が地面を叩く。
土煙が舞う。
「すごい……」
レティシアが呟く。
俺は息を呑む。
これが――
自分たちより遥かに上の冒険者たちの戦い。
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戦いは順調に見えた。
オーガは何度も攻撃を受け、徐々に傷が増えていく。
「このままなら勝てそう」
レティシアが言った。
しかし――
俺は違和感を覚えた。
「……待って」
「どうしたの?」
「黒い魔力が……増えてる」
オーガの傷口から、黒い魔力が溢れ始めていた。
そして――
オーガが咆哮する。
グオオオオオオオッ!!
周囲の空気が震える。
魔力が一気に膨れ上がった。
「何だ、あれ……」
討伐隊の一人が呟く。
オーガの身体が、さらに巨大になる。
黒い魔力が全身を覆っていく。
「……まだ強くなるの?」
レティシアの声が震える。
俺は杖を握り直した。
これは――
ただの魔物討伐じゃない。
第71話 終




