70話 グリーンオーガ
Dランクになった翌日。
俺たちは冒険者ギルドの掲示板を見ていた。
「Dランクになると、依頼が一気に増えたね」
レティシアが目を輝かせる。
昨日までとは違い、掲示板の上段にも手を伸ばせるようになっている。
「護衛依頼も増えてます」
エリスが依頼書を眺める。
俺は一枚の依頼書に目を止めた。
『北部街道・魔物討伐』
最近、街道を通る商人から魔物の目撃報告が増えているらしい。
「これにしよう」
「Dランク最初の依頼だね!」
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街を出てしばらく歩く。
北部街道は、以前護衛した街道よりも森に近い。
「魔物が多い地域みたいですね」
エリスが周囲を警戒する。
「気をつけよう」
俺も魔力感知を使う。
少し進んだところで――
「いる」
「何匹?」
「五匹」
木々の向こうから現れたのは、
フォレストウルフ。
「前にも戦ったね」
レティシアが剣を抜く。
「でも、今回は――」
俺は魔力を探る。
「少し強い」
五匹のうち一匹だけ、明らかに魔力が大きい。
「群れのリーダーかな」
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フォレストウルフが一斉に走り出す。
「《ウィンドステップ》!」
エリスの補助魔法。
レティシアが前へ出る。
「任せて!」
――ザンッ!
一匹を倒す。
しかし、リーダー格のフォレストウルフが横から飛びかかる。
「レティシア!」
俺が風魔法で軌道を逸らす。
「助かった!」
レティシアが体勢を立て直す。
「こいつ、私がやる!」
何度も攻撃を避ける。
以前なら力任せに剣を振っていた。
今は違う。
相手の動きを見ている。
そして――
――ザンッ!
レッドウルフの首元を正確に斬り裂いた。
「倒した!」
「いい動きだったよ」
「えへへ」
残りの魔物も、俺とエリスで倒していく。
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討伐を終えようとしたとき。
森の奥から、さらに魔力を感じた。
「……まだいる」
「何が?」
「分からない」
俺は感知を広げる。
「かなり大きい」
木々が揺れる。
――ドン。
地面が震えた。
「来る!」
現れたのは――
グリーンオーガ。
巨大な身体。
手には大きな棍棒。
「オーガ……」
レティシアが息を呑む。
俺もすぐに判断する。
「戦わない」
「え?」
「今の俺たちじゃ危険すぎる」
Dランクになったばかり。
目の前のオーガは、明らかにDランクの想定を超えている。
「でも依頼は……」
「目的は街道の安全確保。こいつを倒すことじゃない」
俺は周囲を見る。
「場所を覚えて、ギルドに報告しよう」
レティシアは少し悔しそうだった。
それでも頷く。
「分かった」
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俺たちは慎重に距離を取る。
しかし、オーガがこちらに気づいた。
「走るよ!」
三人で森を駆ける。
オーガが追ってくる。
――ドゴォン!
棍棒が木をへし折る。
「速い!」
レティシアが叫ぶ。
「右!」
エリスが道を示す。
俺は《ルミナ》を後方へ飛ばす。
「《ルミナ》!」
光がオーガの目の前で輝く。
一瞬、動きが止まる。
「今!」
三人で一気に走る。
しばらくして、ようやく街道へ出た。
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街へ戻ると、すぐにギルドへ報告した。
「グリーンオーガですか?」
受付嬢が驚く。
「はい。北部街道の森の中です」
「分かりました。すぐに上位ランクの冒険者へ連絡します」
今回の依頼は成功。
街道周辺のフォレストウルフを討伐し、危険なオーガの存在も報告した。
「ちゃんと逃げられたの、偉いと思いますよ」
受付嬢が言う。
レティシアが少し不満そうにする。
「でも、倒せなかった……」
「倒す必要はなかったんだよ」
俺が言う。
「自分たちより強い相手から逃げるのも、冒険者の実力だから」
レティシアは少し考えて――
「……そうだね」
頷いた。
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宿へ戻り、ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:35
フォレストウルフとの戦闘で、レベルが一つ上がっていた。
「35か」
レベルは順調に上がっている。
だけど――
今日のオーガとの遭遇で、俺は改めて思い知った。
Dランクになったからといって、強くなったわけじゃない。
世界には、まだまだ自分たちでは敵わない魔物がいる。
「もっと強くならないと」
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その夜。
ギルドでは北部街道のオーガについて、緊急の討伐依頼が発行された。
だが、その報告書を読んだ調査員が眉をひそめる。
「……おかしい」
「何が?」
「グリーンオーガが、この地域に現れるはずがない」
さらに調査員は、冒険者たちが作った地図を見る。
オーガの目撃地点。
黒い魔力が確認された場所。
そして、古い遺跡。
すべてが少しずつ――
一つの場所へ近づいていた。
第70話 終




