69話 ランクD
翌朝。
俺たちは冒険者ギルドへ向かった。
昨日、鉱山で見つけた石碑。
そして黒い魔力。
そのことについて、ギルドから説明があるらしい。
「なんだか大事になってきたね」
レティシアが呟く。
「俺たちが無理に調べる必要はないよ」
俺は答える。
「今は自分たちにできる依頼を続けよう」
「そうですね」
エリスも頷く。
俺たちはまだEランク。
大きな事件に首を突っ込めるほどの実力はない。
---
ギルドの奥の部屋。
そこには数人の職員と、昨日の調査員がいた。
「まず、皆さんに知っておいてほしいことがあります」
調査員が古い資料を広げる。
「この地域では、数百年前に大規模な魔力災害が起きた記録があります」
「魔力災害……?」
「はい」
大量の魔力が一か所に集まり、周囲の魔物や土地そのものに影響を与えたそうだ。
その後、災害の中心地には封印が施された。
「その封印と、黒い石が関係しているんですか?」
エリスが尋ねる。
「可能性はあります」
まだ確定ではない。
ただ――
黒い石が見つかった場所は、昔の災害の影響範囲とかなり一致しているらしい。
「では、今また災害が起きようとしている?」
レティシアが聞く。
「それも分かりません」
調査員は首を横に振った。
「今のところ、異常が確認されているだけです」
---
説明を聞き終え、俺たちは部屋を出る。
「結局、まだ分からないことだらけだね」
レティシアが言う。
「うん」
俺も頷く。
「だからこそ、今は強くなることが大事だと思う」
いつか、もっと上のランクになれば、こうした調査にも関われるかもしれない。
でも今は――
目の前の依頼をこなす。
それが俺たちの仕事だ。
---
受付へ戻ると、受付嬢が声をかけてきた。
「そういえば、皆さん」
「はい?」
「Dランクへの昇格条件を満たしました」
「本当!?」
レティシアが身を乗り出す。
「はい」
受付嬢が笑う。
「これまでの討伐、護衛、採取などの実績が評価されました」
「じゃあ、Dランクになれる?」
「いえ」
受付嬢は首を振る。
「昇格試験を受けていただきます」
「試験……」
俺は依頼書を見る。
冒険者ランクは、ただレベルが高ければ上がるわけではない。
実績と実力。
そして危険な依頼を任せられるかどうか。
それを確認するための試験だ。
「いつですか?」
「三日後です」
レティシアが拳を握る。
「よし!」
---
それから三日間。
俺たちは特訓をすることにした。
レティシアは剣の訓練。
エリスは弓と補助魔法。
俺は魔法の練習。
「《ルミナ》!」
三つの光を同時に浮かべる。
――フワッ。
今回は安定している。
「できた!」
「すごい!」
レティシアが拍手する。
「三つなら、もう大丈夫そうですね」
エリスも笑う。
「でも、まだ長時間は無理」
魔力の消費が大きい。
それでも、最初に一つしか出せなかった頃とは違う。
少しずつ使いこなせるようになってきた。
---
三日後。
試験会場は街の外にある訓練場だった。
「今回の試験内容を説明します」
試験官が告げる。
「森に入り、指定された魔物を討伐してください」
指定された魔物は――
レッドウルフ三体。
「三体……」
レティシアが剣を握る。
試験官が続ける。
「ただし、単純な討伐試験ではありません」
「?」
「パーティーとしての連携も評価します」
俺たちは顔を見合わせた。
これは――
三人で戦う試験だ。
---
森へ入る。
しばらく進むと、赤い毛並みの狼が現れた。
「来る!」
三体が同時に飛びかかってくる。
「《ウィンドステップ》!」
エリスの補助魔法。
レティシアが前へ出る。
「一体は私が!」
俺は残り二体を見ながら魔力を集める。
「《ルミナ》!」
三つの光が空中に浮かぶ。
一瞬、レッドウルフの動きを止める。
「今!」
レティシアが一体を斬る。
エリスの矢が二体目へ。
――シュッ!
俺は魔法を放つ。
「《ウィンドカッター》!」
――ザシュッ!
最後の一体が倒れた。
---
森から戻る。
試験官が討伐結果を確認する。
「討伐は問題なし」
そして三人を見る。
「連携も良かった」
レティシアが期待する。
「では……」
「合格です」
「やった!」
レティシアが飛び上がる。
エリスも嬉しそうに微笑む。
「これで――」
俺は冒険者証を受け取る。
冒険者ランク:D
「Dランク……」
Fランクから始まった冒険者生活。
ようやく、ここまで来た。
---
宿へ戻り、俺はステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:D
レベル:34
「34……」
レベルも少しずつ上がっている。
でも、俺は思う。
Dランクになった。
それでも、まだアーマードボアには勝てない。
まだまだ先は長い。
「次はCランクだね!」
レティシアが笑う。
「気が早いよ」
「いいじゃん!」
エリスも笑う。
「一歩ずつ、ですね」
「うん」
三人で頷く。
そして俺たちは知らなかった。
Dランクへ上がったばかりの俺たちを待っているのが――
これまでより一段上の、大規模な依頼だということを。
第69話 終




