65話 護衛依頼
強化されたゴブリンと黒い石の件を報告してから数日。
俺たちはしばらく、街の近くで依頼をこなしていた。
洞窟の調査は、俺たちより上のランクの冒険者に任せることになった。
「今日はこれだね」
レティシアが依頼書を持ってくる。
『商隊の護衛』
「護衛?」
俺は依頼書を見る。
「Eランク向けの護衛依頼みたいです」
エリスが説明する。
「街から隣町まで、商隊についていく仕事ですね」
「魔物討伐とは少し違うね」
「うん」
俺たちは依頼を受けることにした。
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翌朝。
街の門の外に、数台の荷馬車が並んでいた。
「君たちが今回の護衛かい?」
商隊の代表らしい男性が声をかけてくる。
「はい。よろしくお願いします」
「こちらこそ頼むよ」
商隊には御者や商人が数人。
護衛役は俺たち三人だけだった。
「三人だけ?」
レティシアが周囲を見る。
「今回の道は比較的安全だからね」
商人が笑う。
「それに、Eランクの冒険者なら十分だと聞いている」
「なるほど」
俺たちは馬車の周囲を警戒する。
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しばらくは何も起きなかった。
街道を進む。
魔物の気配も少ない。
「護衛って、思ったより暇だね」
レティシアが欠伸をする。
「油断しないで」
「分かってるって」
エリスが周囲を見渡す。
「でも、確かに今日は静かですね」
俺も魔力感知を使う。
問題ない。
このまま何事もなく終わるかもしれない。
そう思っていた。
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昼を過ぎた頃。
俺は突然、足を止めた。
「……待って」
「どうしたの?」
レティシアが聞く。
「前方に魔物」
魔力反応が複数。
「何匹?」
「……八匹」
木々の間から姿を現した。
フォレストウルフ。
「またこいつらか」
レティシアが剣を抜く。
「商隊を守るよ!」
「うん!」
フォレストウルフが一斉に走ってくる。
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「《ウィンドステップ》!」
エリスの補助魔法が全員を包む。
レティシアが先頭へ出る。
「こっちは通さない!」
――ザンッ!
一匹を倒す。
別の一匹が馬車へ回り込もうとする。
「させない!」
俺が魔法を放つ。
「《ウィンドカッター》!」
風の刃が飛ぶ。
フォレストウルフが倒れる。
しかし――
「右!」
エリスが叫ぶ。
別の一匹が商人へ飛びかかる。
――シュッ!
エリスの矢がその身体を止める。
「助かった!」
商人が叫ぶ。
「まだです!」
レティシアが残りの魔物へ突っ込む。
数分後。
最後の一匹が倒れた。
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「終わった……」
レティシアが息を吐く。
「普通の討伐とは違うね」
俺も頷く。
「うん」
魔物を倒すだけなら、自分が危険になってもいい。
でも護衛では――
商人や馬車を守りながら戦わなければならない。
「周りを見る必要がありますね」
エリスが言う。
「一人で戦うより難しいかも」
「だから勉強になるね」
俺たちは再び歩き始める。
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その日の夕方。
俺は倒したフォレストウルフを確認していた。
「……まただ」
黒い魔力。
以前より薄い。
でも、やはり残っている。
レティシアが顔をしかめる。
「この辺りにもあるの?」
「うん」
エリスも確認する。
「でも、昨日までより薄いです」
「つまり、黒い石から離れるほど影響が弱くなるのかも」
俺は考える。
もしそうなら――
あの洞窟の奥には、かなり強い魔力がある。
それを考えると、少し怖くなった。
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夜。
商隊は街道沿いで野営することになった。
焚き火を囲みながら、商人が話しかけてくる。
「君たちは三人でパーティーを組んでいるのか?」
「はい」
「若いのにしっかりしているな」
レティシアが笑う。
「これでも冒険者ですよ」
「そうか」
商人は笑う。
「冒険者のランクは?」
「Eランクです」
「おお、昇格したばかりか」
俺たちは顔を見合わせる。
Fランクだった頃より、少しだけ認められるようになった気がする。
でも――
まだEランク。
上にはD、C、B……と、さらに先がある。
「いつかもっと上に行きたいな」
レティシアが焚き火を見つめる。
「うん」
俺も頷いた。
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翌朝。
無事に隣町へ到着した。
依頼達成。
報酬を受け取り、俺たちは帰路につく。
宿へ戻った夜。
ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:E
レベル:29
護衛中の戦闘で、レベルが一つ上がっていた。
「29……」
あと一つで30。
でも、レベルが上がることだけを目的にはしない。
魔法。
剣。
弓。
連携。
少しずつ全部を伸ばしていく。
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そして翌日。
ギルドへ行くと、洞窟の調査を担当していた冒険者たちが戻ってきていた。
受付の周囲には、いつもより人が多い。
「何かあったのかな?」
レティシアが尋ねる。
俺は冒険者たちの表情を見る。
誰も笑っていない。
そして、その一人が口にした。
「……洞窟の奥に、古い遺跡があった」
俺たちは顔を見合わせた。
黒い石。
強化された魔物。
そして――
古い遺跡。
異変の正体へ、少しずつ近づいていた。
第65話 終




