64話 強化ゴブリン
俺たちは冒険者ギルドに来ていた。
掲示板の前で依頼を探していると、受付嬢から声をかけられる。
「キラさん、少しよろしいですか?」
「はい」
「先日の山間部の件について、ギルドから新しい調査依頼が出ました」
俺は依頼書を見る。
『山間部周辺の街道調査』
推奨ランクはE。
「昨日までの依頼と似ていますね」
エリスが言う。
「はい。ただ、今回は少し範囲が広くなっています」
受付嬢が地図を広げる。
「最近、魔物の目撃情報が増えている場所です」
地図にはいくつか印がついていた。
西街道。
南部森林。
山間部。
「……全部、黒い魔力があった場所だ」
俺が呟く。
「そのため、ギルドも注意して調査しています」
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俺たちは依頼を受け、山間部へ向かった。
途中までは昨日までと同じ道。
けれど、今日はさらに奥へ進む。
「この先は初めてですね」
エリスが周囲を見る。
「うん」
道が徐々に険しくなる。
木々も増え、街道から離れるほど人の気配がなくなっていく。
「魔物がいる」
俺が立ち止まる。
「何匹?」
「四匹」
木々の間から姿を現したのは――
ホーンラビット。
以前にも戦ったことがある魔物だ。
「これなら大丈夫」
レティシアが剣を構える。
ホーンラビットが跳ぶ。
――シュッ!
エリスの矢が一匹を捉える。
レティシアが二匹目を倒す。
俺は最後の一匹へ魔法を放つ。
「《ウィンドカッター》!」
風の刃が飛び、ホーンラビットを倒した。
「終わり」
短い戦闘だった。
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さらに進んでいると、崖の下に小さな洞窟を見つけた。
「地図には載っていません」
エリスが言う。
入口には、魔物の足跡。
そして――
黒い魔力。
「入る?」
レティシアが聞く。
俺は少し考えた。
「依頼は周辺調査だから、無理に入る必要はない」
俺たちはまだEランク。
前回のアーマードボアのような相手と遭遇したら危険だ。
「じゃあ、入口だけ確認しよう」
三人で慎重に近づく。
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洞窟の入口から少し入ったところ。
地面に小さな黒い石が落ちていた。
「これ……」
エリスが警戒する。
俺は魔力感知を使う。
間違いない。
山で見つけたものと同じだ。
「触らない方がいい」
俺たちは距離を取った。
そのとき――
洞窟の奥から音がした。
――ガリッ。
「……何かいる」
レティシアが剣を抜く。
「一匹です」
エリスが弓を構える。
奥から出てきたのは――
ゴブリン。
ただし、普通のゴブリンではなかった。
身体が一回り大きい。
目が赤く、全身から濃い魔力が漏れている。
「強化されてる……」
俺はすぐに判断する。
「戦うよ!」
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ゴブリンが棍棒を振り回す。
レティシアが受け流す。
「重い!」
――ガキン!
腕が痺れる。
「エリス!」
「はい!」
補助魔法が発動する。
「《ウィンドステップ》!」
レティシアの動きが一気に速くなる。
ゴブリンの背後へ回り――
――ザンッ!
深く斬り込む。
「効いた!」
俺も魔力を集める。
「《ウィンドカッター》!」
風の刃がゴブリンの肩を切り裂く。
ゴブリンがよろめく。
そこへエリスの矢。
――シュッ!
胸に命中。
ゴブリンが倒れた。
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俺はゴブリンの身体を見る。
黒い魔力が、少しずつ消えていく。
「やっぱり……」
「黒い石の影響でしょうか?」
エリスが尋ねる。
「たぶん」
俺は洞窟の奥を見る。
「でも、ここには一つだけじゃない」
魔力感知を広げる。
「……もっとある」
「え?」
奥から複数の魔力反応。
そして――
黒い石の反応もいくつもある。
「危ない」
俺は即座に判断した。
「戻ろう」
レティシアも頷く。
「うん」
今の俺たちが調査できる範囲を超えている。
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ギルドへ戻る。
俺たちは洞窟の場所と、強化されたゴブリンの存在を報告した。
受付嬢は真剣な表情で話を聞く。
「分かりました。こちらで上位冒険者に調査を依頼します」
「お願いします」
俺たちは深入りしなかった。
それでいい。
Eランク冒険者として、自分たちの力を理解している。
無理をしない。
生きて帰る。
それも冒険者として大切なことだ。
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その夜。
宿でステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:E
レベル:28
強化されたゴブリンとの戦闘で、レベルが上がっていた。
「28……」
俺は画面を見つめる。
少しずつ強くなっている。
でも、まだまだ足りない。
いつかアーマードボアにも勝てるようになりたい。
そのためにも、まずはEランクで実績を積む。
そして――
次のDランクへ。
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その頃。
ギルドでは、俺たちが報告した洞窟について緊急調査が始まっていた。
そして、洞窟のさらに奥。
誰も知らない場所に――
古い石造りの階段が続いていた。
その先から漏れ出しているのは、
これまでとは比べ物にならないほど濃い黒い魔力だった。
第64話 終




