62話 平和な時間
山間部の調査から戻った翌日。
俺たちは朝から冒険者ギルドへ向かった。
昨日見つけた黒い石。
あれが何なのか、ギルドでも調査しているはずだ。
「結果、出てるかな?」
レティシアが受付へ向かう。
受付嬢は俺たちを見ると、すぐに声をかけてきた。
「お待ちしていました」
「黒い石についてですか?」
「はい」
受付嬢が頷く。
「ギルドの魔術師に調べてもらいました」
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受付嬢が説明する。
「あの石は、普通の鉱石ではありませんでした」
「じゃあ、何なんですか?」
「周囲の魔力を少しずつ吸収する性質があります」
俺は考える。
「魔物の魔力も?」
「はい」
やっぱり。
だから、魔物たちがあの場所へ集まっていた。
「ただし、それだけではありません」
受付嬢が続ける。
「吸収した魔力を、周囲へ漏らす性質も確認されています」
「それって……」
「長時間その場所にいる魔物は、魔力の影響を受ける可能性があります」
レティシアが驚く。
「じゃあ、魔物が強くなっていたのは……」
「その可能性が高いです」
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俺は腕を組む。
「でも、誰があんな石を置いたのかは分からないんですよね?」
「はい」
受付嬢が首を横に振る。
「自然にできたものなのか、人為的に置かれたものなのかも、まだ判断できません」
エリスが口を開く。
「私たちは、近くで人間の足跡も見つけました」
「その件も報告を受けています」
受付嬢の表情が少し険しくなる。
「ですが、証拠が足跡だけでは、誰かが置いたとは断定できません」
「そうですよね」
俺は頷く。
まだ推測の段階だ。
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受付嬢が別の依頼書を取り出した。
「そこで、ギルドから一つお願いがあります」
「お願い?」
「昨日の場所には、もう近づかなくて構いません」
そして依頼書を差し出す。
『街道周辺・薬草採取及び小型魔物討伐』
「……また?」
レティシアが少し残念そうにする。
「はい」
受付嬢が笑う。
「今の皆さんには、こちらの依頼の方が適しています」
「分かりました」
俺は依頼書を受け取った。
俺たちはまだEランク。
異変を追いかけるには、まだ力も権限も足りない。
焦ってはいけない。
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街道近くの草原。
俺たちは薬草を探していた。
「この辺りにあるはずなんだけど……」
レティシアが地面を見る。
「こっちです」
エリスがすぐに見つける。
「エルフって便利だね」
「どういう意味ですか?」
「いや、植物に詳しいし」
エリスが少し困ったように笑う。
「便利と言われると複雑です」
「ごめん」
三人で薬草を集める。
平和な時間だった。
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突然、草むらから魔物が飛び出した。
「来た!」
グレイラットが二匹。
レティシアが前に出る。
「任せて!」
――ザンッ!
一匹。
もう一匹がエリスへ向かう。
――シュッ!
エリスの矢が飛ぶ。
そのまま俺が一気に距離を詰める。
――ザンッ!
二匹とも倒れた。
「終わり」
レティシアが剣を収める。
短い戦闘だった。
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依頼を終えたあと。
俺は少し離れた場所で魔法の練習をしていた。
最近、ずっと考えている魔法がある。
炎でもない。
風でもない。
もっと――
小さな魔力を正確に動かす魔法。
「……」
指先に魔力を集める。
小さな光が生まれる。
――フッ。
消えた。
「失敗……」
レティシアが近づいてくる。
「新しい魔法?」
「うん」
「今までのフレイムスパイラルとは違う?」
「全然違う」
攻撃魔法だけじゃない。
もっと細かく魔力を扱えるようになれば、できることが増える。
俺はもう一度試す。
今度は――
小さな光が、数秒間だけ浮かんだ。
「できた!」
エリスも見ていた。
「綺麗ですね」
「まだ名前も決めてないけどね」
新しい魔法。
まだ完成には遠い。
でも――
少しずつ、自分で新しいものを作れるようになってきている。
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街へ戻ったあと。
ギルドへ依頼達成を報告する。
宿に戻り、ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:E
レベル:26
「26か」
グレイラット程度では大きな変化はないと思っていた。
それでも、少しずつ経験は積み重なっている。
俺はステータスを閉じる。
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その夜。
ギルドの奥では、昨日の黒い石について話し合いが行われていた。
「これまで確認された場所は?」
「西街道、南部森林、そして今回の山間部です」
「三か所……」
地図の上に印がつけられる。
そして、その三つの場所を線で結ぶと――
一つの方向へ続いていた。
「……この先に何がある?」
誰も答えられない。
まだ誰も知らない。
だが、異変は確実に広がっていた。
第62話 終




