61話 戦わない
翌朝。
俺たちはギルドの掲示板の前に立っていた。
昨日貼られた依頼書。
『山間部にて魔物の群れを確認。追加調査を求む』
推奨ランクはE。
今の俺たちでも受けられる依頼だ。
「魔物の群れって、何がいるんだろう?」
レティシアが依頼書を覗き込む。
「種類は分かっていないそうです」
エリスが答える。
「だから調査が必要なんですね」
「うん。行ってみよう」
俺たちは依頼を受け、山間部へ向かった。
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山道を登っていく。
昨日のオーク討伐で訪れた場所より、さらに奥だ。
「魔物の気配が増えてきた」
俺が魔力感知を使う。
「何匹?」
「……十匹以上」
「そんなに?」
レティシアが剣に手を添える。
「でも、こっちへ来てない」
確かに。
魔物たちは一定の方向へ移動している。
「何かから逃げてるのかな」
俺たちは魔物の群れを追うことにした。
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しばらく進むと、木々の間に大量のゴブリンが見えた。
「すごい数……」
レティシアが驚く。
二十匹以上いる。
でも、おかしい。
こちらを攻撃してこない。
全員が山の奥へ向かって走っている。
「逃げてる?」
俺は魔力感知を広げる。
その瞬間――
「……!」
山の奥から、巨大な魔力を感じた。
「何かいる」
エリスも気づいた。
「かなり強いです」
俺たちは木陰に隠れる。
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魔物の王
山の奥から現れたのは、一体の大きな魔物だった。
緑色の皮膚。
巨大な身体。
手には大きな斧。
「オークジェネラル……」
エリスが小さく呟く。
普通のオークとは比べ物にならない。
オークジェネラルが咆哮する。
――グォォォォッ!
ゴブリンたちが一斉に逃げ出した。
「これ……」
レティシアが剣を握る。
「私たちじゃ、まだ無理だよね」
俺は魔力を探る。
強い。
昨日のオークとは比べ物にならない。
「うん」
俺は即答した。
「今は戦わない」
レティシアも頷いた。
「分かった」
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俺たちはオークジェネラルを避け、別の場所を調べる。
すると、岩陰に奇妙なものを見つけた。
「これ……」
黒い石。
表面には、黒い魔力がまとわりついている。
エリスが近づく。
「触らない方がいいです」
「うん」
俺も魔力感知だけで確認する。
西街道。
森。
山。
今まで見つけた黒い魔力と同じだ。
「この石が原因なのかな?」
レティシアが聞く。
「まだ分からない」
俺は周囲を見る。
黒い石の近くには、魔物の足跡が大量にある。
「でも、魔物がここに集まっているのは間違いない」
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エリスが周囲を調べていると、別のものを見つけた。
「キラさん」
「何?」
「これを見てください」
地面に、人間の靴跡。
しかも一人ではない。
複数人分ある。
「また人の足跡……」
レティシアが呟く。
「この場所に誰かが来ている」
俺は足跡を見る。
黒い石へ向かっている。
そして――
石から離れる足跡もある。
「誰かがこの石を置いた?」
俺が言う。
エリスは答えなかった。
まだ確証はない。
でも、偶然とは思えなかった。
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突然。
――ザッ。
背後から音がした。
三人とも振り返る。
「誰かいる?」
返事はない。
俺は魔力感知を広げる。
「……いない」
だが、何かがおかしい。
ほんの一瞬だけ。
誰かの魔力を感じた。
人間。
そして、すぐに消えた。
「まただ」
俺は呟く。
「前にも感じましたね」
エリスが答える。
レティシアが剣を構える。
「私たち、見られてる?」
「分からない」
俺は黒い石を見る。
これ以上ここにいるのは危険だ。
「証拠を持って帰ろう」
黒い石そのものには触れず、周囲の場所を記録する。
そして山を下りることにした。
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ギルドへ戻る。
受付嬢に調査結果を報告する。
「オークジェネラルが?」
「はい。それと、黒い石もありました」
「黒い石……?」
受付嬢の表情が変わる。
「それは、詳しく調べる必要があります」
「あと、人間の足跡もありました」
受付嬢が黙る。
「……分かりました。こちらから上に報告します」
今回の依頼は、調査達成として処理された。
「ありがとうございました」
俺たちはギルドを出る。
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宿に戻り、ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:E
レベル:25
今回は強敵と直接戦わなかったから、レベルは変わっていない。
それでも、得られたものは大きかった。
黒い魔力。
魔物の異常。
そして――
人間の足跡。
「少しずつ分かってきたな」
俺が呟く。
「でも、まだ何も分かってないけどね」
レティシアが笑う。
「だからこそ、強くならないと」
エリスが静かに言う。
「はい」
三人で頷く。
まずはEランク冒険者として、一つずつ実績を積む。
そして、もっと強くなる。
その先で、この異変の正体を突き止める。
まだ俺たちは知らない。
この山で見つけた黒い石が、後に大きな事件へと繋がっていくことを。
第61話 終




